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「保育士ができる保活もある」新刊発売記念 てぃ先生ロングインタビュー

てぃ先生3

3/23 コミカライズ本「てぃ先生 3」出版記念!
イケメン熱血保育士・てぃ先生にインタビュー
「わが子の先生には聞けずにいたこと、おたずねします!」

お会いしてみると、金八先生に負けないほどの熱血ぶり。
子供たちへの愛情と保育士という職業への誇りに溢れた、まるで有能なビジネスパーソン。
ツイッターや漫画化も、同様の思いから始まった、ある意味、
てぃ先生流のプロジェクトだったんです。
通常、ママたちは保育士さんと長らく語り合える機会はなかなかありません。
そこで、今インタビューでは、てぃ先生には申し訳ありませんが、ママ代表として、
保育士さんに聞いてみたかったあれこれをまとめてぶつけてみました。
虚飾ナシ、保育士さんの本音をお届けします。
 保育士になろうと決意したのはいつごろですか?

高校生のときです。このエピソードはまさに新刊の第3巻にも特別編として掲載されていますが、進路について悩んでいた当時、電車内で目の前に座った女の子が僕に笑いかけてくれまして、そのときにひらめいたというか気づかされたという感じです。
「あ、僕は以前から子供が好きだったな」と。
子供服や玩具メーカーなど子供にまつわる職業は様々ありますが、そのなかでも直接子供と関わることができる、もっといえば子供たちと遊べる職業がよく、保育士を目指すことにしました。
男性の保育士というとまだまだ数はそう多くないですよね。
そうですね、学生時代も6~70人いるクラスに男性生徒は4人とかでしたからね。ただ、男性が少ない職業だとは知っていましたので、気になりませんでした。
専門学校で学びだして、保育士になりたい願望はますます強まったわけですか。
授業より、2週間の実習で子供と触れ合って以降により強まりました。
遊びのなかに狙いがあったり、先生たちの声がけや動きが子供たちの気づきに繋がったりするのを知って、「保育」の魅力にハマり、もっと学びたくなりました。
幼稚園の先生ではなく保育園の先生を選んだのはなぜですか?
単純なんですけど、子供たちと過ごす時間がより長いからです(笑)
「子供と遊びたい」というのはどういう感覚なのでしょうか。
何より可愛いからです!これはとても重要なことで、可愛いから面白い、敏感でいられる、気づけることがあるんです。保育士になりたてのころは、「子供たちをまとめなきゃ」、「子供たちをよくしなきゃ」と先生然としていようと気張っていました。でもそんなことよりも、時には童心に返り、子供たちと同じ目線でいることのほうが大切なんです。

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第3巻より

それは子供と接するうちに気がついたんですか?
そうですね。「行ってきます」というより「ただいま」という気持ちで登園してきてほしいし、肩の力を抜いて過ごしてほしい。ですから、「(僕は)先生(だぞ)!」というよりも、「(君たちと)同じ(なんだよ)!」というムードを前面に出すようにしているんです。
子供たちが自由でダイナミックに過ごす姿を見ていると、やっぱり「先生が見ていてくれるなあ」くらいがちょうどよくて、自発性や社会性も育ちやすいとわかります。
 保育園でリラックスして過ごせているとうかがってもなお、働く身(ママ)としては後ろ髪を引かれる思いがあります。
僕は働くママっていいなと思っていますよ。育児は母親だけのものという考え方はもはや昔のものです。その考え方を否定するわけではありませんが、時代が変わりつつあるのは事実です。あと10年もしないうちに、きっと共働きスタイルはスタンダードになっていくでしょう。だから、引け目に感じることなく、「時代の先を行っているんだ」くらいの気持ちでいていいのではないでしょうか。
子供たちだって、彼らが大人になれば共働きをしながら子育てをするケースがほとんどでしょうからね。今のうちからそれを体感しておくのは悪くありません。
ご存知のとおり、登園時に大泣きしていたとしても、おとうさんやおかあさんが行ってしまった後は、ぴたっと泣き止んで、「わ~い!! 」とやっていますから、どうぞ安心してください!
子供たちに、親が不在であることを噛みしめ、我慢している様子は見受けられませんか。
たしかにとことん我慢しているという子もいます。子供って3歳まででだいたいの性格が決まるといわれていて、それまで自宅で「泣いちゃダメ」と教育されてきた子は泣かないケースが多いですし、「ワガママ言わない!」と躾けられてきた子はワガママをあまり言いません。たとえ先生が「思っていることを言ったり、泣いたりしてもいいんだよ」と声をかけても、そう簡単に変わるものではありません。おかあさんたちが見ていなくても、子供たちは「おかあさんの教えは保育園でも絶対!」なんです(笑)。
日中親と離れている子供たちの様子を見て、正直、「かわいそうだなぁ」と思うことはありますか?
時々は「おかあさんたちが余裕のあるときに、1日親子で一緒に過ごせたらいいね」と思ったりはしますが…。でも寂しさを感じさせないようにしてあげるのが、保育園の役割でもありますよね。
「保育士としてこうあろう」と決めていることってありますか?
僕は、絶対に怒らないと決めています。
たとえば「高いところに上っちゃだめ!」と怒ったとします。それで子供が上るのをやめたとしてもそれは怒られたからやめただけ。「眺めがいいから」とか「別の子に触られたくないから」といった子供なりの理由に向き合っていないので、その想いは解消されていなく、また繰り返す可能性があります。そこでもし園庭に連れ出し、ジャングルジムなどで遊ぶことをすすめてあげるなどして次のステップへと導くようにすれば、怒る必要はありませんし、子供たちにも事の本質が伝わりやすくなります。
 先生は父性と母性、どちらをもって保育をしていますか?
父性です。
保育士になりたてのころは、男であることを意識せず、女性の保育士さんと同じようにふるまおうと思っていたんです。でも、実際には、子供は激しい運動の相手や戦いごっこを求めてきますし、女性の先生たちには力仕事を頼まれるわけです。
「0歳児クラスをもってみたい」と長らく願っていますが、一度も担任になったことはありません。0歳児クラスには母性が優先されるからです。
そうこうしているうちに、男っぽさ、おとうさんっぽさを生かすべきだと意識を変えました。そのほうが、男性の保育士の需要も増えますよね。

