キャサリン妃の産後7時間での退院は特別なこと。「当たり前のこと」だと思わないで
4月23日、イギリス王室のウィリアム王子、キャサリン妃夫妻に第3子となる男の子が誕生しました。この第3子の誕生のニュースで世界中が祝福ムード一色になりましたね。
このニュースを聞いた筆者は、「今回は、何時間で退院するんだろう」と考えていました。
1人目のジョージ王子を出産したキャサリン妃は、産後26時間で退院されました。当時妊娠中だった筆者は「えっ!? 産後26時間で退院するの?」と、ものすごく衝撃を受けたのです。さらに2人目となるシャーロット王女のときには、産後10時間での退院。赤ちゃんを抱いたキャサリン妃の、とても産後とは思えない美しい姿は、母になって1年程経過していた筆者にとっては「すごい」というよりも、「大丈夫なの?」という心配の気持ちでいっぱいになるものでした。
そして3人目を出産したキャサリン妃は、産後7時間という驚異的な早さでの退院となります。赤いドレスを着てルイ王子を抱いたキャサリン妃の映像を見たとき、祝福の気持ちはもちろんあったのですが……「この映像を見て、これが当たりまえだと捉える人がいないといいな」という懸念もわいてきました。
産後7時間で退院!?自分の産後と比較して「無理無理!」
今回の報道をテレビで見ていて感じたのは、まだ子どもを持ったことのない人たち(特に男性)が、「産後7時間で、キレイな服を着てメイクをして、ハイヒールを履いて退院」を当たり前に捉えてしまわないかということ。
案の定、初産で臨月の友人から、『キャサリン妃の退院のニュースを見て、「7時間で退院するんだねぇ」と旦那が言ってる。私も同じことができると思われていたらどうしよう……』と連絡をしてきました。
このニュースを見ていたママスタコミュニティのママたちはみなさん、口を揃えて「無理!」という反応でした。
『無理無理。爆睡中だったわ!』
『眠いし股も子宮も痛すぎて絶対無理』
『靴でもふらふらしたわ』
『下半身が重力に負けてるように感じるあの状態でヒールなんて無理!』
『ムリムリ……。縫ったところが痛くてしばらくロボットみたいな歩き方してたもん』
『後腹痛すぎてのたうちまわってた。一人目より二人目、二人目より三人目とだんだん後腹が痛くてしんどい』
「産後7時間で退院できる」と認識しないで
欧米では、出産の際に日帰り入院が可能となる条件、環境が整っています。
たとえば産後の体の回復が早い傾向のある「無痛分娩」が日本よりも普及しているということ(キャサリン妃が無痛分娩を選択したかどうかについては、現在のところ公式発表がありません)。退院後もメディカルサポートがあることです。
もしかしたら、赤ちゃんの誕生を楽しみにしている国民へのお披露目を早く行いたいという、キャサリン妃の優しいお気持ちもあるのかもしれません。
しかし産後7時間での退院は、「特別なこと」なんです。キャサリン妃と同じことを、産後すぐの日本のママに求めてはダメです。
日本には「産後の肥立ち」という言葉があります。産後1か月はできるだけ赤ちゃんと一緒に横になり、安静に過ごすようにと言われているのがこの時期です。いつでも横になれるようにお布団は敷きっぱなしという状態なので、その期間をすぎると「床上げ」という言葉で表現します。子宮の大きさが元に戻ったり、悪露が出たりと、この時期のママの身体は妊娠前の状態へと少しずつ戻っていきます。決して、無理をしてはいけない時期なのです。
産後の身体が辛く気持ちも不安で、退院時、「もっとここにいたい」と感じるママも少なくありません。回復が早い人もいますが、その期間の無理は禁物であることは同じ。日本人の体型、体質では、産後7時間での退院を許可する産院はまれでしょう。
『旦那は「あの人が子育てするワケじゃないから大丈夫なんじゃない?」て言ってたけど、いや、違うよ。そういうことじゃなくて、産んですぐのママの身体のことを考えて』
「産後7時間で退院!」と伝えるメディアが多ければ多いほど、「産後7時間でハイヒールを履いて退院できる」と認識されるのではないかと心配になります。「それは当たり前なことではない」という認識を、改めて持ってほしいなと思います。
文・鈴木じゅん子 編集・しらたまよ