SRHRって知ってる?子どもだけでなく大人の恋愛や結婚、人生に大きく関わる重要な概念を知ろう
SRHRという言葉を聞いたことはありますか? 「SRHR」とは「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(Sexual and Reproductive Health and Rights)」の略で、「自分の身体と人生を、自分で決めるための基本的な権利」を指します。SRHRは子どもや大人、女性・男性にかかわらず、すべての人が関係する権利です。
世界80の国と地域で子どもや女性への支援に力を入れている国際NGO「プラン・インターナショナル」は、「SRHR」を社会に広く知ってもらうべく、2025年7月30日に「SRHR for JAPAN」キャンペーンを開始しました。今回は自分の身体と人生を自分で決めるための基本的な権利である、SRHRについて詳しくご紹介します。
「SRHR」自分の身体と人生を、自分で決めるための基本的な権利
SRHRには、選ぶ自由と尊重される権利が幅広く含まれています。たとえば、自分の身体や性に関する正しい知識を得ることや、思いがけない妊娠や性暴力から守られること、そしてどう生きるかを自分で決め、妊娠・出産・避妊についても安心して選択できることなど。このような権利はSRHRの一部です。夫婦間のセックスレスの問題や職場でのセクハラも、SRHRと大きく関わっています。
プラン・インターナショナルの代表理事の長島美紀さんは、
『結婚するかしないか、どんな人と一緒にいたいか、子どもを持つか持たないか、それはいつで何人かなど人生の選択を自由に決め、性活動や性表現も自由にできる権利(長島さん)』
といいます。
『断れずに異性と体の関係を持ったり、相手が嫌がっているのに性暴力を振るってしまったり。自分や相手の望まない妊娠、性感染症リスクが上がる、恋愛や結婚、対人関係がうまくいかない。SRHRが欠如すると自分の体や選択が尊重されない、心と体にとって正しい情報や医療にアクセスできない、自分の意思を伝えられないといった問題が起きてしまいます(長島さん)』
日本でも、性被害に遭ったり、若年女性が家族に妊娠を打ち明けられずに出産し乳児を棄ててしまったりする事件が後を絶ちません。男女にかかわらず、性暴力やストーカー事件の加害者・被害者になる事件もあります。こうした事件はSRHRを脅かすものであり、日本におけるSRHRの普及や教育は急務といえます。
しかし日本では、たとえば生理を話題に出すことすら憚られる雰囲気はないでしょうか。実際に2021年にプラン・インターナショナルアメリカが行った調査では「生理をオープンに話せる割合」が日本は27か国中25位。「学校でセクシャリティや恋愛を学んだ割合」も22位でした。日本では自分の性や生殖の問題について人前で話せず、専門的に学んでいないため問題もないものにしてしまう。その結果、問題が起きてもどこに相談すればいいのかわからないという事態が起きていることがうかがえます。
「性的同意の確認方法がわからない」と回答した10代、20代は4割にも
今回プラン・インターナショナルでは全国15歳から64歳の男女1万人を対象に、SRHRに関する調査を実施しました。その結果、SRHRの認知度は約4人に1人だったものの、内容を理解している人は約10人に1人にとどまりました。
性に関する知識を学ぶ主な手段はSNSとネットの情報
また10代の約7割が「性に関する知識を学びたい」と回答しました。ただ特に15歳~20代は、性の知識を得る主な手段が「SNS」、「テレビ」、「インターネット」となっていて、情報に偏りがあるような印象を受けます。ほかの年代でも「正しい性の情報へのアクセス」は、「尊重されていない」(まだ足りていない)として意識されていました。
今の10代は学校や家庭で十分な情報が得られていないことで、適切な医療や相談場所がわからず、自尊心やキャリア、人生選択に大きく影響を及ぼしてしまう可能性が示唆されています。
性的同意を知っている人は9割。しかし…
性的な行為に対してお互いの意思を確認する「性的同意」についても調査があります。交際経験がある人のなかで「性的同意が必要」と回答した割合は約9割だったものの、毎回同意が取れている人は3割に届きませんでした。
10代、20代では、「性的同意は必要」と回答した人は92%に上った一方で、「どう確認すればいいのかわからない」と回答した割合は半分以下の41%でした。同意が取れない理由としては「恥ずかしい」、「相手に嫌われる不安」といった回答が目立ちます。若年層においても、知識としては頭にあるものの行動と結びつけることが難しいという実態が浮き彫りとなりました。
子どもが学校や家庭で性に関することが教えられないと知識が不足し、ネット等で誤った情報を鵜呑みにして正しい選択ができなくなることもあるでしょう。性的同意の方法がわからないと将来の自分の人生に大きな影響も及ぼします。こういったことを踏まえて発足した「SRHR for JAPAN」キャンペーンでは教育現場や地域との連携実践、政策や制度改定に向けた提言、「1億人の性教育」と銘打った広報・社会啓発、企業や団体とのアライアンス強化に取り組んでいくそうです。
子どもへの教育だけでなく大人も知識をアップデートしていく必要性
一般社団法人SRHR JAPAN代表理事で産婦人科医の池田 裕美枝さんによると、こうしたSRHRに関する認知度調査は先進国にはなく、途上国でよく見られるものだそう。その理由は、欧米とはじめとする先進国では既にSRHRは誰もが知っていて当然の知識だからです。生理や避妊方法、中絶、性暴力に遭わない、性暴力をしないために自分や相手を守ることなど、心と体の自己決定権について親が理解していないと、子どもに教えていくことができないですよね。
自分の心と体のことだけでなく、恋愛や男女関係、対人コミュニケーション、性感染症、パートナーや結婚、性的マイノリティの問題や性別変更、性的マイノリティ、人権への知識や理解にもつながるSRHR。これからを生きる子どもに対して過不足ないSRHRの教育をするためにも、親世代や祖父母世代もしっかりと学んでいく必要があるのではないでしょうか。
文・AKI 編集・編集部 イラスト・猫田カヨ
次の連載へ