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【理系育児】第六回 おっぱいに吸い付かなくなってしまいました。母乳育児を諦めようと思っています(3ヶ月)

ちょっと理系な育児ブログのsumireです。今回は、こちらの投稿をご紹介させていただきます。

まきまきさん(3ヶ月の双子のお子さん)
1人での双子育児のため、母乳育児が困難で、あまり量が増えずに1日に1~2回の母乳での授乳になった。私が風邪を引いたことで3日間ミルクのみになったあと、おっぱいに吸い付かなくなってしまった。
母乳育児を諦めようと思っている。

文面からは、思うように母乳育児ができずにがっかりされている雰囲気が伝わってくるのですが、2人もの赤ちゃんがこれまで順調に成長できたのは、母乳やミルクをいつ・どのくらいあげるかなどを含めて、まきまきさんによるたくさんの試行錯誤と的確な判断があったからこそでしょうし、WHOによると生後半年くらいで出生体重の2倍になっていればいいところ、3ヶ月ですでに倍以上というハイペースで成長されているお子さんたちも、とてもすごいと思います!

それとは別に、まきまきさんの悩みは、現在の母乳育児によくある、様々なハードルが盛り込まれている、とても深刻なものだと感じます。

●ハードル①授乳の知識とスキルを学ぶ機会がない

たとえば、「授乳間隔を空けて、一度にしっかり(200g)飲ませるようにして」などという指導をされることがあります。でもそれに従おうとすると、母乳育児はうまくいきません(1)。このような周囲の間違った知識が、母乳育児を軌道に乗せる際のハードルになっています。

実際は、赤ちゃんが吸てつするたびに、母乳を作るホルモンの血中レベルが上がるので、無理のない範囲で直母回数を増やすことで、今より生産量が増える可能性は十分にあります。

また、双子の場合は、同時授乳(タンデム授乳)のスキルも重要です(2)。同時授乳していると、哺乳や睡眠のパターンがシンクロしていくこともあるそうです。すると、一人ずつ交互に授乳するより短時間で済み、お母さんの負担も減らせるかもしれません。

●ハードル②お母さんの病気

日本では「母親が病気になったら授乳禁止」「薬を飲んでいる間は授乳を中断」などと一律に指導されることが多いですよね。でも、世界的には、お母さんが感染症にかかっても、多くの場合、治療しつつ母乳育児を続ける方がメリットが大きいと認識されつつあります。また、抗生物質や麻酔など含めて、ほとんどの薬は、服用と授乳を両立できます(3)。

●ハードル③授乳拒否

私たちが当たり前のように使っている哺乳瓶は、実は、常に乳頭混乱(=直母できなくなる)のリスクがつきまといます(4)。実際に乳頭混乱を経験したお母さんは「母乳が出ていないから飲まなくなった」「卒乳した」などと考えるようですが、実際は母乳は出ているけど上手く飲めないだけなのです。

WHOによると、授乳拒否の改善には、赤ちゃんとのスキンシップが有効とされています(5)。できるだけ肌の触れ合う機会を増やすことは、育児のさまざまな困難さを減らすために効果があると考えられます。

●ハードル④一人で双子の育児に奮闘

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WHOによると、本来は、「栄養学的・経済的だけでなく、労力的にも、母乳育児は最も効率のいい栄養法」になりうるそうですが、「母親が赤ちゃんを優先する余裕がない状況ほど、労力的に不利な人工栄養が必要になる」という矛盾が存在します。WHOは、母子のケアをする専門家(産科・小児科・保健所など)に対して、「母子の家族にも家事などを担うようにうながしましょう」と指導しています。社会全体が子育ては1人ではできないという認識を持てば、結果的に全体的な育児の効率も上がることが期待できますが、現実的には、母子にばかりしわ寄せが行かないように、例えば家事などはできるだけサボる・外注する・家族以外の誰かに頼るなどの抜け道を考える必要があるかもしれません。

●最後に

母乳育児がうまくいかない理由は、母親個人の体質や努力の問題として語られがちですが、実際は、社会のシステム・常識・慣習に問題が隠れていることがほとんどなのです。まきまきさんも、毎日試行錯誤されてきたこれまでの日々のことも、これからの日々のことも、限られた条件の中で精一杯やれているという大きな自信と共に、記憶に刻んでほしいなと思います。もう一度直母にトライするかどうかを含めて、今後の選択肢はいくつか考えられると思いますが、どんな方法を選ぶ場合も、他人の声ではなく自分たち親子はどうしたいかを考えて決めた方が、その後の育児にも自信を持ちやすいそうです。どの道を選んだとしても、陰ながら応援しています。

●参照記事

(1)母乳育児が軌道に乗る授乳方法
(2)双子の赤ちゃんの母乳育児
(3)授乳中に飲める薬
(4)赤ちゃんに優しい病院は哺乳瓶やおしゃぶりは使いません
(5)授乳拒否の対処法

連載一覧

第一回 WHOガイドラインに学ぶ ”赤ちゃんの食事量”
第二回 この離乳食メニュー、問題ありますか?(10ヶ月)
第三回 離乳食、いつから始めればいいの?授乳とどっちが先?
第四回 ご飯をしっかり食べないのはおっぱいのせいよ、と言われます(1歳8ヶ月)
第五回 乳腺炎って何?理想的な母親の食事は?
第六回 おっぱいに吸い付かなくなってしまいました。母乳育児を諦めようと思っています(3ヶ月)
第七回 授乳のため寝不足できついです(4ヶ月)
第八回 子どもが泣く前におっぱいが張る不思議な体験―オキシトシン反射の仕組み
第九回 おっぱいがないと眠れない?あまり寝なくてよく愚図ります(1ヶ月)
最終回 授乳姿勢(ポジショニング)を見直してみた結果、授乳回数が減りました