「やっぱりママじゃないと……」そのプレッシャーに押しつぶされそうだった日々
子どもを産んでから、たくさんの人に助けて貰いました。でも「楽」にならないのは何でだったのでしょう?
実母も初孫の面倒は甲斐甲斐しく見てくれましたが、抱っこしてもオムツを変えても泣き止まないときは、やはり私のところに連れてきて「やっぱりママのおっぱいがなくちゃダメね~」と渡されます。
私に抱かれると、おっぱいも飲まずに大人しくなる我が子。本来ならばその姿はとても可愛く、愛おしくあるものなのに、新米ママの私の心には大きなプレッシャーがのしかかります。
夫もとても子供を可愛がってくれていました。しかし少しの時間だけ娘をお願いして帰宅したとき、響き渡る娘の泣き声。
義母も義父も喜んで娘を抱っこしてくれましたが、やはり泣き止まないときは、「やっぱりママが良いのかな~?」と、私に娘を返してきます。
そんな話を夫にしても、パパは「それって、幸せなことなんじゃないの?」とお気楽発言。
「幸せ」……確かにそう。なのに何でこんなに苦しいの? なんで誰も分かってくれないの? 子供を手離したいわけじゃない。でももう「ひとり」に戻ることはできない。
逃げたいわけじゃない。でも、もう逃れられない。「ママ」になった私は、一生「ママ」であり続けなくてはいけない。そんな想いが頭をめぐって、ただただ泣いている娘と向き合うのが苦しくて、娘を抱きしめながら一緒に泣いていました――――。
そんなある日、「コロン」と寝返りをした娘。あまりの一瞬のできごとに驚く私をよそに、寝返りがうてたものの、うつ伏せ体勢が苦しくて泣いている娘。慌てて抱き上げて顔を見ます。
「この子には私しかいない」という「ママ」という重圧に負けそうになるけれど、「私にもこの子がいる」。この子が成長していく分、きっと私も自然と「ママ」として成長できているはず。だからせめて、この子の成長を一番そばで見守って、一番の味方でいてあげよう――――私にできる精一杯をやってあげればよい。
娘を抱きしめながら、少しだけ私に笑顔が戻った瞬間でした。
脚本・渡辺多絵 イラスト・むらみ