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「旧姓使用」ついに裁判官や官僚も…この夏、一気に進んだ動きと今後の見通し

提供:弁護士ドットコムニュース
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政府は今年7月、銀行業界に対し、結婚前の「旧姓」でも銀行口座を開設・利用できるよう要請した。結婚して姓が変われば、口座の名義変更を求められるのが一般的だが、手続きが不要または簡素化される可能性がある。

報道によると、大手銀行では、現在でも「旧姓」での口座開設や利用ができることもあるが、手続きが必要で積極的に周知もされていないという。また、主要な地方銀行では「旧姓」の使用ができない。

結婚に伴い、夫側の姓を選択する夫婦は96%(2015年)おり、姓を変えるのはほとんどが女性だ。職場では旧姓を使用する女性が増えており、銀行以外での対応も必要と考えられる。今後、どんな場面で旧姓使用が広まるべきなのか、早坂由起子弁護士に聞いた。

「夫婦別姓」最高裁判決受け、変化が進んでいる?

ーー今回の政府対応をどう評価する?

現在、婚姻すると、夫婦のいずれか一方は改姓しなくてはならず、その96%は女性です。免許証、銀行口座、保険証、パスポート、保険、クレジットカード、携帯電話等の各種契約名義…、挙げればきりがありませんが、基本的には改姓手続を迫られ、とても面倒だ、との声が聞かれます。

中でも、銀行口座は旧姓の通称使用が認められない代表例として挙げられてきました。性質上、厳格な本人確認が求められ、「銀行の窓口で小一時間もめたけど、認めてくれなかった」という話も珍しくなかったのです。

近年、その銀行口座ですら、徐々に旧姓の使用が認められるようになってきており、まさに、ここ数年の動きといえると思います。今回の政府要請で、いずれの銀行でも簡易迅速な手続で旧姓の使用ができるようになることが望まれるところです。

ーーここ数年の動きとは?

2015年12月16日、最高裁は、夫婦別姓訴訟において、婚姻改姓を定める民法750条を合憲と認定しました(ただし、違憲とする5名の意見あり)。

他方で、最高裁は、婚姻改姓による不利益を認め、不利益は通称使用が広まることにより一定程度緩和され得ると判断しました。通称使用によって不利益緩和が求められるとの指針を示した判断内容と評価できます。

ーーたとえば、どんなところで通称使用が広まっている?

通称使用が認められない代表職種に裁判官がありましたが、なんと2017年9月から、最高裁通達により、判決、令状等での旧姓使用が認められるようになりました。とても大きな変化です。

時期を同じくして、9月1日、政府は、国家公務員について、対外的な文書を含めて、全省庁で原則として旧姓使用を認めると発表しました。これまで、内部的な旧姓使用は認められていたものの、対外的文書についても統一的に認めたことに大きな意味があります。このように職務上の旧姓使用は急速に拡大しています。

ーー職場での旧姓使用が突出して進んでいる?

近年の女性の社会進出、晩婚化に伴い、キャリアの途中で戸籍姓が変わっても、それまで築いてきた信用、実績を維持するため、旧姓を継続使用する女性が増加しています。

情報化社会の現代では、対面せずに多数人とコミュニケーションをとることもありますから、氏名の持つ意味はより大きいといえるのではないでしょうか。執筆した原稿、書籍、作品、取引先との関係など、氏名とともに存在するものですから、氏の連続性の維持はとても重要な意味を持ちます。

つまり、旧姓使用は、手続の煩雑さだけではなく、個人同一性(アイデンティティ)の問題でもあるのです。

しかし、職務上旧姓が使用できても、旧姓と戸籍姓、2つの氏の使い分けの不便さが付きまとうことは言うまでもありません。例えば、弁護士は、職務上、銀行口座を使用します。口座名義が戸籍姓しか認められない場合、職務上旧姓の使用ができたとしても、逐一、関係者に口座名義が違う理由を説明しなければなりません。

これは、煩雑であるばかりか、理解を得られないことがあったり、必要以上にプライバシーを明かすことになり、業務に支障が生じたりすることもあり得ます。職務上の通称使用が広がっても、それによって、様々なところで、戸籍姓と通称名の不一致という不便、支障が生じては、いわば本末転倒になってしまうわけです。

今後、職務上の旧姓使用の広がりに伴って、様々な場面で通称使用を利用できるように、旧姓を利用できる「範囲」を拡大していくことが、より一層求められます。今回、銀行口座についての政府の要請は、そのような流れの中での動きと言えるのではないでしょうか。

マイナンバーで通称使用拡大?

さらに、政府は、平成28年3月、「女性活躍加速のための重点方針2016」として、「通称使用に係る課題等の調査検討」を挙げ、身分証明書となる住民票、マイナンバーカード、パスポートで戸籍姓と旧姓の併記を幅広く認めることを掲げました。2019年に実施予定とのことです。

戸籍姓と旧姓の関連性が公的に担保されるわけですから、本人確認という意味では、ほぼ全ての場面において旧姓を使用しても何の支障も生じなくなるはずです。

選択的夫婦別姓導入が望まれるところではあるのですが、婚姻改姓制度が維持されている現状、このようにして戸籍姓と旧姓の連続性を担保することが、何よりも通称使用拡大を促進すると考えられます。

今後、上記のような流れの中で、限りなく旧姓使用の場面が拡大し、戸籍姓との役割の区別がつかなくなるほどに広がることになれば、そもそもの婚姻改姓の意味が、改めて問われることになるのではないでしょうか。

提供:弁護士ドットコムニュース

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