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<年収の壁、こえてみる?>103万円→160万円に引き上げられても、問題解決にはならない?

年収の壁_中野晴啓さん_マメ美2

前回からの続き。パートやアルバイトで働くママたちが意識する「年収の壁」。2025年になって引き上げる方向で国が議論をしています。特に所得税が生じる「年収の壁」である、「103万円の壁」が大きな話題になり、160万円まで引き上げられる可能性が出てきました。でもいくら引き上げられたとしても根本的な問題は残るようです。経済やお金に詳しい、なかのアセットマネジメント代表の中野晴啓さんに話をお聞きしていきます。

※2025年3月時点で、「年収の壁」の引き上げ額は決定していません。

中野晴啓さん第4弾プロフィール

「年収の壁」が引き上げられても、根本的な問題解決にはならない

――2025年3月の時点では、所得税が生じる「103万円の壁」が160万円に引き上げられそうです。国も審議をしているようですね。
中野晴啓さん(以下、中野さん):「年収の壁」が160万円に引き上げられるとすれば、パートやアルバイトで働く人は、「160万円まで働こう」と思うようになるでしょう。103万円よりも57万円上がるので、その分は頑張って働こうと思うママさんも増えると思います。しかしいくら引き上げられたとしても、壁そのものはなくなっておらず、その後も残り続けます。これでは本質的な解決にはなっていないですよね。

――ではその、「年収の壁」の本質的な問題とはなんでしょうか?
中野さん:年収の壁におけるいちばんの問題は、壁の金額をこえて働こうとしなくなることでしょう。もっとたくさん働けるしお金を稼げるのに、そこでストップしてしまいます。その理由としては所得税が生じたり、旦那さんの配偶者控除が減ったりするなどして、世帯で考えたときの手取りが減ってしまう可能性があるからです。特に旦那さんの配偶者控除への影響を考える人が多いようですね。そのために、年収の壁をこえて稼ぐと損をするという意識が根強く残るのでしょうね。

――働けるのに働いたら損をするという状況では、労働意欲を削がれてしまいますね。
中野さん:いつも壁を気にしていると、働くことが楽しいと思えないですよね。本当にやりたい仕事ができず、つまらない社会になってしまいますよ。

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配偶者控除は時代にそぐわないと国が認めることが必要では

――年収の壁は、配偶者の所得によって一定の控除が受けられる「配偶者控除」にも影響を与えてきますよね?
中野さん:この制度は、今の社会構造にはそぐわないと思いますね。「年収の壁」も配偶者控除も、戦後の高度経済成長期の家族の形態がもとになっています。当時はお父さんが働き、お母さんは子育てをする。子どもの数が今よりも多かったので、お母さんが働くのは難しい状況でした。そのため専業主婦に対しては配偶者控除を設けていたのです。しかし今は女性もバリバリ働く時代。女性が社会進出する中で、専業主婦に対する優遇策だった配偶者控除が残っているのは矛盾していますね。

――配偶者控除は、廃止が議論されては見送りになっている印象です。
中野さん:「年収の壁」の引き上げ以前に、配偶者控除を見直すことも国がすべきことだと思いますね。目先のことではなく、未来を見据えて日本がどういう姿になるのが最もよいのかを、きちんとデザインしていくことが求められると思います。

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将来「年収の壁」はなくなる?

――中野さんは、将来的に「年収の壁」がなくなると思いますか?
中野さん:なくならないとおかしいとは思います。配偶者控除など全てひっくるめて壁なんてなければ、みんなできるだけ多く働こうと思うのではないでしょうか。この先は高齢者社会で労働力も減っていくわけで、女性の社会進出は絶対に必要なこと。その邪魔をしているのが「年収の壁」なのですから。

編集後記
「年収の壁」は長く続いている制度ですし、変えるにはたくさんの問題もあるのでしょう。でも働き方改革を推し進め、女性の社会進出を活性化させるためには、そもそも壁があってはいけないというお話でした。「年収の壁」の金額面ではなく、制度そのものの見直しが本当の課題なのかもしれません。

※取材は2025年3月に行いました。記事の内容は取材時時点のものです。

第3回へ続く。

取材、文・川崎さちえ 編集・ここのえ イラスト・マメ美

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