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戸田恵子さん&中山秀征さんが語る、子ども映画祭「キネコ」の魅力<後編>

子どもたちが世界中のすばらしい映画と出合うことのできる、日本最大規模の子ども映画祭。今年で25周年を迎える「キネコ国際映画祭」の開催が間近です。
ジェネラル・ディレクターを務める女優の戸田恵子さん、プログラミング・ディレクターを務める司会者/俳優の中山秀征さんは今や「キネコ」に欠かせない応援団。
前編ではおふたりも参加されている「キネコ」名物・生吹き替えなどのお話をうかがいましたが、後編ではおふたりが子どもたちに観てほしい映画についてお聞きします。

■中山さん「感想は求めない。何かしらを感じてくれれば十分」

──おふたりが小さいころは、どんな映画を観てきましたか?

戸田さん:私はこんな仕事をしているわりに、小さいころ親に映画に連れて行ってもらった記憶があまりないんですよ。三船敏郎さんの『(連合艦隊司令長官)山本五十六』を観に行ったらしいんですけど、子どもだからわけもわからなくて「山本五十六って、誰?」みたいな。三船さんが船の上で逆立ちしているところだけ、覚えてます(笑)。
物心ついて学校の友だちに誘われて行ったのは、『ある愛の詩』。そのあと行ったブルース・リーの『燃えよドラゴン』は何度も観に行きました(笑)。

中山さん:当時は観終えたあと、みんなが(アクションスターの)その気になって映画館から出てきましたよね(笑)。
僕が小さいころは学校に回ってくる映画を見る授業があったんですけど、そこで衝撃を受けたのが『はだしのゲン』。戦争の描き方が、かなり生々しいんです。

戸田さん:今だったら、子どもには観せないかもしれないですね。もっとやわらかい描き方をしたり。

中山さん:そうなんです。でも当時は生々しいものをストレートに観せたので「怖い!」という印象でしたね。(都合の悪いことを)伏せない映画っていうのかな。
もう一方で、地元にあった映画館で夏休みになるとやっていたのが『まんがまつり』。5本立てくらいで出入りも自由みたいな、楽しい上映があって。その体験が小学校低学年くらいなんですよ。「怖い!」と「おもしろい!」、映画にはいろんな幅があるというのをなんとなく感じていましたね。

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──「キネコ」の上映作品も、本当にバラエティに富んでいますよね。

中山さん:そうなんです。”伏せない”作品も多いですよね。

──上映作でもそれ以外でも、子どもたちにおすすめしたい作品はありますか?

戸田さん:「キネコ」で上映される作品は、ひとつひとつ心の深いところに届くなぁと感じられるものばかりなんですよ。実写でもアニメーションでも、それがちゃんと子ども目線で作られているのがすばらしくて。

過去の作品ではドイツの「忘れられないおくりもの」という「命」を題材にした作品が印象に残っています。命には限りがあって誰もが死んでしまうということを、なんとなく感じ取らせてくれるもの。たとえばそれを人間ではなく、動物の世界に置き換えてみたアニメーションとか。若い親御さんたちが子どもにうまく伝えられないようなことを、映画を通じていっしょに考えるきっかけにしてほしいと思います。

──物語を通して遠回しに伝える、ということですね。

戸田さん:あと過去に上映した作品で『マレーネとフロリアン』というアニメーションがあるんですけど、戦争というものを子どもの視線で描いているんですね。毎日いっしょに遊んでいた子どもたちの間にある日突然境界線ができて、「あの子とはもう遊べないよ」となって。そんなことがあるんだなというのが、なんとなくわかるようになっているんです。
ほかにも差別や偏見を扱っていたり、同性愛を扱った作品もあって。本当にいろんな作品があるんですよ。ただ、それを観て感想文を書いてほしいわけじゃないし、何か意見を求めているわけではなくて。

中山さん:そうなんですよね。その境界線の話もそうですけど、日常にもじつは似たようなことってあるじゃないですか? 武器のない戦争もいっぱい起きているわけで。その作品にふれて何かしらを感じ取ってくれたらそれでいいと思います。「なんで感動しないの?」ってことではないので。

戸田さん:だから親御さんたちも、肩に力を入れて観なくてまったくいいと思います。

──たまたま軽い気持ちで観た映画に、深く感動させられることもありますからね。

中山さん:親は「これは観てOK」「これはダメ」って、どうしても自分の判断で押しつけちゃいますけど、選ぶ権利があるのは本来は子どもたち自身なんですよね。それを観てどう感じるかはその子自身。おもしろい映画を観て「つまんない」でもいいんですよ。みんな違って、それでいい。
僕が今回アフレコをやらせていただく『チョコレートの兵隊さん』も、そんな親の都合と子ども自身の興味にズレがあることを描いた作品なんですよ。観た方がどんなふうに受け取ってくれるのか、それぞれの違いも楽しみですね。

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■戸田さん「ふだんとはまた違う、映画の楽しみ方ができる」

──「キネコ」に興味を持ってくれた読者のみなさんへメッセージをお願いします。

戸田さん:一度来てくださったら「また次も行きたい!」という気持ちになるのは間違いないと思います。ここまで「みなさんに観てほしい!」と思うのは、作品が本当によいものばかりということに尽きるので。
あとは公共の場に家族で出かけていく、イベント感かな。同年代くらいの子がいる家族の方々と集まって、ひとつの作品を観てたくさんの声で笑って。どーん!と大きな笑い声が集まったときの迫力とか、お父さんが意外なところで泣く驚きとか。いろんな体験ができると思うので、ぜひ出かけてきてほしいなぁと思います。

中山さん:作品うんぬんよりも、「その一日」かなって思うんです。中で食べたポップコーンがおいしかったとか、物語はよくわからなくても「なんか楽しかった!」っていう思い出ができれば。将来「あの日のホットドッグがおいしかったな。映画のタイトルは……なんだったけ?」となってもいいんですよ(笑)。そのおかげで映画というものに香りがついたり、その子なりの色がつけばいいなと思います。

戸田さん:比べるわけではないんですけど、海外の子ども映画祭に行くと子どもたちがすごくのびやかだなって思うんですよ。日本の子どもたちの中にも、生のものにふれてコミュニケーションする力ってまだまだあると思うんですよね。もっとのびのびできるんじゃない?って。

中山さん:ふだんは観ないような作品にふれることで新しい発見もたくさんあると思うので、ぜひ足を運んでほしいですね!

「キネコ国際映画祭2017」には映画の生吹き替え以外にもワークショップ、熱気球の搭乗体験など”ライブ”で楽しめるイベントがたくさん揃っています。
11月4日(土)には映画祭初の試みとなる野外上映企画も! あの『メアリと魔女の花』を入場無料で観ることができますよ。まずは詳細をチェックしてみてください。

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キネコ国際映画祭2017

会期:11月2日(木)~6日(月)
会場:109シネマズ二子玉川(シアター9)、iTSCOM STUDIO&HALL、二子玉川ライズ、兵庫島公園 ほか
入場料:子ども(3~17歳)700円、大人(18歳以上)1,200円

詳細は公式HPへ

取材&文・鈴木麻子 撮影・泉 三郎