強みに思うママが約6割!調査から見えた、ASD(自閉症スペクトラム)の子どもの強みとは?
子育て中のママたちのなかには「ASD(Autism Spectrum Disorder=自閉症スペクトラム)」という言葉を耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか。自閉症スペクトラムの症状や特性はひとつではなく、個人ひとりひとりで異なり多様なのだそうです。
先日「ASDと診断された子」を育てる保護者に聞いた、とある実態調査の結果が発表されました。保護者が感じるASDの子の”あるある”から、ASDの子ならではの強みなどが調査結果からみえてきました。我が子が「ASDかも?」と感じているママだけではなく、子どものお友達にASDの子がいる場合など、子どもへの接し方を考えるためのヒントにもなりそうです。
ひとり遊びが好き、こだわりが強い……。ASDの子どもの特性って?
「ASDと子育て実態調査」を実施したのは「株式会社博報堂」の次世代育児アイテム「Pechat開発チーム」と、「博報堂こそだて家族研究所」です。学習塾や障害児支援事業を行う「株式会社 LITALICO」と共同で行われました。
まずは子どもの性格・特徴のうち、対になる項目A・Bのいずれか当てはまるほうを選んでもらっています。さらに「ASDと診断された子」と「典型発達の子」(自閉症スペクトラムや、その他の発達障害の疑い圏にいない子)を比較しました。
まずは「ひとつのことに熱中する・ハマる」といった性格・特徴。「ASDと診断された子」の保護者は74.1%で、「典型発達の子」の保護者が48.7%でした。「ASDと診断された子」のほうが、やや熱中型が多いようです。
ASDの特性のひとつとして挙げられることが少なくない「こだわり」についても聞いています。「特定の状況へのこだわりが強い」と答えた「ASDと診断された子」の保護者は74.3%。「典型発達の子」の保護者(36.1%)よりも、38.2ポイントも多い結果です。
そして「ひとりで集中して遊ぶのが好き」と答えた「ASDと診断された子」の保護者は81.8%! これは他の項目と比べても、かなり多いスコアとなりました。
「ASDと診断された子」は、好きなものへの情熱が人一倍!
以上をふまえた上で、子どもの性格・特徴として当てはまるものを、すべて回答してもらった結果が次のグラフです。
第1位は「好きなものや興味があることに対する探究心が強い(60.2%)」。これは「典型発達の子」の保護者に聞いた結果よりも13.9ポイント高い結果になりました。
第2位は「何かをやりはじめると、自分が納得するまでやめない(43.1%)」。「典型発達の子(23.0%)」とは20ポイント以上の差があり、好きなことに没頭するスキルの高さが特徴というのがわかります。
以下「まわりが気づかない変化によく気づける(39.4%)」、「一度行った場所や道順を正確に記憶する(34.7%)」となり、察知力や記憶力も特徴のひとつと考える保護者が多い結果になりました。
もしかして、天才?まわりを圧倒する記憶力や探究心
さらに「ASDと診断された子」の保護者に、子どもの発達特性が強みになると思うかどうかを尋ねています。「よく」「ときどき」を合わせた「思う」が約6割と多数派となりました。
中でも大きな特徴である「好きなものや興味があることに対する探究心の強さ」について、保護者たちが感じていることを自由回答から見てみましょう。
『車のナンバープレートを見るのが大好きで「日本全国のものを見たい」と、表を作って見たものをチェック。都道府県に存在するナンバープレートを把握・そのプレートを見た場所、日付もほぼ覚えている』(7歳・男子)
『本3冊をパラパラ読んで「この本、おもしろいね。全部読んだ」と言った。嘘だと思って「どこがおもしろかった?」と聞くと「◯◯ページの、◯◯」。本を開いて確認したら、本当に書いてあった。文庫本を5〜6分で読んだ』(16歳・女子)
『数字に関する全般。算数、時計、電車の時刻表などが好き。家にいて暇さえあればノートやチラシの裏紙に、数字の羅列を書いている』(9歳・男子)
『ハウジングセンターなどで住宅の間取り図などの冊子をもらい、構造や間取り図などを読み込む。自分でも間取り図を書いたりしている』(10歳・女子)
また、子育て中のエピソードなどについても聞いています。
『誕生日に、おばあちゃんから絵本が送られてきた。でもその絵本は、家で私が買った本と同じ。そのとき息子は『家に同じのあるって言ったら、おばあちゃんショックを受けるから”ありがとう!”って言っとこうね』。また保育園に送り私がバイバイすると『ママ、お仕事楽しんでね』。『”お仕事がんばって”じゃないの?』と聞くと、「ママ最近忙しそうだから。”がんばって”って言われなくてもママはがんばってるから。だから”楽しんで”にした」と』(6歳・男子)
『もらったものでもほしかったものでないと、うれしそうな顔はしない。でもほしかったものだと、とても喜ぶ。夕飯も好きなものだと、とても喜ぶ。食べ物は大好きなので、本当にうれしそう』(12歳・女子)
『落ちているどんぐりや石などにも、話しかけることがある。「ひとりで寂しくない?」「かわいい形だね、色もいいね」と、やさしい言葉をかけている』(7歳・男子)
寄せられた多くが思いやりや、ピュアさに関するエピソードだったそうです。
持ち前の強みを活かしていける、柔軟な社会に
子どもの将来に対して、期待することについても聞いています。
もっとも多かったのが「親元を離れても、日常生活を送れるようになってほしい(70.3%)」。以下「好きなことを伸ばしていってほしい(65.9%)」、「自信を持って生活してほしい(64.0%)」が続きました。
また「典型発達の子」の保護者と大きく差がついたのが、「周囲に助けを求められるようになってほしい(60.7%)」の項目でした。
こだわりの強さや好きなことに対するするパワーは、「典型発達の子」と比較しても抜きん出ているのが「ASDの子」かもしれません。社会の適切なサポート体制が整うことで、その素晴らしい特性をより活かしやすくなるのではないでしょうか。
調査手法:インターネット調査
調査エリア:全国
調査時期:2020年1月
調査対象者:20~60代男女(N=1,292)
-ASDと診断された0~22歳の同居子を持つ保護者(N=545)
-ASDやその他の発達障害の診断や疑いのない(典型発達)0~22歳の同居子を持つ保護者(N=747)
文・鈴木麻子 編集・しのむ