「好きなことへの没頭」が子どもを伸ばす【花まる学習会 高濱先生】
漢字や計算、図形の問題が苦手な小学生、多いですよね。「○○ができない」という状況の根本にあるのは意識の壁です。「義務教育で教える問題は、やってできない問題ではないのです。苦手だからやらないのではなく、好きにさせることが大切」と話すのは「花まる学習会」代表の高濱正伸先生です。
「四字熟語が嫌い」な女の子
先日起きたことです。花まる学習会では、授業で四字熟語を声に出して読むのですが、ある一年生の女の子が「わたし、四字熟語きらい」というんですよ。僕はそれを逃さず、一度授業を止めました。「ちょっと待って! 今ね、どこからか四字熟語が嫌いという声が聞こえたんだけど。先生は30年以上先生をやっているけど、○○が嫌い、○○が苦手といって伸びたやつはいないんだ!」といったんです。その後「はい。授業に戻ります」と四字熟語の読み上げを続けました。
翌週、その女の子がわざわざ僕のところに来て「わたし、四字熟語、だいすき!」と言いにきました。今ではすっかり得意げになって、四字熟語を読み上げています。つまり、その子は「嫌い」とか「苦手」という言葉に逃げたんですよ。「嫌いだから」「苦手だから」やらなくていい、とやらない理由にして、逃げ癖がついていたんですね。
私はいつも言っているんですが、義務教育で教わる内容というのは、速さ遅さ、出来、不出来の差はあるにしても、やれば必ずできるのです。親がそこをちゃんと理解して、「やればできるんだから、嫌いなんて言わないよ」といえば、子どもはもう「嫌い」とか言いません。とにかく好きにさせることが大事なのです。
大好きなことを繰り返したら必ず伸びる
今、AI(人工知能)が伸びていますが、人間とAIの違いは、人工知能にやらせると全部のデータを網羅したうえで「これです」と解答を導き出します。それに対して人間は、好きなものは浮いて見えるんです。「頭がいい子」の特徴は、必要な情報だけ浮いて見えるといいます。
たとえば迷路が大好きな子が迷路を解くときは、進む道が光って見えるんです。その感じが「頭がいい子」の特徴です。これはなにかというと、特別なことではないのですが、大好きだからできることなのです。頭がいい子は、そういう見えないものが自然と見える力があるんですね。
好きなものは伸びるけれど、強制されたものは伸びない
では、どうしたらそのような力が身につくのか。これには先ほどいったように「好き」というのが前提にあります。「大好き」で繰り返したことは伸びるようにできている、と脳科学的にも証明されているのです。たとえば、囲碁が好きで指し続けている子は必ず強くなるし、バッティングも本人が好きでやり続けていたら、必ず上達していきます。
子どもは好きなことをやらせるとどんどん伸びます。逆に「これをやりなさい」といわれてやったことは、どんなにそれがいいことでもなかなか結果に結びつきません。なぜなら「やらされた感」があるからです。主体的に動きません。つまり、自分から考えて行動しようと思わなくなるのです。これが親が子どもに「やりなさい」と強制することの弊害です。
子どもが算数に対して苦手意識があるのなら、まずは迷路から始めましょう。最初から迷路が嫌いな子はいません。迷路を解くことで、試行錯誤する力や先を見通す力が身につくのです。同時に、考えることの楽しさ、絶対にゴールするという意志の力も育ちます。子どもが楽しめるように、親は間違っていると思っても横から口を出さないこと。迷路を通じて「考えることが楽しい」と思えれば、どんどん力が伸びていくのです。