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【理系育児】第八回 子どもが泣く前におっぱいが張る不思議な体験―オキシトシン反射の仕組み

ちょっと理系な育児のsumireです。今回は、こんな不思議な授乳の体験談を教えていただいたのでご紹介します。

トモコテンさん

子どもが泣く30秒位前からおっぱいが張ったりしてたんです。
授乳時間関係無く、おっぱいが、赤ちゃんが泣くのを事前に知らせるみたいな。
で、実家に帰ったときとか、ちょっと母に見てもらって買い物したりしてるときにも、おっぱいがはっておかしいなーって思って電話したら娘が泣いてたとか。
更には幼稚園行きだしてからもそんな感じで、幼稚園行ってる間におっぱいが張ってきて、おかしいな~って思って帰ってきた娘に聞いたら、幼稚園で泣いたとか。
ずっと不思議で…
どうして泣くのがわかるのか知りたいです。

こどもが泣くことを予期したかのようにおっぱいが張るなんて、都市伝説のような話ですが、もしかすると、似た経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。なぜこんな不思議なことが起こるのか…その理由は、母乳が出る仕組みを知ると、分かるかもしれません。

●急におっぱいが張るのはどうして?

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まず、乳房には、小さな小さな水風船のようなものが、無数に詰まっています(1)。その水風船の中で、母乳は24時間作り続けられ、溜められています。

次に、お母さんの脳からオキシトシンというホルモンが分泌されると、この小さな水風船がキャッチし、ギュッと縮むことで、母乳が出てきます。これをオキシトシン反射(射乳反射)といいます(2)。母乳は、赤ちゃんの吸引力で出てくるのではなく、筋肉の力で押し出されてくるのです。
また、いわゆる差し乳で「生産のスイッチが入った」と表現されるような反応も、実際には、このオキシトシン反射が起こっています。急に胸が張ったように感じるのは、急ピッチで母乳が作られているのではなく、小さな水風船たちがいっせいにぎゅっと固くなるからなんですね。

●オキシトシン反射はどうやって起きる?

オキシトシン反射が起こるには、2つの経路があります。

①乳頭の組織が伸びたとき

授乳をしたり、搾乳をしたりすると、乳頭の神経細胞から脳へとシグナルが伝わり、オキシトシン反射が起こります。

②お母さんが授乳のことを考えたとき

オキシトシン反射は、お母さんの気持ちにも反応して起こります。たとえば、赤ちゃんの泣き声を聞いたときなどの、聴覚や視覚などに反応するだけでなく、自分の赤ちゃんのことや授乳のことを考えただけでも起こりえます。

オキシトシン反射はお母さんの気持ちに影響を受けるということは、逆に、大きなストレスを受けたり緊張したりすると、起こりにくくなることもあります。これが、「疲れると乳腺炎になりやすい」「ストレスがあると母乳は出ない」「大災害などショックなことがあると母乳が止まる」などと言われるゆえんかもしれません。でも、実際は、授乳するための安全な場所を確保したり、お母さんがリラックスして授乳できる環境を整えたりするだけで、再び起こるようになります(3)。

●なぜ赤ちゃんが泣くことが予想できたの?

トモコテンさんが経験された不思議な現象は、まさに、このオキシトシン反射が起こっていたと考えられます。

産後どのくらい日が経っているかに関係なく、全ての女性は、授乳を開始する前から、オキシトシンの血中濃度が上がり始めます(4)。体が授乳の準備を始めるのです。でも本人は気づかないことも多いようです。

トモコテンさんが「赤ちゃんが泣く30秒前くらいからオキシトシン反射のサインを感じていた」のは、その前から、赤ちゃんの哺乳のサインを無意識に読み取っていたのかもしれません。多くの赤ちゃんは、泣き始める前に、頭を左右に振ったり、鼻をフンフンいわせたり、手やブランケットをなめたりという「おっぱいが欲しいサイン」を出しているからです(5)。

「子どもと離れていてもオキシトシン反射が起こっていた」のも、いつもならそろそろおっぱいを欲しがる頃だな、だとか、寂しがっていないかな、などと無意識にお子さんのことを考えていたのかもしれません。私たちは普段、自分の子どもと、お互い無意識にもシグナルを送ったり受け取ったりしあっているんですね。
経験がないと、様々なサインに気づくことはなかなか難しいようですが、総じて、初めての育児とは思えないほど、母子間のコミュニケーションがとてもよく取れているんだろうな、と想像します!

●参照記事

(1)誰も教えてくれないおっぱいの構造①

(2)母乳を出すホルモン、オキシトシン|仕組み

(3)母乳を出すホルモン、オキシトシン|お母さんの気持ち

(4)射乳感覚がない?普通です!射乳反射の起こり方

(5)「泣くたび授乳」は遅すぎる!「サイン授乳」のやり方