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第3巻より

親でも自分の子供にイラッとさせられることが多々あるのですが、先生はありませんか?
先生になった当初はいろいろやってみたんです。怒鳴ってみたり、怒ってみたりとか。うまくいくもの、いかないものがあり、うまくいってもこちらの後味がよくないものというのもありました。それで気づいたんです。「怒らないで伝えられたらいちばんいいな」と。
そもそも考えてみれば、子供たちがうまくまとまらない理由は、先手を打てていない大人や環境のせい。それに気づいたら、頭を使えるようになり、イライラしなくなりました。
たとえばどうしたら?
子供と電車に乗るとします。たった3駅で目的地に着くとしても、子供は飽きて、騒ぎ出す可能性があるわけです。飽きてしまってからでは、後の祭りですよね。ですから、乗車前に状況を説明しておき、乗車してからは、子供の表情や挙動を見ながら、「今日は静かにできておりこうさんだね」と先に褒める!
褒めると子供は気持ちが上がり、「じゃあ、もうちょっといい子にしていようかな」って現状キープに努めてくれるものです。
先ほどの、高いところに上りたい子供の話についても同様で、保育士や大人が、子供が簡単には高いところに上れないような環境づくりをしておけばよかったんです。
子供の魅力ってなんだと思いますか?
ありとあらゆる可能性を秘めていることでしょうか。将来、どんな職業に就くんだろうとかどんな大人になるんだろうとか思いますよね。素敵だなって思います。
子供たちと接していて、先生の人生観が変わったようなことはありますか?
全力で周囲に信頼を寄せている純粋さとか、いつでも誰に対しても笑顔でいるところを見ていると、「悔い改めよ」といわれているような気持ちになって、「僕も彼らを真似たら誰からも愛されるようになるかな」なんて思いますね(爆笑)。

