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野外学習は人間関係の基礎を育てるチャンス 【花まる学習会 高濱先生】

IMG_1320「子どもがゲームやスマホに夢中で心配」というママ、今年の夏は思い切って子どもをサマースクールなどの野外体験に送り出してみませんか。そこで起こるさまざまなドラマを通じて、子どもが成長するきっかけになるかもしれません。野外体験での人間関係がもたらす子どもの成長について、「花まる学習会」代表の高濱正伸先生に、お話をお伺いしました。
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スマホが普及した今だからこそ人間関係をしっかり築くべき

今、ゲームにスマホに、子どもたちのまわりには「一人」で遊べるアイテムがたくさんあります。そのためついつい一人遊びをすることが多くなりがちです。ゲームについていえば、なくても楽しいことはいっぱいあるので必要ないと思います。ただ、スマホは、これから先を考えた時、なくてはならないツールになってくると思います。

ここで注意したいことは、子どもが人間関係の基礎を学ぶことに対して、親は相当意識を向けておく必要があるということです。子どものうちにしっかりと人間関係を築けなくて「思春期にズタズタになりました。学校にいけません。仕事に行けません。ひきこもりの大人になりました」という大人を、これまでにいっぱい見てきました。

では、人間関係の基礎を築くためにはどうしたらいいか。それには子どもの頃にどんな経験をさせるかが大切です。「花まる学習会」では、毎年サマースクール(野外学習)を実施しています。今日はその中から1つ、「こういう経験が大事なんだよ」という事例をお話します。「ハートの石事件」といいます。

「ハートの石事件」

ある年、腕を怪我した小学校2年生の女の子がサマースクールに参加しました。普通、腕を怪我していたらキャンプなんてこないと思いますよ。ところが、その女の子は去年のサマースクールも参加して楽しかったから、どうしても来たかったんでしょうね。怪我をしているにもかかわらず、参加することになったのです。

みんなが川遊びをしている間、その女の子は川べりできれいな石を集めていました。彼女はそこでハート型のピンクの石を拾い、宝物にしようと思ったそうです。僕はサマースクールの引率者として子どもたちを監督していたわけですが、別の場所から「全員集合!」と声をかけたのです。その女の子も僕が呼んでいることに気がつき、こっちに来ようとしたのですが、運悪く大切な石を川の中に落としてしまったんです。落とした場所は水しぶきがすごくて全然川底が見えないわけです。

同じ班の5年生か6年生の子が、その子の落とした石を拾ってあげようと川の中を覗いたのですが、やはり水の中は全然見えなくて、拾おうにも見つけられない。「これはもう無理だ」ということで、同じ班の子たちは「もう行こうよ」ということになったのですが、女の子が泣き出してしまったそうです。

そのときにたまたま通りかかった2年生の男の子が「どうしたの?」と声をかけてくれたんです。「これこれこういう理由で」と大切な石を川に落としてしまった話をしたら、「わかった! オレが取ってきてやる」といって水中メガネをかけて、水の中に顔を突っ込んで探してくれたそうです。

それらしい石を拾って「これ?」というものの、女の子は「違う」と。そのやり取りが何度かあったそうです。向こうでは、事情を知らない僕が「集合だよ。みんな待っているのが見えないのか!」と呼ぶわけです。班の子たちはみんな「先生が怒っているから行こう!」といってソワソワして待っている――。ついに探していた石が見つかった時、その男の子は「良かったな」といって、女の子に石をポンと手渡して集合場所に行ってしまったそうです。

人間関係の基礎はリアルな体験を通してこそ育まれる

その時、女の子の目は間違いなくハートになってますよ! この初恋、王子様の出現経験。これが大切なんです! こういうことは一生覚えているんですよ。「あの時、あの男の子は高濱先生に怒られるのを気にせず、私の大切な宝物を探してくれた!」。子どもは、誰かの行動によって心が揺さぶられるような、そんな感動体験をすることが大切なのです。

石を拾ったその男の子には何の影響もないかといったら、大ありです! 彼には愛のオーラがまとわりついているんですよ(笑)。男の子だって「今、オレ好かれちゃったかも!」みたいなのがわかりますよ。こういう「モテ経験」が大切なんですよ。

サマースクールに参加すると、こういうリアルな体験、異性の気持ちを思いやれる経験が育つのです。男の子も、女の子の前だったら「いいよ。オレがやるよ。そこで待ってろよ」と、かっこつけますからね(笑)。かわいいですよ。こんなふうに「モテたいからがんばる」。それが子どものやる気に結びつき、将来にわたり良い人間関係を育てる基礎となるのです。

お母さんの仕事は、子どもをこういうところにいっぱい出してあげて科学反応を起こすことです。行動する力を育ててあげること。そのためには外に出してあげるしかないんですよ。結果はどうなるかわかりませんが。普段ボーとしているような子どもでも、サマースクールなどに出してあげればいろんな経験を積んで帰っていきます。それが「人間関係力」のある子どもに育つ秘訣なのです。

「人間関係力」のある子どもは、スマホを持とうがゲームに夢中になろうが大丈夫。この先、しっかりとした、良い人間関係を築いていけるのです。

文・間野 由利子

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