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筋ジストロフィーの娘、真心ちゃんが教えてくれたこと~後編

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福山型筋ジストロフィーの娘、真心ちゃんとの生活を描いた本『えがおの宝物』を出版された加藤さくらさんへのインタビュー後編です。
『えがおの宝物 進行する病気の娘が教えてくれた「人生で一番大切なこと」』

前編では真心ちゃんの病気がわかった時の気持ちや、保育園での真心ちゃんの様子などをお聞きしました。後編ではまず、「きょうだい児」という言葉について話していただきます。

―本の中に「きょうだい児」という言葉が出てきます。障がいのある子の兄弟姉妹のことで、加藤家だと長女のゆとりちゃんが「きょうだい児」ですね。さくらさん、この言葉について少し説明していただけますか?

さくら:
真心の病気がわかってしばらくは、一日中真心のことばかり考えていて、ゆとりのことを考える余裕がありませんでした。これではいけないと思って、ネットできょうだいに障がい児がいる子について調べていて「きょうだい児」という言葉を知りました。

きょうだい児の子は親の注意がどうしても障がい児の方に行くので寂しい思いをしがちです。それに「いい子」を演じてしまいがちなんです。
親の大変な姿を見ているし、周りからもいいきょうだいでいることを期待されてしまう。そして自分がしたいことや、してほしいことを言い出せなくなって、「いい子でいないと私は愛されない」と思う子もいるようです。

―ゆとりちゃんの場合はどうでしたか?

さくら:
やっぱり「いい子でいないと」、という気持ちが起きやすいですね。
例えば外でゆとりが真心の車椅子を押していると、それを見た方が「ほんとにいい子ね。お姉ちゃんがこんなにいい子だから真心ちゃんも優しく育つのね。」というような言葉をかけてくれるんです。その後ゆとりは、普段なら「もう疲れた」といって車椅子を押すのをやめるようなタイミングでも、「真心ちゃん、大丈夫?疲れてない?」みたいに真心のことをやたら気にする態度をとることがあります。

それは周りから見たらいいお姉さんなんだけど、やっぱり不自然なんですよね。
周りの方がゆとりを褒めてくれるのは全然いいんですよ!本当にありがたいです。
「褒められたからゆとちゃん張り切っちゃったね」みたいに、楽しい会話になります。
でも親までも「いい子」を期待すると苦しくなってしまうと思うので、ゆとりには思ったことを何でも素直に言えるようにしてあげたいです。

―そのためにゆとりちゃんが「いい子じゃない」ことを歓迎しているんですよね。

さくら:
そうなんです。ゆとりが「真心ちゃんなんて、いなければいいのに!」と言ったことがありました。
びっくりしましたが、ゆとりの本心は「本当はもっとママに甘えたいのに…もっとわたしのことも見てほしいのに」ということだったんですよね。
そういうときは、ゆとりと二人きりの時間をしっかり持つと、その後は真心とベタベタ遊んだりして楽しそうにしています。

最近も「ゆとちゃん、一人っ子が良かった」と言うことがありましたが、そういう時は「ちゃんと素直に言えてる」と思って心の中でガッツポーズしてたりします(笑)。この言葉の裏にも「ママとパパを独占したい」という気持ちがあるんですよね。
言葉のトラップにひっかからないようにして、言葉の奥にある思いを見ようと思っています。

―なるほど。「きょうだい児」だけでなく、普通のきょうだいでもそういうところがあるかもしれないですね。

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―さくらさんご自身は、真心ちゃんとの日常の中でどのように変わってこられましたか?

さくら:
福祉が日常になって、社会の見方が変わりました。
真心が産まれる前は、人間ひとりきりでも生きていけるものだと思っていました。
でもこの子は誰かがそばにいないと死んじゃうでしょ。
そういう人が社会全体の中にたくさんいることも見えてきて、そういう社会の中に自分がいるということに気づかされました。

私はこの社会の中で真心の手助けをすることが役目ですし、障がいのある子達が今を楽しく生きていくことに自分の力を使いたいと思っています。そして真心や他の障がいを持つ方は、私に大事なことを教えてくれる。そうした循環が社会の中にあるのだなと思います。

―障がいを持つ方が今を楽しく生きることに、周りにいる私たちはどう関わっていけばいいのでしょうか?世の中がどう変わっていってほしいと思いますか?

さくら:
障がいについての世の中の見方がもっと明るくなればいいなと思います。
もちろん辛いことも多いし涙が出ることもあるけれど、いつもそうではなくて割と楽しく毎日を生きている人も多いんです。
真心もそうですよ。体は普通の子のように動かないですけど、自分ができることの中で楽しみ方をいろいろ発見しています。

海外ドラマを見ていると、コメディ系の学園ドラマなどに障がいがあるキャラクターが出たりしていますよね。介助もされていますが他は普通の役とあまり変わらず、ストーリーの世界に自然に溶け込んでいますよね。ああいう扱われ方がいいですね。
日本のドラマだと「悲劇のヒロイン」的に扱われることが多いですけど、実際の障がい者は特に周りから主人公扱いされたりせずに日常生活を送っているので、そっちの方がリアルな感じがします。
そんなドラマが日本でも作られるといいなと思っています。

テレビの影響力は大きいと思うので、もし福山型筋ジストロフィーについて扱っていただくことがあれば、病気への理解が広がるのでうれしいですね。
そして「福山」つながりで、主題歌を福山雅治さんに歌ってもらえたらなー!

加藤さくらさん、ありがとうございました!
さくらさんの著書「えがおの宝物」は絶賛発売中です。

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