井戸端会議はなくなる!?会話の華を咲かせる舞台は「ファミレス」や「LINE」に
こんにちは。斗比主閲子です。
今年の流行語大賞には「爆買い」が選ばれました。爆買いとは主に中国人観光客による日本での爆発的な購買行動ですね。授賞式では中国資本になった家電量販店のラオックスの社長が招待されたそうですが、私は他の会社、例えば象印(正式な社名は象印マホービン)でも良かったんじゃないかなと考えていました。中国人観光客の中では今は少し落ち着いてきましたけど象印の炊飯器は人気だし、魔法瓶の評価も高いそうです。
そんな象印が井戸端会議に関する調査を実施したらしいとママスタセレクト編集部さんから教えていただき、「え、何その調査?」と怪訝に思って読んでみたら、「ああー、なるほど!」とかなり納得できる結果が掲載されていまして、せっかくなので皆さんにもシェアいたします。
https://www.zojirushi.co.jp/topics/idobata2015.html
なお、記事に掲載しているグラフはすべて上記調査が出典となります。また、井戸端会議の定義は象印は「主婦同士が普段行っているコミュニケーション活動」としています。
LINEやメールでの井戸端会議が50%に!
象印はこの調査を30年前と15年前と今年の合計3回同じ調査をしています。つまり30年前と今の井戸端会議の比較ができるわけですね。最初に紹介するのは、井戸端会議の場所の変化です。年々、メールなどでの井戸端会議をしている人の割合が増え、今年の調査では50%に達しています。
井戸端会議というのは、元々昔の住居が共同井戸を中心にした長屋で構成されており、まさにその井戸の端で女性が話をしていたことがその名前の由来です。今では井戸がなくなったため、団地の通りだったり、幼稚園や保育園の前だったり、そういう道端で井戸端会議がされていたわけです。この調査では、道端での会議を追い越すように、ファミレスやメールなどでの井戸端会議が増加しています。そして、お互いの家や電話での井戸端会議が減少している。
この結果に納得できる人は多いのではないでしょうか。今は共働き家庭も増えてきていますし、ライフスタイルが多様化する中で、時間や場所を選ばないLINEやメールは情報交換の方法としてかなり便利です。集合場所としてお互いの家が減りファミレスが増えているのは、事前に掃除をしたり、飲み物を用意したりする必要がなく、気兼ねなさがいいところだと理解されているからですよね。
話し相手は世代や価値観が近い人に
井戸端会議の相手もかなり変化しています。昔の井戸端会議では隣近所の人や地域の人とも話をしていたイメージがありますが、調査によればそういった人との井戸端会議は減少し、子供の年齢が同じ親や、学生時代の同級生が増えているようです。LINEが使える世代です。
アンケート対象は、首都圏の専業主婦を対象ですので、地域付き合いがまだちゃんと残っている地方で調査すれば調査結果は変わってくるでしょうね。
話す時間は半分に
井戸端会議で話している内容はあまり大きな変化はないようですが、
一日の会話の時間は30年前の平均1時間強から28分と半減しています。
これもLINEやメールを利用していることの影響が出ています。LINEやメールでの会話時間を除くと平均は34分に増えるそうです。お互い直接顔を合わせる形じゃないと(中毒の人は除いて)意外と時間は使わないんですよね。井戸端会議の時間が減っている一方で、悩みが解決したり、ストレス解消したり、そういったメリットが引き続きあるのも調査では確認されています。
「井戸端会議」はなくなる!?
と、ここまで調査結果を見てきたわけですが、違和感を覚えられている方もいらっしゃるのではないでしょうか。LINEやメールを利用しての会話というのがはたして井戸端会議なのだろうかと。冒頭に触れた通り、象印は、井戸端会議を「主婦同士が普段行っているコミュニケーション活動」と定義していますが、LINEやメールを利用しての会話というのは、井戸端会議という言葉からイメージされるものと程遠いですよね。
また、この調査対象は専業主婦に限定していますが、ご存知の通り、日本ではすでに共働き世帯と片働き世帯では、共働き世帯の世帯数が上回っています。共働き世帯の女性をこの調査対象に含めたら、恐らくLINEやメールの利用率はもっと増えるのではないかと考えられます。日中働いていれば物理的に接触する機会は少なくなりますからね。今時の小学校のPTA活動でも、共働き世帯が増えたこともあり、顔を突き合わせて打ち合わせをする時間を決めるのに苦労をするようになっています。
密室育児の弊害は今ではよく知られるようになりました。人間は誰かとコミュニケーションをする機会がないと徐々に疲弊していくものです。愚痴を話すことでストレスが解消され、他人の話を聞いて視点が広がるなど、会話の効用は確かにあります。
そういう会話の必要性が変わらない一方でライフスタイルが多様化すれば、直接顔を合わさなくてもコミュニケーションできるスマホやパソコンは更に利用されていくことでしょう。
最初に流行語に触れましたが、流行語というのは一気に浸透するものの寿命は短い傾向があります。井戸端会議はそれこそ江戸時代から見られた現象で、言葉自体は長生きしてきましたが、井戸のある家も少なく、道端で会話をすることもなくなった現代では、井戸端会議の効用は変わらず残っても、井戸端会議という言葉はそろそろ役目を終えるのかもしれません。
文・斗比主閲子