初めての育児、行き詰まったときに効いた母の言葉
出産前は、赤ちゃんが生まれたら、大変だけれど幸せいっぱいの生活がやってくるんだろうな、なんて夢を見ていましたが、実際のところ、幸せいっぱいな生活は筆者にやってきませんでした。初めて向き合う自分の赤ちゃん、不安だらけ、それでも頑張りたいけれど、毎日ぐったり疲れてる。ずっと必死だったような気がします。
朝も夜も眠くて、夜が明けたような気がしない。
腕も痛いし、肩コリもひどくて、頭痛がする。
オムツを替えて、おっぱいやミルクをあげて、抱っこして、赤ちゃんが眠った、と思ったらもう次のおっぱいの時間!?
また赤ちゃんが泣いている。30分も寝てないのに!
初めての赤ちゃんはとにかく眠ってくれない。
そんなことをひたすら繰り返す毎日でした。日中は筆者ひとり、そんな生活のことを話す相手も周りにいません。
あるとき筆者は話し相手が欲しくて、久しぶりに実母に電話をしました。
話し相手が欲しくて、半泣きで実家に電話
「どうしたら、赤ちゃんは泣き止む? 眠ってくれる?」
半分泣きながら、母に聞きました。今思えば、産後で精神的にも不安定だったような気がします。
母のアドバイスは、「思いつく限りのことを順番にやってみる」というもの。オムツが汚れていないか、お腹が空いていないか、抱っこしてほしいのか。外気に当ててみたり、ちょっと歩き回ってみたり。
母のアドバイスは何も特別なものではありませんでした。
「特別な魔法なんてないわよ」
がっかりする筆者。そんな筆者を母は励まそうとしてくれたのでしょう、母の言葉は続きました。
「楽な子育てなんて、ない」
「楽な子育てなんて、ない」
筆者ははっとさせられました。
「よく眠る子で手のかからない赤ちゃん。確かにそういう子もいる。でも、だからってその子が育てやすいかといったら、そんなこと絶対ない。
しばらくしてから、夜泣きがひどくて大変だったり、イヤイヤ期が長くて苦労したり。もっと大きくなって、思春期に問題を起こす子だっていたわよ。育てやすい子なんていない、いつかは親が苦労するもの。子どもが小さいときに、親は苦労しておいた方がいいかもよ。子どもが大きくなってからの親の苦労は本当につらいもの。
大きくなったら、この子は手のかからない子になるかもよ。ずっと楽な子育てもなければ、ずっとつらいだけの子育てもない」
つらい生活の終わりが見えず、今の状態から抜け出せないような気持ちでしたが、そんなに落ち込むものじゃないかも、と筆者は思えてきました。
筆者「ずっと今のまま、なんてことはないんだよね。きっとこの先はもっと楽になれるんだよね」
母「そうよ。きっとこの子はいい子になるわよ」
すべてに後ろ向きで落ち込んでいた筆者は、母の言葉を聞いて、少し前向きになれた気がしました。
筆者の子は現在小学生。確かに大変だったことは何度かありましたが、それがずっと続くこともありませんでした。苦労すると、その後楽になったと感じることがより多くなっていくように思います。
ママとしてなんとか乗り切れてこられたのは、母の言葉が筆者に、魔法のように効いていたからかもしれません。
文・野口由美子 イラスト・マメ美