あのキャラクターはジブリ作品の影響!?『カーズ/クロスロード』関係者に聞く
『カーズ/クロスロード』はディズニー/ピクサーが贈る“クルマの世界”を舞台にした感動のアドベンチャー作品です。主人公は真っ赤なボディがトレードマークの天才レーサー「マックィーン」。作品ではレースでの挫折を経験し、人生の岐路に立つマックィーンと彼を支える仲間たちとの絆が描かれています。
ママスタセレクト編集部は『カーズ/クロスロード』取材のため、コラムサイト”minto.“編集長のおかもとまりさんとともにアメリカ・ピクサー本社へ。『カーズ/クロスロード』を手がけたブライアン・フィー監督と製作のケヴィン・レハーさんにお会いした模様はお届けしましたが、作品についてさらに詳しく聞くため、クリエイティブ・ディレクターのジェイ・ウォードさんにもお話を伺いました。ウォードさんは現在、奥さまと2人の子どもたちと共に暮らしています。関係者だからこそ知っている『カーズ』シリーズの裏側に迫ります。
──『カーズ/クロスロード』では、天才レーサーと言われ続けた主人公のマックィーンが次世代新人レーサー、ジャクソン・ストームに追い抜かれて焦りを感じていますよね。
ジェイ・ウォードさん(以下J):そうだよ。カーレースの世界では実際に起きていることなんだ。今日トップにいても、次の日には新人のだれかが追い抜きにやってくる。そういう世界なんだよ。
──ご自身が後輩のクリエイターの存在に焦りを感じることはありますか?
J:今、まさに感じている。たった今ね(笑)。僕は若くないし、いまマックィーンのように感じているよ。
──焦りを感じたとき、どのように対処しているのでしょうか?
J:これはとても重要なことだと思う。さっき誰かにも伝えたばかりなんだ。年を取ると「僕はすでになんでも知っているし、僕になにかを教えてくれる人は誰もいない」と思ってしまうんだ。だからみんな僕のところにやってきて「若い人たちを助けてあげてよ」と頼んでくるんだよ。でも年を取るにつれてやるべきことは「僕はあとなにを学べるだろうか? 若い人たちはどんなことを考えて、僕に伝えてくるのだろうか」と思うことだよ。だから、人生のどの時期にいようとも“周囲にいる人々から学ぶ”という姿勢が大切なんだと思う。それは年上でも、年下でも関係なくね。そのとき大切なことは「この人はきっと理解できないだろう」という最初から決めつけるような考えは捨てることだよ。
マックィーンはこの作品で間違いをおかしてしまうんだ。マックィーンは見かけで人を判断した。マックィーンは「僕が好きなものをあなたは好きじゃないってことがわかる。だってあなたは僕と違うから」と言っていたけど、その考え方は間違っているんだ。彼は1作目の『カーズ』でドック・ハドソンに出会ったときにも同じ間違いをおかした。彼は「ドックは古い車。彼は年寄りのおじいさんだ」と見かけだけで判断してしまったんだよ。その後、彼はドックがレースドライバーのチャンピオンだとわかったんだ。どんな相手からも常になにかしら学ぶことがあるのだから、見かけだけで判断しちゃいけないんだよ。なのにマックィーンは、この作品で、ドック・ハドソンに出会ったときと同じことを学んだんだと思う。
『カーズ』作品は、ジブリ作品の影響を受けている!?
──『カーズ2』に登場する、東京国際空港の受付カウンターで働く双子の姉妹の名前が、日本のジブリ作品の影響を受けているというのは本当ですか?
J:2台の小さな青い車だね。1人はメイという名前で、もう1人はサツキという名前だ。どの作品にちなんでつけられた名前かは知っているよね?
──宮崎駿さんのジブリ作品からですね。
J:そうだね。「となりのトトロ」に出てくる2人の女の子からだよ。
──ジブリ作品の影響を受けている話は本当だったのですね?
J:僕が名付けたんだ。
──そうだったのですね! 他にも影響を受けた作品はありますか?
J:短編作品「メーターの東京レース」に、猫バスが出てくるよ。
──素晴らしい情報をありがとうございます。シリーズ第3作の『カーズ/クロスロード』もジブリ作品の影響は受けていますか?
J:いい質問だけど、影響はないんだ。なぜかというと作品はドック・ハドソンが出てくる1作品目の『カーズ』のルーツに戻るからだよ。これはアメリカ南部の昔を舞台にしているからね。だから日本車もないし、ヨーロッパの車もないんだよ。
『カーズ/クロスロード』にも隠れキャラクターが登場
──『カーズ/クロスロード』にはどんな隠れキャラクターが登場するのか教えてもらえますか?
J: もちろん。ピクサー・ボールやA-113という文字、ピザプラネット・トラックも隠されているよ。それから今後の作品にも触れると、次の作品『リメンバー・ミー』にもちょっと登場するよ(笑)。
──ほかにも隠れキャラクターは登場しますか?
