【栃木県那須塩原市 渡辺美知太郎市長】第3回 観光地だけど住める。市のポテンシャルを知ってほしい

皆さんは、図書館と聞くとどんな外観をイメージしますか? 本を守るためにあまり太陽光が入らないような造りのものではないでしょうか。しかし那須塩原市の図書館は、想像を超えるような建物になっています。市民の他にも県外からも訪れる人がいるほどなのだとか。今回は那須塩原市図書館「みるる」に関して、渡辺美知太郎市長にうかがっていきます。

図書館とは思えない建物「みるる」

――那須塩原市には、素敵な図書館がありますね。外観もとても素敵ですが、中の造りも図書館とは思えないくらいです。図書館の概念を変えるような建物ですが、このような図書館を建てたのはなぜでしょうか?
渡辺美知太郎市長(以下、渡辺市長):那須塩原市図書館の「みるる」は、私が市長になる前から計画がありました。ガラス張りで日光が入ってくるので中はとても明るいのですが、実は本に日光を当てるのはあまりよくありません。本が傷んでしまいますからね。そのような視点からも最初は反対意見もあったようですが、設計士さんなど作り手さんが妥協をしなかったからこそ、あのような素晴らしい図書館ができました。今では年間に40万人以上が利用していて、市外や県外からも足を運んでくださる方もいるほどです。もちろん図書館ですので、利用料はいただいていません。
――自治体の図書館に名前がつくのも珍しいですよね?
渡辺市長:「みるる」という名前があった方が身近に感じますよね。利用者は若い方や学生さんも多いです。
――「みるる」では、館内ツアーやワークショップなどいろいろな企画を立てていますが、もっと利用してほしいという意味合いで行っているのでしょうか?
渡辺市長:そのような意味合いもありますが、これからの公共施設のあり方を考え、もっとファンを作っていきたいのです。市の図書館は一般財源を投入していますが、財源にも限度があります。その中で図書館を持続可能なものにしていくには、市民の皆さんや他の地域に住んでいる「みるる」ファンの方々の助けが必要になります。
「みるる」は黒磯という地域にあり、駅前ではイベントも行われています。「みるる」という価値のある建物、ここで那須塩原市の価値を提供できるイベントを行うことで、那須塩原市の付加価値をもっと高めていきたいと考えています。
那須塩原市は観光地、“暮らす”イメージがまだつきにくい
――「みるる」は、那須塩原市の特徴の1つにもなりそうですね。
渡辺市長: 現在、那須塩原市は観光地として知られていますが、この地で「暮らす」という具体的なイメージは、まだ多くの方に十分に伝わっていないかもしれません。軽井沢や鎌倉といった著名な地域が、観光地としてだけでなく、生活の場としても高いブランド力を持つ一方で、那須塩原市は、その「暮らしの価値」を最大限に発信しきれていないのが現状です。
しかし、那須塩原市は、大きなポテンシャルを秘めています。私たちが目指すのは、「那須塩原での豊かな暮らし」そのものを付加価値とすることです。観光地としての魅力はもちろんですが、子育て応援券をはじめとした子育て政策、子育てがしやすい豊かな自然環境、国際交流やICTを活用した教育面などの子育て支援とともに、移住・定住施策を一体的に展開しています。今後は「那須塩原市で暮らすこと」の価値を、さらに全国に伝えていきたいですね。
編集後記
那須塩原市図書館「みるる」は、まるで美術館やおしゃれなカフェのような外観です。筆者が最初に見たときには、いったい何をする場所なのだろうと思ったほど。一方で管理費の問題もあり、市長はたくさんの「みるる」ファンを作りたいと言います。ファンに支えられる図書館は数少ないのでしょう。なんて素晴らしいのだろうと思ってしまいました。
取材、文・川崎さちえ 編集・編集部 イラスト・金のヒヨコ
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