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第3巻より

育児って、単純でも簡単でもないんだと強く感じたエピソードがあれば教えてください。
何につけ、子供は言うことを聞いてくれません。子供が絡むと大人の予定通りには運びません。
登園時間を過ぎてももたもたとしていて、「行くわよ」と声をかけても「行かない」と答える。自宅でも、日々、その繰り返しではありませんか?
保育園内で似たようなことばかりです。大人には粘りが必要ですね。
クラスに20人いたら20とおりの最善策を考えながら応対しているんですか?
僕の場合は、頭の中でなんとなく全員を4タイプに分けて考えています。縦軸と横軸があるわけでもなく、各タイプに名称があるわけでもありません。でも「この子は卒園生のあの子がいた『あっち系』だな、じゃあ、あの子に通じた言葉がけを試してみよう」なんていうことをしています。
幼稚園と保育園の違いを意識していますか?
そりゃあ、していますよ。前者は就学に向けたプログラムを着々とこなしているのですから。それを思うと、保育園児も、就学してから困らないように育ててあげたいなと思っています。たとえば、年長さんになるころには、長時間座っていられるように、30分かけてつくる制作内容を考えて、工作をさせたりします。毎日、毎日、そうしているうちに、30分、45分と落ち着いて席についていられるようになります。
保育園だからといって就学のためのカリキュラムを組んではいけないという決まりはないので、各保育園それぞれの考え方により、最低限以上のことをしていると思います。
先生というと、=聖職というイメージがあり、あまりビジネス的な視点を持って働く姿が想像できません。「園を運営する」といったことは意識していますか?
僕は、常に考えています。「子供」といえど、「おとうさん、おかあさん」といえど、保育料をいただいている以上は「お客様」なんです。かつ、保育はサービスです。不衛生な現場は言語道断でしょうし、お迎え時にいつも同じ遊びをしているのを見たら(子供がその遊びが好きだというのとは別)、疑問に思うことでしょう。
誤解を恐れずに言えば、子供たちの保育、発達を念頭に置きながら、おとうさん、おかあさんウケを考慮するのは、ビジネスとして当然です。
満足感が保育園への信頼感に繋がりますよね。
清潔感と、子供たちの元気な声、楽しそうな笑顔や保育士たちの明るい表情に満ちた園なら、「安心して子どもを預けられる」と思っていただけるでしょうし、「この園に入れたい」という希望者も増えるはずです。
昨今、保育士の待遇が問題視されていますが。
個人個人がキラキラしてきて、園全体がキラキラしてきて、それがじわじわと広まって、最終的には日本全体に広がっていけば、「保育士がとても重要仕事である」という位置づけになり、ひいては平均給与が上がるようなことになるかもしれませんよね。
保育士である我々も、愚痴をこぼしているだけでは、給与なんて一生上がりません。
そんな隙間時間があったら、もっとポジティブに活動します。
今日やったことが明日にどうこう変わる話ではありませんが、
僕ら現役保育士ができること、小さなこと、キラキラを積み重ねていけば、僕らが引退した後の保育士さんたちの処遇が改善されるかもしれないと信じるしかありません。
ゆくゆくは…という長い時間を要する理想論だとしても、「保育士ができる保活もある」と思っています。
保育士の意識が高まることで保育が良質となり、良質な保育や教育を受ける子供はいい子に育ちます。そんなふうに明るい未来をイメージしています。
いわゆる会社員のように、日々の保育を評価されたら昇給が望めるというようなことはあるのですか?
小学生以上だとクラスのテストの平均値が高いなど、日々の教育の結果が数字などでみえやすいんですけれどね、保育園ではそうはいきません。
「何をモチベーションにしているの?」とたずねられることも少なくありませんが(笑)、ひと言、「子供たちのため」に尽きます。
毎日笑っている子が増えれば、結果、自分も幸せなんです。
てぃ先生の漫画を読んで、「保育士になりたい」と希望する小・中学生も増えたようですから、これも「保活」のひとつかもしれませんね。
保育や子育てが楽しい、最高!という番組や活字、漫画って見たことがないんですよね。そのせいか、世の中的には「子育ては大変」というイメージが浸透してしまっていて、「将来、子供は生みたくない」と話す若者が少なくない。
だから、せめて僕は「子供って意外に面白いんだ」とか「子育てやってみたいな」とか思ってもらえるようにと、ツイッターをやってみたり、漫画化のお話に協力させていただいたりしています。
3月23日に3巻目の漫画本が発売されましたね! これまでもですが、幼児時代限定の子供たちのピュアな言動がたくさん詰まっていて、自分の子供の様子を重ね合わせて読みました。
大人には真似できない行動や、大人の想像を超えた反応、アイデアはこの時期だけのものですからね。皆さんにも、ご自身のお子さんが言ったこと、したことはメモしておくことをおススメします!

■原作 てぃ先生

フォロワー数37万人超えのtwitterユーザー。東京の保育士。ママですら知りえない、園の中での子どもたちの生レポ、思わずママが「あるある」と共感してしまう、幼児ならではの可愛い言動、発想、そんな彼らとのやりとりを、日々つぶやいているうちに、今や日本で最も著名な保育士といっても過言でないほどの存在に。これらのつぶやきのコミカライズ本・「てぃ先生1」、「てぃ先生2」(共にMFコミックス刊)の続編が近日、発売予定! 「もう2度とこんなセリフ、聞けないかも」、「こんな愛らしい姿は今だけ」と、読めばきっと、幼児との時間がどれほど貴重なものかあらためて感じられるはず。
twitter:@_happyboy

■漫画 ゆくえ高那

コミックフラッパーにて「てぃ先生」コミカライズ
gogoバンチ「ちょっとまて野球部!」連載など

取材・文/blackcat

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