早すぎる?幼児教育への疑問に答えた先生の一言
幼児教育は盛んだけれど、疑問も
幼稚園が始まる前から、幼児教室や体操教室やいろいろな習い事が気になることがあります。
小さい子が、難しそうなことでも簡単にやりとげる姿に驚いて、うちの子にも何か才能を見つけてあげたいと思うこともあります。
幼稚園に入る前に、大きい数が数えられたり、自分の名前を書けたりする子を見ると、やっぱり早いうちからやった方がいいのかな、なんて焦ることもあります。
早い段階から、字や数を教えるような幼児教育は、本当に効果があるの?と疑いたくもなります。小さい子どもって遊びから学ぶことがたくさんあるんじゃない?
疑問のまま、早期幼児教育を体験!?
子どもの教育はいろいろ気になるものの、早期からの教育には反対の私でしたが、自分の子を、早期教育を実践している学校に入れるという体験をしました。
イギリスに引っ越し、現地の公立校に子どもが編入したのです。
イギリスの学校制度は、義務教育が4歳から。私の子は当時、日本では年中さんになったばかりでしたが、イギリスに来たらいきなり義務教育、レセプションと呼ばれる学年に入りました。4歳の子が入るレセプションは、幼稚園と小学校の間のような位置づけの学年になり、5歳からイヤー1と言って小学校1年生になります。
学校初日の朝、子どもを連れて教室に入ると、クラスの子どもたちが座って、ノートに鉛筆で単語を書く練習をしていました。当時私の子は、自分の名前も書けませんでしたし、鉛筆を持つこともしていませんでした。
そして、しばらくすると、毎日の音読の宿題が渡されるようになりました。まだ私の子どもは、ひらがなもほとんど読めませんでしたし、英語はもちろん読めません。
学校での教育がこんなに進んでいることにびっくりし、内心焦りました。学校に通うからには、ついていけないと子どもがかわいそうなのでは、と心配でした。
どうしたらいい!?
焦る私に先生の意外なアドバイスとは
そんな私へ、学校の先生のアドバイスは意外なものでした。
「親が一番しなければならないことは、待つこと。」
「子どもにやらせよう、とはしないでください。まだレセプションの子どもたちは小さいので、準備ができていない子もいます。とくに読み書きは個人差があります。すぐにできないからといって、それが悪いことではありません。待つ姿勢が大切です。」
子どもができる、できない、ということばかり見ていた私は、ちゃんと幼児教育の意味を理解していなかったようでした。
早くできるようになることを問題にしているのではなかったのです。その子のペースで学んでいけるよう、早いうちから環境を整えている、ということだったのです。
競争をしているのではありません。その子のペースでいろいろなことに興味を持っていけたら、世界は自然に広がっていくようです。早くから始めるからこそ、ゆっくりと繰り返しながら。その子なりのやり方で大丈夫。
そういうスタイルもいいものだと思えるようになりました。教育に対していろいろな視点を理解することが大切なのですね。
文・野口由美子 イラスト・んぎまむ