山口智充:第2回 本当にゼロからでしたけど、不安要素はなかったです
芸人、役者、司会、歌手などオールマイティーに活躍中の山口智充さん。CMなどで見せるよきパパぶりに、あこがれるママも多いのではないでしょうか?
インタビュー第2回めは奥さまのお話です。出会いから結婚まで、一直線に進んできたその道のりについてうかがいます。
奥さまとの出会いはいつですか?
1990年のEXPOです。大阪で開かれた「国際花と緑の博覧会」。自分は着ぐるみでショーに出ていたんですけど、向こうはそれを引率するスタッフでした。開催期間だけの、アルバイト同士です。第一印象は……「気さくな人だな」。スタッフはたくさんいましたけど、その中でも一緒にいて楽しい相手でしたね。印象はよかったです。
そこからなぜおつきあいをすることになったんですか?
博覧会が終わっても、一緒にいたいと思ったんでしょうね。期間限定だったので、そこでつきあいはじめないともう会えなくなるじゃないですか? 最後のほうになって、そんな話をしたと思います。どこに惹かれたのかといえば……自然だったんですよ。なんかざっくりとした言い方ですけど(笑)、僕らから見る女性のあざとさとか、そういうのがいっさいなかったんです。子どもがよく「先生が来たから、掃除しなきゃ!」みたいなことってあるじゃないですか? でもこの人は誰もいないところでもちゃんと掃除をしている人なんだろうなと。そういうのが、なんとなく見えたんです。
一緒にいるとどんなお相手だったんですか?
僕は自分が大好きな人間なので、ほめてくれる人が大好きなんですよ。ただ、おだててくれる人というのはまた違って。ほめてくれる人がいいんです。要はめちゃめちゃ見てくれている人、ということですよね。おだてることは適当に誰でもできますけど、ほめるのはちゃんと見ていてくれるから。だからいいことだけじゃなくて、ちゃんと指導することもあるんですよ。彼女にはそれを感じました。「あ、ちゃんと見てくれているんだな」って。
それは安心感がありますよね。
そうですよね。計算のある人じゃないので、「喜ばそう」と思ってほめてくれているわけじゃない。だから余計に良いのかもしれないです。たとえばダンナが変な髪型をしていたとして、「どう?」って聞いたときに「それ、ないわ」って言われたら「え! そうなん?」ってがっかりしますよね。でもそこでプッと吹き出しながら冗談っぽく「いいと思うよ」って言われたら、「あ! ダメなんだ!」って気づくでしょう? 彼女はそういう感じなんです。ま、本当にダメなときはハッキリ言ってくれますけどね。でもそういう気持ちの遊びって大事だと思うんですよ。そういう彼女の雰囲気が心地よかったのかもしれないです。
そんなお相手となら、自然と結婚を意識しそうですね?
そうなんですよ。環境だけでいうと、つきあい出したときは結婚が難しいときだったんですけどね。僕は吉本に入るということで、上京しましたから。遠距離になるのもわかっていたんですけど、上京を後押ししてくれたのも彼女なんです。なんだかんだで男ってナイーブなところがありますけど、「自分にやりたいことがあるなら、行ったほうがいい」って背中をバン!と押してくれました。
遠距離恋愛になったわけですね。どのくらいの期間続いたんですか?
1年間です。僕がデビューして1年たったときに「籍を入れよう」ということで、こっちに呼び寄せました。僕、引越し作業が好きなんですよ。自分が行くときも自分で運転して上京しましたし、彼女を迎えに行ったときも荷物を積んでふたりで一緒に来ました。物語のはじまりですね。それを歌詞にした曲もあるんですけど。
本当にゼロからでしたけど、不安要素はなかったです。ひとりで楽しいのがふたりになったらマイナスになるわけがない、倍になるだけだと思ったんです。世間的に考えたら経済的な問題もあると思いますけど、自分が背負うんじゃなくてふたりで協力するという考えだったので。もともとポジティブな人間なんですけど、結婚に対してもネガティブなことはいっさい考えなかったです。劇場にたくさんの芸人がいましたけど、僕の結婚が一番先でしたね。みんなびっくりしていましたけど(笑)。僕はエンターテイメントの世界で自分が向上していくことと、結婚するということはまったく別物だと考えていたので。結婚したということは、プライベートで楽しい要素がまたひとつ生まれた。それだけです。
では、奥さまのほうも前向きに?
そうだと思います。オスとメスの根本的なシステムがそうだと思うんですけど、求愛をするのがオス、認めるのはメスなので。
奥さまのご両親に反対はされませんでしたか?
反対されなかったです。そこが一番の感謝でした。
デビュー1年目の芸人さんとの結婚となれば、一般的な親であれば心配しますよね。
そうですよね。もちろんこっちに来てくれた家内には感謝しているんですけど、送り出してくれたお父さんお母さんに対する感謝が一番にあります。これは自分が娘を持って、あらためて本当に感じたことでもありますね。
あ、経済的なことはともかく、自分に対しては「僕は大丈夫です!」と強く思っていましたよ。 「僕みたいな男ですみません」とは、これっぽっちも思っていないので。あつかましいですが(笑)。口に出してはいないですけど、絶対に幸せにするという気持ちはありました。根拠のない自信ですね。
お話を聞きながら、奥さまではなく奥さまのご両親のほうに感情移入。「こんな男性が自信満々に来られたら、反対のしようがないよなぁ」と考えてしまいました(笑)。
そんな山口さん、結婚してから20年目の記念日に結婚式を挙げたのだとか。次回はそんなお話もお聞きします。お楽しみに。
取材、文・鈴木麻子 撮影:山口真由子