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親として子の可能性を信じる姿に号泣 ミュージカル『ビリー・エリオット 〜リトル・ダンサー〜』

この夏大注目のミュージカル『ビリー・エリオット 〜リトル・ダンサー〜』がついに開幕しました。
2005年5月にロンドンで初演されて以来、世界1000万人以上の観客が賞賛。英オリヴィエ賞4部門、米トニー賞10部門を制覇をはじめ、全世界で80以上の演劇賞を受賞したミュージカルが、このたび待望の日本公演が開かれることに。

イギリスの炭鉱街を舞台に、バレエダンサーの夢を追いかける少年・ビリー・エリオットの成長を描いたこの作品、今回運よくプレビュー公演を観劇する機会に恵まれました。ミュージカル観劇は生まれて初めて!の筆者が『ビリー・エリオット 〜リトル・ダンサー〜』レポートをお送りしたいと思います。

主人公のビリーを演じるのは、オーディションで選ばれた5人の小中学生

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恥ずかしながら、ミュージカルに関しての知識ゼロの筆者……。「歌って踊ってお芝居するもの」という、ミュージカルファンの方からお叱りを受けそうな知識レベルで会場へ。しかし座席に着いてみると、目の前に広がる大きなステージに思わず胸が高鳴ります。

興奮をおさえつつパンフレットを開くと、目に飛び込んでくるのは、主人公のビリー・エリオットを演じる5人の少年たち。
日本公演のビリー・エリオット役のオーディションには1,346名もの応募があったそうですが、舞台を飾ることができるのはそのうちたったの5名。一流コーチ陣の1年以上にわたる指導を受けて、あらゆるダンスを身につけた役者へと成長したのだそう。

しかもそんな彼らの年齢は、なんと小学校5年生から中学3年生というのですから驚きです。

(後列)お父さん役:吉田鋼太郎・益岡徹、ウィルキンソン先生役:柚希礼音、島田歌穂(前列)ビリー役:加藤航世・木村咲哉・前田晴翔・未来和樹・山城力(撮影:阿部高之)

(後列)お父さん役:吉田鋼太郎・益岡徹、ウィルキンソン先生役:柚希礼音・島田歌穂(前列)ビリー役:加藤航世・木村咲哉・前田晴翔・未来和樹・山城力(撮影:阿部高之)

「最年少は小学5年生! そんな小さい子がミュージカルの主役を演じるなんてすごいなぁ」という気持ちでパンフレットを読み進めます。それぞれのビリーたちが語る役への想いは、とても小中学生とは思えないほどしっかりしていて、熱意に満ちていました。

ちなみにこの日のビリー役は、未来和樹さん(中学3年生)でした。

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我が子の可能性を信じる父・ジャッキーの姿に涙が止まらない

この作品は、1984年のイングランド北部の炭鉱町イージントンが舞台。
炭鉱労働者でありビリー・エリオットの父であるジャッキーと兄のトニーはストライキに参加し、家の中はストライキの話でもちきり。ビリーはボクシングのレッスンに通っているが、ある日、ひょんなことから同じホールで開かれているバレエクラスのレッスンに参加することになります。
そこで出会ったウィルキンソン先生が、ビリーのバレエの才能に気付きバレエを薦めます。最初は嫌がっていたビリーも、次第にバレエの虜となり、家族に内緒でウィルキンソン先生の元へ通うようになります。
しかしある日、父ジャッキーにバレエ教室に通っていることがバレて、ビリーはバレエ禁止を言い渡されてしまいます。そんな彼に、ウィルキンソン先生はロイヤル・バレエ・スクールのオーディションを受けることを薦め、2人は密かにオーディション用の練習を続けます。
いよいよ、オーディション当日。家族に内緒で出かける予定だったビリーに予期せぬ出来事が……。というストーリーです。

炭鉱労働者であり、ストで戦っている最中の父・ジャッキーや兄のトニーからは、バレエに目覚めたビリーの夢は当然のように反対されます。「男がするものではない!」と許してもらえなくても、その夢を諦めることができないビリー。そして、ビリーのバレエの才能を見出し、その世界への道しるべとなるウィルキンソン先生……。

