<価値観の更新>わが子が左利きだったら矯正する?右利きの人が思いもよらない左手禁止のストレス
世の中全体で見れば左利きは少数派かもしれませんが、思い返してみれば知り合いのなかにもひとりやふたり、いるものですよね。駅の改札でカードをタッチするとき、自動販売機で硬貨を入れるとき。右利きの人がごく当たり前に使っているものでも、左利きの人は「使いづらい」と感じる場合があるようです。
心配なのは「生涯言われ続けるから」?食事や筆記の不安も
『わが子が左利きだった場合、右利きに矯正する?』
ママスタコミュニティに寄せられたこのトピックの投稿者さんは、決して”左利き否定派”ではないそう。「左利きだと、きっと一生『左利きなの?』と言われ続けますよね。言われ続ける人生は、面倒くさいなと思って」と、投稿した理由を教えてくれました。
かつては「左利きは矯正するもの」という考え方が幅を利かせていた時代もあったようですが、多様性が認められる現代はもっと柔軟になっていそうです。ただわが子を心配する投稿者さんの気持ちも、理解できますよね。
集まったコメントでも「右利きに矯正した」という人はいました。
『うちは矯正した。授業参観のときに、勉強面で大変そうだなと思ったから』
『私自身が左利き。食事で箸などを持つときや、文字を書くときは右。親が矯正したようです。ハサミなどの道具もみんなと同じものを使えるから、個人的には右利きにしてもらってよかったかな』
矯正した(された)理由の多くは、「左利きは食事と筆記が不便そうだから」でした。
『左利きの人から「(他の人の)横に座って文字を書くとき、隣で食事するときにすごく不便」と聞いたよ』
左利きの人ばかりなら、食事でも筆記でも動かすのは左手ですから、横に並んでいても肘が隣の人に当たることはまずないでしょう。でも、世のなかの多数派は右利きです。なので左利きの人が「周りの人に迷惑がかかってしまう」と肩身の狭い思いをすることになるわけですね。左利き自体が不便というよりも、”少数派だから”不便なのではないでしょうか。
利き手の矯正にかかるストレスは、想像以上に強い!
実際コメントで圧倒的に多かったのは「左利きのままにしておく」というもの。8割以上のママたちは、矯正を考えないといいます。時代は変化していますね。
『娘がそう。スプーンを持ち始めた頃は「どっちで持つかわからないのかな? 右はこっちだよ」って持ち替えさせていたけど、やっぱり自分で左に持ち替えるから、これは左利きなんだなと。本人がやりやすければ、それでいいでしょ』
右利きの人は考えたことさえないかもしれませんが、「こっちを使いなさい」と利き手ではないほうの手を強制されたら……。かなりのストレスだと思いませんか? 実際に左利きを矯正された経験のある人からは「すごく苦痛だった」「嫌な思いをたくさんした」などの声が多く届きました。
『子どもの頃、左手を使うと親に定規で叩かれたり、叱られたりした。ストレスで抜毛症になって、小児精神科のお世話になった。当時でも「今どきは左利き矯正なんてしませんよ」と、先生が言っていたよ』
『私の兄が左利き。小さい頃に矯正しようとしたら、吃音(きつおん)になった』
子どもにどれだけ大きなストレスがかかるのかが、よくわかるエピソードです。
世のなかは、右利きに便利なようにできている。でも?
自身もお子さんも左利きというママからは、「左利きゆえの不便は、昔よりも減ったと思う」との声がありました。多くの人が心配する食事や筆記に関しても、こんなコメントが。
『食事のときは、右利きの人の右側に座らないように気をつければいいだけ。今は左利き用の道具も豊富。慣れればそんなものだし、利き手を使うことを禁じられるほうが余程ストレス』
『今は習字の授業も、左手でいいみたい。うちの息子も「左手でもOK」と言われた。ハサミもグローブも左利き用の道具もたくさんあるし、今のところ困ったことはとくにない』
もちろん学校や先生にもよるのでしょうが、世のなか全体が柔軟な考え方になっているのはたしかなようです。「私の母は必死で右利きにしようとしていた。『縁起が悪い』『しつけが悪い』『恥をかく』だのって」というコメントもありましたが、そんな時代がはるか昔に思えるほどですね。
『不便を感じることがあったとしても、”世のなかは右利きに便利にできている”くらいの軽い感覚だよ』
「世のなかの右利き仕様にちゃんと順応しているから、不便を感じたことはない」という人もいました。利き手を矯正されるストレスに比べれば、多少の不便さは慣れてしまうといいます。「左利き用の道具はあまり多くないから、かわいい物が少なかった。選択肢が少ないことだけは残念」という声もあったように、多少残念な思いをすることはあるものの、極端に困るほどの問題はなさそうです。
左利きは個性。無理に抑えず、当人に任せてみては?
さらに「もし不便だと感じれば、自分で矯正していくのでは?」という声も。
『うちの下の子が左利き。書道は左だと難しいらしく、自分で右手に替えていた。ボールを投げるのも右らしい。自分のやりやすいようにしたらいいと思う』
『わが子が左利きだけど「食事と筆記は右がいいのでは?」と迷っていた頃に幼稚園に入れた。様子を見ていたら右手も勝手に使い始めた。どうやら両利きみたい』
書道のときだけは自発的に右手を使う子の話も、複数ありました。もともと左利きで、訓練をして両利きになった人もいます。どちらも使えるなんて、世のなかのちょっとした不便を大きく超える便利さがありそうですよね。
「左利きも個性だと思って、直さなかった」というコメントもありました。投稿者さんもお子さんの左利きを”個性”と考えれば、「一生言われ続けて面倒そう」という発想にはならないのでは? 例えばくせ毛だって、背が高いことだってその人の”個性”です。逆にそれを会話の糸口にして、上手にコミュニケーションを取れるかもしれません。「左利きに憧れた」「カッコいい」というコメントもあったように、大多数とはちょっと違う”わが子の個性”。前向きにとらえてあげてはいかがでしょうか?
文・鈴木麻子 編集・千永美 イラスト・Ponko
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