いつでも、どこでも、ママに寄り添う情報を

<大人のジブリ>惹きこまれたアニメーション映画『君たちはどう生きるか』【ネタバレ注意】

IMG_0131
2023年7月に公開された、スタジオジブリのアニメーション映画『君たちはどう生きるか』。前宣伝や作品情報がほとんどないなかでしたが、海外でも多くの国々で上映され、2024年にはアメリカでアカデミー賞®やゴールデン・グローブ賞を受賞しました。公開されたころママスタコミュニティでも「どんな作品だった?」「おもしろい?」など感想を求めるトピックがあり、映画を観たママたちがコメントしてくれました。

『君たちはどう生きるか』おもしろい?不思議?

『親子で楽しめたよ。6年生の娘と行ったけど、「5点満点評価で4.5点!」だって! 一緒に行ってよかった』

『なんか拍子抜けしてしまった。賛否両論あるのわかる』

『宮﨑監督が、本当に伝えたくて描いたって気がした』

『不思議ワールド全開で、意味わからん』

『純粋に楽しめたよ』

ママたちの感想はさまざま。「おもしろかった」「集大成って感じ!」と高評価な感想から、「最後までわからなかった」といった低評価もありました。青サギやインコがしゃべったり、よくわからない塔の中の世界と現実世界とを行ったり来たりしたりするので、「これは何?」と考え込んでしまう人もいるかもしれません。いっぽうで不思議な世界をそのまま受け止めて映画にのめり込んでしまい、あっという間に2時間が過ぎてしまう人もいるでしょう。筆者はどちらかというと後者のほうで、よくわからない部分はありましたが映画の後半になるにつれ「ああ、さっきのはここに繋がるのね」と思えるところがあり、米津玄師さんの『地球儀』が流れるなか「いい映画を観たな」と余韻に浸っていました。そして2回目、3回目と観たいなと思いながら、さまざまなシーンを回想しました。(この先ネタバレあります)

広告

【ネタバレ注意】眞人の自立を見届けた母

冒頭は、いきなり火事のシーン。サイレンと半鐘の音や炎のゆらめき。主人公・眞人の、母を求める必死さに一気に作品世界に吸い込まれました。火事で母を亡くした眞人は、母の実家にある不思議な塔の中で、若かりしころの母と思われるヒミという女性に出逢います。
筆者にとって衝撃的だったのは、ヒミが眞人との別れ際に「すてきじゃないか。眞人を産むなんて」と言って、自分のいた時代に繋がる扉へ、いともあっさりと進んでいったことでした。眞人が11歳になったら、自分は火事で死ぬとわかっている未来。子どもを置いて死ぬ母も辛いけれど、残された子どもだって辛いでしょう。それでも「眞人のお母さんになるんだからな」と母になる道を選ぶヒミ。しかもとても明るく、ウキウキとして。

映画を観終わってから、真っ先に思い返したのはこのシーンでした。わが子が11歳のときに別れがくるなんて、ずいぶん早い別れですよね。しかしたいていの親子は、親が子より先に逝きます。もしかしたらこの別れを、人によって数年の差があるけれど「あたりまえだよね」とヒミは思っているのかもしれません。それに死別ではなくても、子どもはいずれ……早ければ生まれて10数年もすれば自立して、親元から離れていくでしょう。子どもの自立には親離れ、そして親のほうも子離れが必要ではないでしょうか。自分の生き方を自分で選んだ眞人に「すてきじゃないか」とエールを贈る母。かっこいいな、ヒミ! 共感というよりも、憧れに近い気持ちになりました。

広告

昭和の名著『君たちはどう生きるか』について

映画『君たちはどう生きるか』を作るにあたって、宮﨑駿監督がインスピレーションを受けたといわれている吉野源三郎著『君たちはどう生きるか』(1937年発行)。この本が書かれたころの日本は、満州事変や五・一五事件、二・二六事件などがおこり、軍人が政治を動かすようになっていました。さらに世界は、恐慌やファシズムの台頭。日本などたくさんの国を巻き込んだ第二次世界大戦の前夜ともいえるような時代でした。

戦争に反対することもふくめ、自由な言論がきびしく制限されはじめた当時。著者である吉野源三郎さんは若い人たちに主人公・コペル君を通して、人間としてどう生きるべきかを自分で考える人になってほしいと伝えたくて、この本を書いたのではないでしょうか。

映画と本の関係

コペル君と眞人が同じ時代を生きているので、作品の空気感みたいなものが似ているなと筆者は感じました。またコペル君と眞人は、自分の弱さや過ちと向き合い、自分がどうするかを考えて一歩踏み出していきます。映画のラスト近く、自分の跡を継いで石を積み「豊かで平和な美しい世界を作りたまえ」と言う大叔父に、眞人は「友だちを見つけます」とキッパリと宣言し自分の世界へ戻ります。

コペル君と眞人は同時代を生きましたが、吉野源三郎さんは明治32年(1899年)生まれで、昭和16年(1941年)生まれの宮﨑監督とは40年ほど年代差があります。しかし世界のあちこちで軍事的な緊張を感じるような現代の状況に、宮﨑監督は吉野源三郎さんと同じく憂いや危機を感じ、これからの時代をどう生きるか、若い人たちに問いかけているのかもしれません。

映画も本も楽しんで

映画『君たちはどう生きるか』は、公開されてまだそれほどの年月が経っていませんが、繰り返し観たいと思えるすてきな映画ではないでしょうか。また1937年に出版された『君たちはどう生きるか』は、2017年に新装版と漫画で発行されています。映画も本も漫画も、一度手にとってみてはいかがでしょう。それぞれの世界をおおいに楽しんでくださいね。

文・間宮陽子 編集・千永美 イラスト・マメ美

次の連載へ

間宮陽子の記事一覧ページ

※本記事にはアフィリエイト広告が含まれています。商品を購入すると、売上の一部が販売プラットフォームよりインタースペースに還元されることがあります。掲載されている情報は執筆時点の情報、または自動で更新されています。

関連記事

<ステップファミリー>夫の連れ子は20歳の社会人。私はいつまで世話すればいいの?【第1話まんが】
私は、とある地方都市に住む22歳の会社員です。この度、12歳年上の男性と結婚しました。彼はバツイチで、12歳の娘ユイナちゃんを男手ひとつで育ててきた人です。 私とは打ち解けることはできないままでした...
<大人のジブリ>『魔女の宅急便』と『耳をすませば』。見方が変わる、子どもの独り立ち
子どものころからアニメーションに親しんできた人なら、ママになってもお子さんと一緒に、あるいは自分自身の楽しみのためにアニメのテレビ番組や映画を楽しんでいるのではないでしょうか。ママスタコミュニティ...
<大人のジブリ>親になって観るとさらにおもしろい映画『おもひでぽろぽろ』。生理を教える機会にも?
テレビや動画配信サービス、映画館などでアニメーション鑑賞が楽しみなママはいますか? 子どもだけではなく大人が観ても楽しくて、感動するアニメーションは数多くありますよね。ママスタコミュニティに、スタ...
参考トピ (by ママスタコミュニティ
ジブリ最新作【君たちはどう生きるか】