「ときに理不尽な現実」を教えてくれた絵本『ねこのるすばん』と義母
子どもができてから好きな絵本がたくさんできました。でも「好き」とはちょっと違うし、とくべつ目立つ絵本だとも思えないのに、私には忘れられない絵本が1冊あります。
約2年前、パパの実家に当時2歳だった息子を連れていったときのこと。パパが「なつかしい」と言いながら、物置から出してきたのは、古びた『ねこのるすばん』という絵本でした。パパは息子をひざの上に乗せ、読みはじめました。
絵本『ねこのるすばん』
いぬと にわとりと ねこに、おくさんが いいました。
「かいものに いってくるから、るすばん たのむわね」
いぬは しっぽを ふって、ワンと なきました。にわとりは コッコと なきました。でも、ねこは しらんぷり。こかげで きもちよさそうに ねています。
犬が門のそばに構える一方、ねこはグッスリ。アリが背中にのぼっても、ハチが耳をつついても、ニワトリが卵を産んで得意げに鳴いても、眠り続けるねこ。
そこへ奥さんが帰宅。
いぬは しっぽを ちぎれるほど ふりながら、
おくさんを でむかえました。ねこはー
ねこは、いつのまにか げんかんの ドアのまえに すわっていて、
「にゃあ」と なきました。「ただいま」
おくさんは、ねこを だきあげて、やさしく ほおずりして いいました。「おるすばん、ありがとう」
ねこは犬よりもニワトリよりも先に、えさをもらいました。しかも上等なハムつきで!
義母のひとこと
パパが絵本を読み終えると、息子は”ニヤリ”と”ニコリ”の間のような笑みを浮かべました。オチに納得のいかなかった私は、思いきり「えぇーっ!?」と不満の声をあげました。こういう物語の最後は「頑張った犬が救われる」というオチが”お約束”だと思っていました。
しかし、その場に一緒にいた義母はといえば……
「こういうのも大切よね」と口にしたのです。
私は一瞬とても驚き、そして、とても”義母らしい”と思いました。
いつも明るく、前向きな義母。約40年、幼稚園の先生をつとめた義母。多くの子どもたちを見つめ、また、厳しい社会を生きてきました。
「世の中の理不尽さも、子どもたちは学びとっていくべきだ」
義母のメッセージが聞こえる気がしました。
『ねこのるすばん』を親子で教訓に
『ねこのるすばん』に出合ってから、私は少しだけ賢くなりました。
例えばあるとき、子どもが公園でぐずって騒いでいたら、あからさまに迷惑そうな顔を向けてきた中年男性。その態度にイラっとしたとき、『ねこのるすばん』を思い出しました。
「世の中、理不尽なこともあるのよ。わかってもらえないこともあるのよ」と自分に言い聞かせると、少し気持ちが軽くなります。「馬鹿げたことに時間を無駄にしちゃいられない」と開き直れる気もします。
日々一緒に過ごしていて、息子から心の弱さを感じることがあります。そんな息子とともに、ときに直面する「理不尽さ」を、上手くかわしていけたらと思います。
※残念ながら、在庫はないそうです
文・編集部