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【お金のギモン解決!第6回】キャッシュレス決済によるポイント付与。なぜこんなに大盤振る舞い?

中野晴啓さま6

前回からの続き。クレジットカードやQRコード決済で買い物をすると、ポイントが付与されるケースが多くなっています。それらのポイントを貯めて、商品購入の際に使う「ポイ活」をしている人も少なくないのでは? ポイントがもらえるのは嬉しいことですが、いつまでもポイントは付与されるのだろうか? と疑問に思う人もいるかもしれません。そこで経済に詳しい、「なかのアセットマネジメント」の代表を務める中野晴啓さんにお聞きしました。
中野様.prof

ポイントを付与する最大の目的は「集客」

――キャッシュレス決済をすると、それぞれの会社からポイントがもらえますね。なかには、ポイント10倍! などと大きなキャンペーンを行っているところもありますが、なぜこれほどポイントを付与してくれるのでしょうか?

中野晴啓さん(以下、中野さん):私もクレジットカードや交通系ICを利用する機会が多いので、気づいたらポイントが貯まっていた! ということがあります。

会社側がなぜそれほどポイントを付与するのかというと、一言でいえば「集客のため」です。最近は頻繁にポイントを使う「ポイ活」をしている人も増えました。そういう人にとっては、ポイントがたくさんもらえるキャッシュレス決済のアプリは宝の山。すぐにでもインストールして会員登録するでしょう。そうすると登録者数が増えますね。それがキャッシュレス決済を提供する会社のブランド価値を上げるんですね。また使用する側にとっても登録者数が多い会社は安心です。ダウンロード数1000万人突破! などと書いてあったら、自分も登録してみようかな? と思う人もいるでしょう。

――たしかに会員数が多いキャッシュレス決済は、安心感があります。会社側がポイントをたくさん発行することで得られるものは他にもありますか?

中野さん:キャッシュレス決済をすると、その人はそのお店で買い物をしたという証明となります。つまり、いつどこで、何を買ったのかという重要な情報が会社やお店にデータとして残るわけです。その情報を商品開発やマーケティングに利用し売上アップにつなげている会社も多いでしょう。

今のポイント還元率を維持するのは難しい可能性が

――会社やお店が発行してくれるポイントは、なぜあれほど付与できるのでしょうか?

中野さん:会社ではポイント発行の予算が組まれていて、その範囲内で発行しています。つまり集客するためのコストとして、ちゃんと確保されているんですね。キャンペーンごとにきちんと予算があるので、キャンペーンが行われている期間中でも、発行数が上限に達すれば、そのキャンペーンは終了するでしょう。

――今はある程度予算があるでしょうが、この先もポイント発行は続くのでしょうか?

中野さん:これまではどの会社もお客さんの獲得を目指していたので、どんどんポイントを発行していました。ポイント合戦とも言われ、他の会社に負けないようにとキャンペーンを打ち出す会社が多くありました。けれどこの状態をずっと続けるのは、経営上難しいでしょう。現に、ポイントの還元率を引き下げている会社もあります。

ポイント還元率が下がったときにやらないほうがいいこと

――消費者として、これからどういう心構えが必要でしょうか?

中野さん:ポイントが全くもらえなくなるということはないでしょうが、還元率が下がることはあり得ます。そのときは、還元率が下がったからといってジタバタしないことですね。こっちが下がったからあちらに乗り換えよう……などと、右往左往しない方がいいんです。変更の手続きをするのはかなり面倒だと思います。それならば、多少還元率が落ちても同じ決済方法を使い続ける方が、効率がいいように私は感じます。

――しかしきっと違う会社に乗り換える人もいますよね。そうなると顧客離れが起きて、会社としてはピンチになるのではないでしょうか?

中野さん:おそらくポイントだけが目当てだった人は、いずれキャッシュレス決済を使わなくなり、会員登録の解除をする人もいるでしょうね。そうすると、そのサービスに残るのはポイント目的ではなく、本当にそのキャッシュレス決済が便利と思って使っている人になります。おそらくそういう人はこの先も使ってくれるでしょうから、会社にとっては安定した売上が見込めます。また今後は何度もキャンペーンを打たなくても良いわけですからコスト削減にもつながります。このように、一時的な客離れは仕方ないと考えて、次のステップへと移行していくのではないでしょうか。

(編集後記)
キャッスレス決済を利用するとポイントがもらえるのは、企業戦略の1つだということがわかりました。今はたくさんもらえるポイントも、今後は還元率が下がっていく可能性があるとのこと。ある程度の心構えは必要だと感じます。
次回は大学や専門学校に進学する際に利用できる奨学金について、さらに返還が困難な場合についてのお話をうかがいます。

※本記事は2023年10月に取材を行いました。記事の内容は取材時時点のものです。

第7回へ続く。

文・川崎さちえ 編集・すずらん イラスト・加藤みちか

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