ビリーの夢をとりまく一連のストーリーは、親である筆者にとってとても考えさせられるものでした。
まだまだ小さな子どもだと思っていても、子どもは自らの世界の中で「夢」を見つけてくるもの。劇中のビリーは、13歳ほどの少年。親として、その夢を最初から応援できるものなのだろうか……。夢を持つことに年齢なんて関係ないのに、親という立場から、ジャッキーのように反対してしまうこともあるのではないか……。

夢を見つけたビリーと、それを頭ごなしに反対するジャッキー。
どちらの気持ちも理解できる立場として舞台を見つめていると、自分の子育てについても考えてしまう瞬間がたくさんありました。

「あの子には才能がある」。ビリーにバレエの才能があると知ったジャッキーは、ビリーの夢を応援することを決意します。我が子の可能性を信じると決めたジャッキーの決意のシーンは、親として気持ちを重ね合わせてしまい、涙が止まりませんでした。

“子どもの夢を信じて、それを全力で応援する”というのは親として理想の姿ではあるものの、実際にそのような姿勢を貫くのは、決して簡単なことではないと思います。
ましてや炭鉱労働者が迫害されていると80年代のイギリスで、しかも男子がバレエダンサーを目指すなんてことは、はるかに困難だったはず。それでもなお息子の夢を応援するというジャッキーの決断は、同じ親として尊敬に値するものでした。

(左)マイケル役:持田唯颯(右)ビリー役:未来和樹(撮影:阿部高之)

(左)マイケル役:持田唯颯(右)ビリー役:未来和樹(撮影:阿部高之)

「年齢なんて関係ない。子どもの才能を潰さずに伸ばしてあげること」

これは、親となった今、これからの自分が担っていかなくてはいけない大きな責任なのだと、この作品をきっかけに改めて考えさせられました。

大舞台を演じきった少年たちと、その夢を支えた親たちにも拍手を

『ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー〜』は、間に20分の休憩を挟みますが、約3時間弱の長丁場。
その間、主役であるビリーはほぼ舞台に立ちっぱなしなんです。15歳の未来くんが、舞台の上で演じ、歌い、バレエ、タップを踊る姿にも感動してしまいます。
この作品に出演が決まったことでタップと体操を始めたという未来くん。中学3年生の少年が、この役を演じるためにしてきた努力を思うと、それだけで胸がいっぱいになります。

初めてミュージカルを観た筆者ですが、まさか、頭が痛くなるほど号泣することになるとは思ってもいませんでした。
ストーリーが素晴らしいのはもちろんなのですが、目の前で演じる役者さんたちの圧倒的な演技力にも心が震えるほど感動するものなんですね。

すっかり、ミュージカルの魅力の虜になってしまった筆者。
「こうなったら、期間中に5人のビリー・エリオットをすべて観たい!」という気持ちになったくらい、胸をわしづかみにされてしまいました。

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筆者が観劇したプレビュー公演時には、カーテンコールでの撮影が可能だったので、記念に撮影をさせてもらいました。役者さんたちのやりきった!という笑顔がとても印象的でした。

ジャッキーがビリーの夢を応援しようと決意したシーンでボロボロ泣いた筆者ですが、帰り道、この日のために厳しいレッスンを乗り越えてきたビリー役の子どもたちのことを考え、そして彼らをここまで支えてきたであろう親御さんの気持ちにも想いをはせて、またウルウルしてしまいました。

あれだけの舞台を、10代前半の少年が務め上げるには並大抵ではない努力が必要なはず。
本人の努力も素晴らしいですが、それを支えてきたご家族にも拍手を送りたいと思いながら、涙を流した筆者なのでした。

ミュージカル『ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー〜』、感想をどのように締めくくろうかといろいろ考えたのですが、シンプルに一言。すばらしい作品です。

取材、文・鈴木じゅん子 撮影・阿部高之 編集・伊東杏奈

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