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妊娠中や新生児の育児中、気を付けたい感染症のこと【新生児科医・今西洋介先生】

妊娠中や新生児の育児中、気を付けたい感染症のこと
妊娠中や、新生児の育児中はとくに、感染症に対して敏感になりますよね。妊婦さんや、新生児のいる家庭では、感染症に対してどのように備えればいいのでしょうか。

大阪母子医療センター、新生児科の今西洋介先生にお話を伺いました。

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妊婦さんに気をつけてほしい感染症

――妊婦さんがインフルエンザに感染した場合、母体と赤ちゃんにはどのような影響がありますか?

大阪母子医療センター 今西洋介先生(以下、今西先生):妊婦さんがインフルエンザに感染しても、インフルエンザウイルスがお腹の赤ちゃんに直接影響を及ぼすことはありません。ただ妊婦さんがインフルエンザに感染すると、重症化しやすい傾向にあり、なかなか熱が下がらないことがあるんですね。

加えて母体の状態が変化することによって、赤ちゃんに二次的に影響が出ることはあります。母体がインフルエンザに起因する肺炎になり、人工呼吸器につながれるような事態になってしまうと、赤ちゃんへの血流量が減ってしまう、といったことですね。

――他に妊婦さんが感染することで、赤ちゃんに影響が出る病気にはどんなものがありますか?

 今西先生:母体が感染したことによってお腹の赤ちゃんに影響が出る感染症は、総称してTORCH症候群と呼ばれています。そのひとつは、トキソプラズマによる感染症です。胎児発育遅延にともなう低出生体重、肝脾腫、脳内石灰化、水頭症、肝機能異常、血小板減少、網脈絡膜炎、てんかんを引き起こします。サイトメガロウイルスによる感染症は、赤ちゃんの難聴を引き起こす原因になります。風疹もTORCH症候群のひとつです。

あとはヘルペスですね。これは重症化しやすいものです。単純ヘルペスウイルスといって口の端に発疹が出る症状があります。多くは性器ヘルペスで、産道感染することで赤ちゃんの体内に入り、髄膜炎を起こして重症化することがあります。

――赤ちゃんに影響が出る感染症にかからないようにするために、どんなことに気をつければいいでしょうか?

 今西先生:妊婦さんが気をつけるのは難しいですね。というのも、たとえば妊娠中にサイトメガロウイルスに感染したとしても、発熱する場合もありますし、無症状の場合もあるからです。少なくとも普段と違う体調になったら、かかりつけの病院を受診してもらうのが一番いい方法ですね。

新生児との生活でも基本は手洗い

――産後、退院して自宅に戻った後の感染症対策は、どのようにしたらいいのでしょうか?

 今西先生:新生児がいる、いないに関わらず、こまめな手洗いは感染症予防の対策としてやってほしいですね。新生児のほかにきょうだいがいる場合は、少し注意が必要かな、とおもいます。きょうだいが風邪を引いたときに、新生児にもうつることがあるからです。

たとえばRSウイルスに赤ちゃんが感染すると、赤ちゃんの鼻水が出て鼻が詰まることがあります。すると鼻呼吸ができなくなり、母乳を飲めなくなってしまうんです。母乳が飲めなくなった赤ちゃんは脱水状態に陥ります。さらに症状が進めば全身状態が悪くなり、肺炎を引きおこすこともあります。

新生児がいるご家庭では、きょうだいが風邪を引くなどして体調が悪くなったら、新生児とは部屋を分けるなどの工夫をしてほしいとおもいます。

インフルエンザと新生児、授乳中のママ

――子どもにも身近な感染症といえば、インフルエンザが思いつきます。新生児はインフルエンザの予防接種を受けられますか?

今西先生:インフルエンザの予防接種に関しては、日本小児科学会は6ヶ月以上から推奨しています。6ヶ月から13歳未満は2回、13歳以上は1回接種を推奨しています。生後6ヶ月未満の赤ちゃんにとっては、同居しているきょうだいが家庭にインフルエンザウイルスを持ち込むことがインフルエンザウイルスに感染するリスクを高める原因になります。生後6ヶ月未満の赤ちゃんがいるご家庭では、きょうだいはインフルエンザの予防接種を受ける必要があるでしょう。赤ちゃんがインフルエンザの予防接種を受けられない月齢のうちは、インフルエンザの予防接種を受けていない家族は、できるだけ距離を取ってもらうといいのではないでしょうか。

――授乳中のママがインフルエンザに感染したとき、母乳を与えるのをやめたほうがいいのでしょうか?

今西先生:授乳中のママがインフルエンザにかかったとしても母乳を与えるのをやめる必要はありません。インフルエンザにかかってもインフルエンザウイルスが血中に出てくることはなく、血液から作られる母乳にも影響はないのです。

――インフルエンザに限らず、他の感染症にママがかかった場合でも、母乳を与えるのはやめなくていいんですか?

今西先生:そうですね。新型コロナウイルスを含め、他の感染症にママがかかった場合でも、授乳はやめなくていいですよ。

新生児の体温は環境に左右されやすい

――新生児の体温を測るときは、どのようなタイプの体温計を使えば正確に測ることができますか?

今西先生:体温計には、わきなどに挟んで測る接触型と、肌に向けてセンサーで測る非接触型があります。新生児に限らず体温を計測するときは接触型のなかでも、わきに挟むタイプの体温計をおすすめします。わきに挟むタイプの体温計は、私も含む医療関係者も使っています。耳で測るタイプの体温計は、耳が身体の体幹からかなり離れていることから、誤差が大きく出てしまいますね。

非接触型は、医療現場ではあまり使用しません。とくに新生児の皮膚の厚さにはそれぞれ個人差があるため、光を通して計測する非接触型では誤差がやはり出やすくなってしまいます。

――新生児の体温を測るとき、一日のうちどのタイミングで測るのがいいでしょうか?

今西先生:新生児の体温は環境にかなり左右されます。厚めの服を着ていたり、おくるみを巻いていたり、室温の高い部屋で過ごしたりしていると、新生児の体温は容易に38℃、39℃に上がってしまいます。新生児の体温を計測するのに「よいタイミング」というのは基本的にはありませんし、新生児の体温を1回だけ体温を測って「異常」という判断はできません。

新生児の体温が気になったらまずは、環境を整え直してあげることがポイントになります。薄着にする、室温を調整するなどしてしばらく様子を見て、それでも体温が下がらないようなら、かかりつけの病院を受診していただくのがいいですね。

――新生児の体温は、何℃くらいまで様子を見ればいいのでしょうか?

今西先生:生後3ヶ月までの赤ちゃんはお母さんからの免疫で守られていますので、生後3ヶ月までは発熱したり感染症にかかったりしないはずなんですね。ただまれに赤ちゃん体内に入ってくるウイルスの量が多くなってしまうと、発熱することがあります。そういったケースもありますので、着ている服や環境を整えても赤ちゃんの体温が下がらないなら受診してほしいですね。

「下がらない」体温がどのくらいか、というのは大人も新生児も同じで、だいたい38℃を目安にするといいのではないでしょうか。とはいえ個人差もあるので「赤ちゃんの体温が38℃から下がらない」ことが、すなわち高熱を出している、ということではありません。

手洗いに加えて、できる備えも

感染症の予防には「手洗い」が欠かせないこと。予防接種を受けることができない赤ちゃんがいる家庭では、家族が予防接種を受けること。できる備えをすることで、赤ちゃんが感染症にかかるリスクを軽減することができるのではないでしょうか。

今西先生、ありがとうございました!

取材、文・しのむ イラスト・みとうさゆ

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