【デザインあ展neo 佐藤卓さん】第4回 子どもの好奇心に蓋をせず大人になってもらうには?
「デザインあ」の世界が進化を遂げ、2023年にスタートした「デザインあneo」。その総合指導を務めるのは、数々のヒット商品や文化的プロジェクトを手がけてきたグラフィックデザイナー・佐藤卓さんです。
今回は、子どもの考える力やアイデアを最大限に引き出し、未来に活かすための親の関わり方や姿勢についてお話を伺いました。
子どもの好奇心に蓋をせず、大人も一緒に楽しめるかが重要
ー佐藤さんは、子どものクリエイティブな思考を伸ばすために、一番大切なことは何だとお考えになりますか?
佐藤さん:やっぱり子どもって好奇心の塊だと思うんです。 この宇宙に生まれて、だんだん自我が芽生えて、見るもの触るもの「これは何?」の連続。でも成長して社会性を身につけるに従って、机は机、椅子は椅子、とものごとを概念で片付けてしまい、それ以上深く考えなくなってしまう。それは大人になるにつれて、子どもの頃に抱いた好奇心にどんどん蓋をしていくことに繋がっていると思うんですね。
― それが“当たり前”になってしまうのは、少し怖いですね。
佐藤さん:だから重要なことは、いかに好奇心に蓋をせずに大人になってもらえるか。子どもがもし何かに興味を持ったら、親はそれを見守る、もしくは親も一緒に興味を持つと良いと思います。
子どもが出したアイデアは、とにかく全力で褒める!
ー私も子どもと一緒に楽しむことは、とても重要だと感じます。子どもの純粋な疑問に対して、一方的に答えを伝えて終わるんじゃなくて、「どうしてだろうね」と同じ目線で想像力を膨らませたり、一緒に調べてみたり……。子どもの好奇心を優先して、親が手を出し過ぎず見守ることは、すごく大切ですよね。
佐藤さん:本当にそうですね。そこで子どもがもし、ほんのわずかなアイデアを出したとしたら、もうベタ褒めしてあげるとさらに良いですね。「それすごく良いよ!」って、とにかくベタ褒めする! 子どもが「こうしたらどうかな?」と具体的な提案までしてきたら、「もう天才っ!」ってレベルで(笑)。
ー ベタ褒めですね(笑)。でもそれくらいのリアクションをもらえると、子ども自身も大きな自信になりそうです。
佐藤さん:そうです。ほんのわずかなアイデアでも褒めてあげると、「アイデアを出して良いんだ」っていうことがわかるんですよ。 そうやって「アイデアを出すって楽しいんだ」、「考えて良いんだ」って思わせるのがすごく大事。 世の中を変えていくのは、やっぱり“アイデア”なんですよ。「これが当たり前」と思っていたことを疑えて、「もっとこうしたら良いんじゃない?」と考えられる人からアイデアは生まれる。それが時代を切り開いていくわけですからね。
アイデアを出せる人になるためには、常識を疑うところから
ー 確かに、「これはこういうものだ」と思い込んでしまうと、そこから先の発想が止まってしまいますね。
佐藤さん:そうなんです。アイデアって、“常識”を一度疑うところから生まれるものです。
「それ、本当に正しいの?」、「こういうやり方じゃないとダメなの?」 そんな問いを持てる人が、新しい価値を生み出していけるんです。
ー 子どものうちは、まだ「当たり前」に染まっていない分、柔軟に考える力がありますよね。
佐藤さん:だからこそ、大人がその自由な思考を壊さないようにすることが必要です。「そんなの無理」とか「変だよ」なんて言わずに、「なんでそう思ったの?」って聞いてみてほしいですね。
親が夢中になっている姿を、子どもはしっかり見ている
ー 子どもの創造力を引き出すためには、親の関わり方が本当に重要ですね。
佐藤さん:そう思います。そしてね、親が夢中になっている姿を見せることも大事。大人が何かに没頭していたり、「面白いなあ」って心から楽しんでいる姿は、子どもにとってすごく影響力があるんですよ。
ー “親の背中を見て子は育つ”というのは、まさにそうですね。
佐藤さん:「なんでお母さんはあんなに夢中なんだろう?」って、子どもは無意識に感じ取っていくんです。逆に、大人が何にも夢中になれないとしたら……それは少し寂しいですよね。世の中は面白いことで溢れているのに。
ー そう聞くと、「自分は夢中になれるもの、持っているかな?」と振り返るきっかけにもなります。
佐藤さん:本当に何でも良いんですよ。 大人がね、何かに夢中になっているっていうことそのものが重要なんです。 仕事でも遊びでも趣味でも。まずは大人が夢中になり、それを見た子どもも一緒になって、楽しめることが理想だと思いますね。
ー それでは最後に、ママスタセレクトの読者へメッセージをいただけますか?
佐藤さん:ぜひお母さんも一緒に、「デザインってなんだろう?」と考えてみてください。子どもに教えるのではなくて、一緒に気付いて、驚いて、楽しむ。その繰り返しが、子どもの考える力やアイデアを促すことにつながっていくと思っています。
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<編集後記>
佐藤さんの言葉はどれも、大人である私たち自身の感性を揺さぶるものでした。
「分からない」ことを楽しむ心、疑問に向き合う姿勢、夢中になれるものを持つこと。子どもに必要なのは、そんな生き生きとした大人の背中なのかもしれません。
日常の中で感じたデザインの不思議や、ちょっとした疑問、何でも良いので子どもと向き合って一緒に考えてみませんか? もしかしたら、今ある当たり前が少し違って見えてくるかもしれません。
取材、文、撮影・編集部
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