不妊治療はいつから始めたらいいの?不妊の3つの原因とは
「子どもがほしいのになかなかできない。でも、病院に行くのはまだちょっと……」という人にお伝えする、不妊治療についての基礎知識。教えてくれたのは、新宿区にある杉山産婦人科理事長、杉山力一先生です。
1年間夫婦生活があるにも関わらず妊娠しなかった場合は「不妊」の可能性
――不妊の定義とはどのようなものですか?
通常の妊娠にチャレンジして1年間できなかったときのことをさします。以前の定義は2年でしたが、結婚年齢が遅くなっていることから1年に変更になりました。ただなんとなく「ほしいな」ではなく、意識的に子どもを作ろうとしているにも関わらず1年間できなかったら、ということです。
――その定義は国で決めたものなのでしょうか。
日本産科婦人科学会です。そもそも不妊症というのは病気ではありません。子どもが欲しい人からしたら、妊娠したいのにできないから病気という扱いにはなりますが、子どもを欲しいと思っていない人からしたら病気でもなんでもないのです。
不妊の原因は3つ。排卵、精子、卵管に問題あり
――不妊症の原因はなんですか?
たくさんあります。大きくいうと、排卵、精子、卵管の3つに問題がある場合があります。卵管というのは卵子の通り道です。でも一番の原因は子作りをしていないことです。「排卵日がいつかわからないから子作りしない」という人は多いです。
若い人であれば、結婚を前提にした「できちゃった婚」が理想的です。いざ結婚しても意外と妊娠しなかったり、排卵日がくずれていて、なかなか妊娠しないということもあるからです。
「平均初診年齢35歳」が抱える問題点
――さきほどの排卵、精子、卵管というのは、不妊の原因として1つのときもあるし、3つ同時に問題があるときもあるということですか?
そうです。しかし、ここの病院に来る人の一番の原因は、年齢です。高齢の場合、卵子の質が悪くなってしまっています。逆に、精子の場合はあまり年齢は関係ありません。80歳だったらわかりませんが、お父さんになる人の年齢が50歳という人はいっぱいいます。
でも、お母さんが50歳という人はいません。「35歳で結婚して、2、3年遊んで、いざ子どもを作ろうと思ったら38歳になっていた」という女性はけっこう多いです。不妊治療を受診する場合の年齢の平均は35歳以上。体外受精をやっている人たちの平均年齢は40歳です。だからなかなか妊娠しないのです。
東京では、25歳での結婚・出産は早い?
――いわゆる妊娠適齢期というのは、25歳から30歳ですよね。
そうですね。ただ、そうはいっても25歳だと「まだ結婚は早い」と思う女性の方が多いのではないですか? 日本の平均初婚年齢としては29.4歳ですが、それは地方に住む人の結婚が早いからです。東京都内だけでいったら30歳を超えています。
25歳で結婚というと早く感じるかもしれませんが、2人目を妊娠出産ということまで考えると、早くはないんですよ。女性も男性も、社会に出て、一人前になって、子どもを産み育てていけるだけの経済力をつけてからと考えていると結婚や妊娠が遅くなってしまうのです。
高齢出産は35歳から。40歳で妊活スタートする人も
――高齢出産は何歳くらいからのことをいいますか?
一般的には35歳からです。しかし、今は仕事が忙しくて子どもを作るのは40歳からという人も増えています。この病院の患者さんの平均も35歳以上だから、7割くらいが高齢出産になります。みなさん自分自身で「出産年齢が高い」ということはわかっています。
――2人目が35歳を超えての出産ということもありますよね。
2人目の場合は、同じ高齢出産になっても心の余裕が違いますよね。精子がいないとか、卵管が詰まっているということも考えにくいため、2人目がなかなかできないというのは、年齢によるものが一番大きいでしょうね。
加齢には勝てない。妊活するなら早めにスタートを
――不妊にならないためできることはありますか?
一番は早く子どもを作ろうとすること。規則正しい生活をすることは当然ですが、いくら規則正しい生活をしているからといっても40歳になったら、やはり妊娠しづらくなります。加齢には勝てません。
アンチエイジングと一緒で、卵子の質は、細胞だから年齢とともに悪くなります。それは仕方がない。肌と一緒で「いつまでも肌がきれいでいられるためにはどうしたらいいですか」という話です。それをいうと、10代の頃は何もしなくても肌はきれいですが、40代になったらがんばっていても10代の頃のようにはいきません。細胞なので、こればっかりはどうにもならないのです。「子どもがほしいと思っているのになかなかできない」という場合は、まずは病院にきて相談することをおすすめします。
取材・編集部 文・長瀬由利子 編集・山内ウェンディ イラスト・天城ヨリ子