今井絵理子:第4回 生後三日でほぼ耳が聞こえない感音性難聴と診断された
全8回でお届けしている、今井絵理子さんへのインタビュー。
第4回目となる今回は息子さんについてです。21歳の時に出産された息子さんは、先天性の聴覚障がいを持って産まれてきました。その診断を受けた日のことからお話を伺っていきます。
妊娠中の健診時に異常は見られなかったのですか?
妊娠中は分からなかったんです。健診でも特に異常が見つかることはなくて、安産で出産できてほっとしていたんです。
診断を受ける前に、何か気になることはありましたか?
なんとなく覚えているのは、産まれた瞬間の泣き声がすごく小さかったんですよね。
イメージでは、赤ちゃんて「おぎゃー!」と、大きな声で泣いて産まれてくると思っていたんですけど、そうじゃなくて、すごく泣き声が小さいなぁと思ったのは覚えています。
だから、「大丈夫かな?」と思っていたんですけど、「異常はありません」と言われて、胸の上に乗せてもらってカンガルーケアをしたので、安心したんです。
産後3日目に、息子さんの聴覚障がいを診断されたということですが、それはどのような検査をしたのですか?
最近のことは分からないんですけど、私が出産した病院では、任意で「聴覚スクリーニング検査」というのがあったんです。
「その検査をしますか?」と聞かれて、なんの疑いもなく「お願いします」と検査を受けてみたら、息子の耳が聞こえていないということが分かったんです。
もし、その検査を受けていなかったら、その時点では耳が聞こえていないことは分からなかったんですか?
そうですね。耳が聞こえない子っていうのは、おかしいなと気づくまでに2、3年かかると言われているんですよ。
でも、聞こえない子は早期発見・早期教育が大事だと言われているので、補聴器をつけたり、言葉の練習だったり、手話の勉強だったりのコミュニケーション方法を小さい頃から身につけられるので、私は生後3日でそれが分かってすごく良かったと思っています。
スクリーニング検査がなぜ任意なのかというと、産後間もないお母さんにその診断は負担が大きいという理由かららしいです。
息子さんの耳が聞こえていないと分かった時、どんな気持ちでしたか?
そうですね…。「なんで耳なの?」と思いました。
音楽をやっている2人だったので、「なんで耳を奪っちゃったのかな」と。診断を受けた時は、ショックでしたね。
息子さんが診断された「感音性難聴」とは、どんな病気ですか?
最初の検査では、音への反応がないので両方の耳が聞こえていないようだということを告げられたんです。
でも、その検査では聞こえていないということしか分からないので、1ヵ月後にさらに詳しい検査をする機関があるので、そこへ行って検査を受けたんです。
そこで診断されたのが「感音性難聴」なんです。これはもうほぼ聞こえないということでした。
難聴であれば、「補聴器をつける」ということを思い浮かべると思うんですが、補聴器というのはわずかに聞こえている音を拡声器のような役割で大きくして聞こえるようにする仕組みなんですね。
でも、息子の場合は全く聞こえていないので補聴器は意味がないんです。
音をキャッチするところに障がいがあるというのが「感音性難聴」です。
その診断を受けた後のお気持ちを聞かせてください。
診断を聞いた日はどうしても受け止められない気持ちがあって一日泣きました。
何が悲しいって、息子に「ママ」と呼んでもらえないのかなとか、私の声が届かないのかなとか思うと、すごく悲しくなって、私が音楽をやっていても、息子と大好きな音楽も一緒に聞けないんだと思ったら、私自身も音楽活動をやめようと思ったんです。
自分ばかりが好きなことをしていちゃいけないような気になって。
息子がわからない歌を歌っていても意味がないなと思ったんです。
そこから、どのように立ち直っていかれたのですか?
沖縄の家族とか、周りの人達がすごく前向きにとらえてくれて、支えてくれたことがあって、「これは、神様が与えてくれた試練なんだな」と思うようになったんです。
神様が与えてくれた試練なんだから、乗り越えられないはずはないし、選ばれたんだなと思うようにして、まずはその病気について調べ始めました。
情報がたくさん溢れている時代なので、だんだん元気になって、勇気をもらって、前へ前へ進むことができたなと思います。
任意で受けた「聴覚スクリーニング検査」で分かった、息子さんの聴覚障がい。
今井さんは、診断を受けた日に一日泣いて過ごした後は、泣かずに前を向いて息子さんとの障がいと向き合うことを決めたと話してくださいました。
次回は、聴覚障がいの息子さんの育児について、お話を伺っていきます。
(取材・文:上原かほり 撮影:chiai)