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両親の離婚で20年会えなかった無口な祖父が、ずっと大切にしていた孫への思い

父方の祖父は昔から無口な人。私は祖父と遊んだことはおろか、話した記憶すらほとんどありませんでした。

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祖父は温厚な人で、怖いわけではありません。しかし祖母や他の親戚たちのように孫の私にかまうことがなく、私はなんとなく「好かれていないのかな?」と思い、自分からも積極的に祖父に関わろうとはしていませんでした。

そして月日が経ち、私の両親が離婚。父方の親戚と疎遠になってしまったことで、祖父とももちろん会うことはなくなってしまいました。

再会できたのは、私が大人になってから。じつに20年ぶりのことでした。

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まだ1歳にも満たない私と両親の3人がにこやかに写り、母の字で「おじいちゃまおばあちゃま今年もよろしくお願いします」と書かれた、古ぼけた年賀状。

もう30年以上も前の年賀状を、祖母ではなく、私にあまりかまわなかった祖父がずっと大切にしてくれていたことを知って、私はとても驚きました。同時に、そんなに長く持っていたものをどうして今、私にくれるというのだろう? と疑問が起こります。私が戸惑い反応に困っていると、祖父は言葉少なにですが答えてくれました。

「お前とまた会えたのだから、必要ない」。

「孫が可愛い」も「会えて嬉しい」も言わない祖父。しかし私は祖父から好かれていないどころか、とても愛されていたのだとこのとき初めて知ることができました。

それからは、帰省の度に一緒に食事をしにいったり、祖父にとっては曾孫となる息子を抱っこして写真を撮ったりと、祖父との楽しい思い出を増やし……再会から数年後に祖父は、90歳を目前にして亡くなりました。

祖父から受け取った年賀状は、いまや大切な形見になっています。

文、イラスト・Ponko

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