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虐待通報は義務、でも見極めは難しい。追い詰められるママに周囲ができることとは?

※2016年6月時点の情報です。


虐待で命を落としてしまう子どもや赤ちゃんのニュースは、とても悲しく、そのひどい行動には「なぜ?」と疑問を抱く人が大半でしょう。ただ疑問を抱きつつも日頃子育てに関わっているママの中には「虐待そのものは、他人事ではない」、「環境が悪かったのかな」などと思うところがあるママも少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。その虐待に対し、周りの人は通報する義務があります。

児童虐待の防止等に関する法律第六条によると、

『児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない』

とあります。連絡先は局番なしの「189(イチハヤク)」です。

もちろん虐待の通報は大事なのですが、別の側面があります。

「大きな声で叱ると虐待を疑われて通報されるかもしれない……」

という緊張感を親に持たせてしまうことにもなりかねないのです。虐待の入り口にいる親が、通報によって追いつめられて、声を出さない代わりにつねる、服に隠れる部分を叩くなど、外部の人にわからない方法を取る。そんな人が増える可能性もあるかもしれません。

虐待は通報義務はあるけれど、ママは通報により追い詰められる

筆者は実際に虐待を疑われて通報された方を知っています。通報されたママたちは明らかに、お子さんのために自分の時間もエネルギーも使い、生活面の世話もきちんとしていて、傍目に問題があるようには見えませんでした。通報した人は、「大きな声でいつも叱っているから」「たまに手を上げるから」程度の感覚だったようです。

通報されると自宅に福祉事務所の方が訪問し、家庭環境のチェックをするそうです。精いっぱい育児をしているママにとっては、この経験は精神的ダメージが大きかったことが想像できます。

隣人の口から出た「虐待」という言葉にドキリ

筆者も子どもが4、5才の頃でしょうか、筆者の未熟さもあいまって大声で感情に任せて叱ってしまい、娘がますます火がついたように泣き叫ぶことがたびたびありました。後に階下の方に「うるさくてすみませんでした」と謝ったら

「大丈夫ですよ。虐待とは思ってませんから(笑)」

と言われてしまいました。筆者と娘との日々は、周囲から見れば「虐待」という言葉を、冗談を交えながらでも使いたくなるような状態だったのだ、と緊張が走り、同時に反省もしました。

当時遮音性の高いマンションに住んでいたことと、階下の方に理解があったことで救われましたが、声の大きさだけで通報されることがあるならば、いつ通報されてもおかしくなかったかもしれません。

通報する前にできることは「通報前にひと言声をかける」

「大声でしかりつけることがたびたびある」という話をママ友にすると「うちだって」「うちなんかもっと」と言うママが筆者の周りには多いのです。外では声を荒げることなんてない雰囲気のママすらも「家にいるときはすごいのよ」と言うこともあります。母親が子どもに対して、いつも静かなトーンで言い聞かせることがいかに難しいかがわかります。

とはいえ、虐待は増えているというニュースはたびたび流れます。件数増加の要因のひとつは虐待の「通報」が増えていることだそうです。

しつけの虐待を分けるボーダーラインの見極めは他人の目からは難しいでしょう。それならば通報前に、近所の方や知り合いのママを通じて「どうしたの?」「大丈夫?」とそのご家庭のママや子どもに一声かける、というワンステップがあってもいいのではないでしょうか。ご近所の付き合い方としても決して高いハードルではないはずです。「余計なお世話です!」と言われてしまうかもしれません。それでも何よりママを追い詰めないために、子どもを救う糸口を探るために、ひと言、声かけをしてほしいと願うのは、甘いのでしょうか。

参考:厚生労働省・児童虐待の定義と現状

文・編集部 編集・しのむ イラスト・はなめがね

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