夏休みの工作情報も!「遊んで学ぼう!iPS細胞のふしぎ」が六本木ヒルズで開催
2006年に京都大学山中伸弥博士らのグループによって開発され、2012年に山中博士がノーベル生理学・医学賞を受賞したことで一躍有名になったiPS細胞。そのiPS細胞を小学生向けにわかりやすく紹介し、コリントゲームを作って遊ぶワークショップ講座が、 7月21日、22日に六本木ヒルズで開催されました。参加したのは「iPS細胞ってなに?」という小学校高学年から中学生の子どもたち。大人でも理解するのが難しそうな話ですが、子どもたちは興味を持ってくれるのでしょうか?
ニュースなどでよく聞くiPS細胞、それってなに?
iPS細胞といえば、テレビのニュースなどで耳にしたことがある人も多いかもしれませんね。ところでこのiPS細胞っていったいなに? なにがそんなにすごいの? ワークショップでの説明を聞いてみましょう。
「私たちの体はものすごくたくさんの細胞が集まってできています。でも、元をたどればお母さんのおなかの中にある受精卵というたった1つの細胞にたどり着きます。その細胞が2つ、4つ…とわかれ、数を増やしながら役割分担をしていき、目になったり足になったりします。そして大人になった時には、約200種類もの細胞が約37兆個集まって体ができているのです。
体中のどんな細胞にも変化できるのがiPS細胞
お母さんのおなかの中にいた受精卵というのは、山に例えると頂上部分。細胞は、山の上から下へとそれぞれの道をボールが転がっていくように下っていきながら、役割分担をして、最後、山の裾野では心臓や血液、手、目などのいろんな細胞に分かれていきます。
ポイントは、いったん下山してしまうと勝手に登って頂上の受精卵に戻ることはできないということ。それから尾根を越えて他の細胞になることもできません。しかし、ここに4つの遺伝子を入れると、また山を登り始め、頂上の受精卵に近い状態に戻ることができます。ここにきた細胞のことをiPS細胞といいます。
では、iPS細胞はどんなことができるかというと、再び山の上から下山して、いろんな細胞になることができます。そしてもう一つ大事なことは、たくさん増やすことができる。この2つがiPS細胞の特徴です。
一度血液などになった細胞が、また一番初めの受精卵のような状態にまで戻り、今度は別の細胞になれる可能性があるなんて、iPS細胞ってすごい細胞ですね! 研究が進めば、肝臓移植など、臓器移植の際に他人から提供してもらうのではなく、自分の細胞から作りそれを移植できるようになる日がくるのかもしれませんね。
iPS細胞が様々な細胞に分かれる様子を山に見立てて遊ぶコリントゲームを作ってみよう!
iPS細胞の説明を聞いたあとは工作タイム。iPS細胞からいろいろな細胞に分かれていく様子を山に、ビー玉を細胞に見立てます。山の頂上であるiPS細胞からビー玉が転がり、神経細胞や卵子などの細胞に分かれていく様子を表した「iPS細胞コリントゲーム」を作ります。
工作タイムが始まると、子どもたちは段ボールに貼られた紙に穴をあけたり、ピンをさしたりと夢中。参加した小学生の女の子は「iPS細胞のことはこの講座で初めて知ったけど、ゲームを作るのが楽しい」と話していました。
単なるパチンコ玉ゲームのようなこのコリントゲームも、iPS細胞の特徴を描いた台紙を使って作ることで、自分たちの体にも目を向けるキッカケになります。
普段は目にすることがない体の細胞を顕微鏡で観察
会場にはiPS細胞をはじめ、iPS細胞から作った肝臓の細胞や軟骨など、普段は目で見ることができない細胞などを顕微鏡で見ることもでき、子どもたちも興味津々。配られたプリントにある写真がどの細胞のものかあてるクイズなどをして、楽しんでいました。
講座終了後、参加者の男の子は「人間の体って200種類の細胞からできているんだって」と一緒に来ていたお母さんに報告。「人間の体ってすごいね」と、人体について興味を持ったようでした。
夏休みの工作に最適。かるたやコリントゲームを自宅で作ってみては?
今回のイベントで作ったコリントゲームは、京都大学iPS細胞研究所(CiRA=サイラ)のホームページからダウンロードできます。
また、同ホームページではiPS細胞など細胞の特徴をわかりやすくまとめた手作りの「幹細胞かるた」もダウンロードすることができます。合わせて夏休みの工作にしてみては? これをキッカケに、将来の科学者が誕生する日がくるかもしれませんね!
「iPS細胞コリントゲーム」ダウンロードページ
http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/faq/ips-poster.html
「幹細胞かるた」ダウンロードページ
http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/faq/karuta.html
京都大学iPS細胞研究所(CiRA)ホームページ
http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/
取材、文・長瀬由利子