<子どもの身だしなみ>ムダ毛は必ず剃らないとダメなの?悩みは低年齢化していて…?
親として子どもの悩みには耳を傾けたいと思うもの。一方で、子どもが親に言いづらいと感じてしまう悩みもあります。例えば、ムダ毛。実は自分の体のことは、相談しにくいものではないでしょうか。誰でも生えてくるものとはいえ、恥ずかしいという気持ちから、誰にも相談できず1人で悩んでしまうこともあるでしょう。
カミソリをはじめとする衛生商品などを販売している貝印株式会社(以下貝印)では、子ども向けの「ファーストシェイブブック」を作成し、子どものムダ毛の悩みに寄り添っています。貝印のマーケティング本部 広報宣伝部 次長の平岩暢さんにお聞きしました。
はじめは「ムダ毛は剃らないといけない?」から考えてみる
――貝印さんでは、子ども向けにムダ毛処理について情報発信をされています。どのような経緯や思いがあったのかを教えていただけますか?
平岩暢さん(以下、平岩さん):ムダ毛に対するいろいろな考え方は以前からあります。特に女性はムダ毛を剃ることが当たり前で、肌はツルツルがいいという風潮もありますよね。一方で「どうして剃らないといけないのだろう」という疑問をもつ人もいます。過去には海外の有名なアーティストが、「ムダ毛が生えていてもそれは自分らしさだ」として、世の中にメッセージをSNSなどで発信したことがありました。
我々はカミソリのメーカーではありますが、ムダ毛を剃ることだけが選択肢なのか? という疑問が会社の中でもありました。議論を重ねた結果、剃るのも自由、剃らないのも自由という考え方に落ち着き、「#剃るに自由を」というテーマを投げかけています。
――確かに、剃る・剃らないはその人の自由ですが、子どもでも周囲の目は気になるところですよね。
平岩さん:ムダ毛を処理し始めるのは思春期のお子さんが多いですが、実は悩みを抱える年齢がどんどん下がってきています。我々は小学校中高学年から中学3年生を対象に調査を行い、どのような悩みを持っているのかリアルな声を聞くことで、寄り添えることを探しました。
――実際にどのような悩みが挙げられているのですか?
平岩さん:調査では64%の子どもが「正しい毛の剃り方がわからない」と回答していました。その背景としては、カミソリの使い方を親に教えてもらう機会がない人が多いように思います。刃物でいうと包丁の使い方は教わるでしょうが、カミソリや爪切りなどは、自分で覚えていったという人が多いのではないでしょうか。親御さん自身も自分の親から教わってこなかったために、お子さんに教えなくても自分で覚えると考えてしまうのは、当然のことかもしれません。そのためお子さんには、正しい使い方がわからない、ムダ毛もどうやって処理していいかわからないという悩みが生まれてしまうのでしょう。
子どもは言い出しにくい。親が子どもにできること
――子どもがムダ毛に悩んで1人で処理をしようとしたり友達に聞いたりするかもしれません。しかしそれだとケガの可能性もあります。親が子どもにできることは何だと思いますか?
平岩さん:やはり親御さんからお子さんに向けて声かけをして、寄り添っていただきたいと思います。親御さんも子どもの頃にムダ毛で悩んだ経験があれば、お子さんの年齢などを踏まえて、もしかしたらそろそろ悩んでいる時期なのかなと気付きやすいのではないでしょうか。
――親から話してくれると、子どもも相談もしやすいですよね。何から教えていけばいいでしょう。
平岩さん:必ず剃らないといけないわけではないですから、剃る・剃らないの選択肢があることをまず教え、剃りたいとなれば剃り方を教えるといいですね。このような話を親子でできるのが当たり前にしたいですし、そのきっかけやツールとしてファーストシェイブブックを使ってほしいです。
親から子へカミソリの使い方が伝わらないというサイクルをなくすために、ムダ毛の適切な処理の仕方を、お子さんだけではなく親御さんにも伝えたいと考えています。
――もし子どもが「ムダ毛を剃りたくない」と結論を出しても、親が剃るように説得するようなことはしない方がいいでしょうか。
平岩さん:剃らない選択肢もあるわけですから、お子さんが剃りたくないと言ったら、その考えを尊重することも必要です。そのような剃らない選択肢が認められる社会になりつつありますから。ムダ毛は生えていると恥ずかしいというようなマイナスのイメージが強くありますが、今後その考え方も大きく変化してくると思います。
ファーストシェイブブックは、ムダ毛を剃ることだけではなく、お子さんの自由な選択を応援するハンドブックでもあります。コミュニケーションが取りやすい親子関係を作るお手伝いができるといいなと考えています。
編集後記
ムダ毛はないほうがいいという考えが主流となっている今、ムダ毛を気にする年齢が下がってきているとのこと。かといって、カミソリの使い方を教わる機会も少ないので、子どもたちは使い方がわからずに悩んでいるのかもしれません。その気持ちに気付き、正しい使い方を教えるのが親としての役割の1つになりそうです。
取材、文・川崎さちえ 編集・いけがみもえ イラスト・Ponko