J:クラシック・ディズニー作品のキャラクターがこの作品に登場するよ。サプライズを維持したいから、内緒だけどね。みんなに見つけてもらいたい。でもわかるよ。「クラシック・ディズニー作品のなにか」がスターリングのオフィスに登場する。ヒントは「スターリングの背後にある」ということだけ教えるよ。ビッグヒントだよ(笑)。
『カーズ』の世界にオートバイが現れない理由
──なぜ『カーズ』の世界にはオートバイは出てこないのですか?
J:トライはしたんだけど、目の問題があるんだよ。車はフロントガラスに目をつけていたけど、オートバイの場合、目はヘッドライトになるだろう? そうすると、1つしか目がないことになってしまうんだ。マイク・ワゾウスキのようにね(笑)。もし目を置けたとしても、口はどこに行くの? という問題もある。車にはグリルやバンパーがあるけど、オートバイはすべて露出しているからとても難しいんだ。
「カーズ2」でイタリアに行くときに、スクーターのヴェスパを登場させたかった。なぜならイタリアにはたくさんのスクーターが走り回っているからね。でもイタリアにたくさんのスクーターが走り回っている様子をよい形で見せることができなかったんだ。トライはしてみたけど、良く見える形にできなかった。
──オートバイの表情を作ることは難しいのですね。
J:難しいよ。演技しないといけないからね。僕が言ったことを思い出してほしい。キャラクターが1番で、車は2番なんだ。もしキャラクターを魅力的にできなければ、うまくはいかないからオートバイは登場させなかったんだよ。
『カーズ/クロスロード』に続編はあるの?
──『カーズ/クロスロード』に続編があるとしたら、だれが主人公になりますか? マックィーンですか? それともクルーズですか?
J:それはいい質問だね。マックィーンは、僕たちがもう10年間も知っているヒーローなんだ。『カーズ』作品はマックィーンがいて、そこにほかのキャラクターたちがやってきて参加しているんだよ。クルーズのようにね。でも同時に、マックィーンにはすごく熱心なファンたちがいる。ファンとマックィーンにはとても強い友情があるんだ。だからなにがあろうと、マックィーンが続編に関わるということはわかるよ。でもわからないけどね。伝えるのは難しいけど、僕たちはこの作品を終えようと作業をしているところなんだ。
そして、この作品が長い間生き続けることを願っているよ。この『カーズ』をどうやって生かし続けることができるのか、考えている。それから、次にどんな作品を作るのかを考え始めることになるね。僕たちはいつも新しいことを考えている。これはジョン・ラセター(※)にとって、とても大切なものなんだ。『カーズ』はジョン・ラセターにとって、とても重要なものだ。だから、僕には仕事があるんだよ。ジョンのおかげでね。
──『カーズ』作品では車しか登場しませんが、クリエイティブ・ディレクターとして、どのようなところに苦労されましたか?
J:『カーズ』作品での最大のチャレンジは、いつも“新しいストーリー”を語ることだよ。みんな1作目の『カーズ』がとても大好きなんだ。2作目の『カーズ2』は、1作品目とは違った形で大好きだったけど、『カーズ2』ではピクサー作品の感情的な部分がないことをみんな寂しく感じていた。キャラクターたちと感情面での繋がりがないことをね。だから僕らは『カーズ/クロスロード』で、キャラクターたちとの感情面での繋がりを戻すように気を配ったんだ。「この作品はマックィーンのストーリーになっていないといけない。ストーリーの中に、多くの心情や感情がないといけない。そのためにはヒーローが旅をする作品じゃないといけない」と思った。だから『カーズ/クロスロード』をそういった作品にするために、僕らは一生懸命、挑戦していったんだ。
それと1作品目の『カーズ』の中に、『モンスターズ・インク』のキャラクターが出てくるんだ。エンディングで『カーズ』のキャラクターたちが「ラジエーター・スプリングス・ドライブインシアター」で映画を見ているとき、その映画の中に『カーズ』バージョンのマイクとサリーが登場するんだよ。
──ほかにもピクサー作品のキャラクターは登場しますか?
J:そうだね。僕らは『カーズ』のエンディングで『トイ・ストーリー』の車や『バグズ・ライフ』の車、『モンスターズ・インク』の車を登場させたんだ。そして『カーズ』のキャラクターたちが登場した車をスクリーンで見ているんだ。サリーのモンスター・トラックやマイクの小さな車を作って登場させたよ。だから、1作目の『カーズ』を見ないといけないね。
ウォードさんが関わったディズニー/ピクサー最新作『カーズ/クロスロード』MovieNEX(4,000円+税)は現在・発売中です。デジタル配信も開始しているので、ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。
ちなみにピクサーからはこんな素敵な“お土産”も。同行してくれた「おかもとまり」さんをピクサーのイラストレーターに特別にキャラクター化していただきました。『カーズ』の世界観が伝わるイラスト、お見事です!
(C) 2017 Disney/Pixar
文・編集部