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自身のワンオペ育児体験から考える本当に役立つ育児支援とは?【文京区】

文京区(修正)

自治体ではじめての育児休業を取得したことで「イクメン区長」と呼ばれる文京区の成澤廣修区長。以前から家事や育児は積極的に取り組んでいるそうですが、昨年奥さんが入院したことでまさかのワンオペ育児状態に。「ママ友たちに助けられました」と語る成澤区長の育児経験は、文京区の子育て支援の中にも反映されているようです。

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子どもを守るために親のサポートからはじめる

――文京区は児童扶養手当及び就学援助を受けている世帯に食料や飲料を届ける「こども宅食プロジェクト」や、ひとり親事業などに積極的ですね。取り組みを行うキッカケはあったのでしょうか。

成澤区長:文京区としては、すべての世帯に対して同じように育児支援を行っていきたいと思っています。目的は子どもが育児放棄や虐待をされることなく、すべての子どもたちが等しく成長していけるようになるためです。そのためには特にママたちを支援していくことが必要だと考えました。なぜなら最近は核家族化が進んで、母親が一人で子育てをする「孤育て」や、子どもがひとりで食事をとる「孤食」がニュースなどで取り上げられることがあるからです。
父親がいても仕事が忙しくて家にいなかったり、実家が遠かったりなどで、母親がひとりで子育てをしている場合も多いです。そうなると子育てに行き詰まり手をあげたくなる場合や、産後うつになってしまうことが容易に想像できたのです。そこで子どもを守るためには、まず親のサポートをする必要があるのではと思い、2歳未満まで使えるベビーシッター制度の「子育て訪問支援券事業」や貧困世帯を支援する「こども宅食」の制度を作りました。もちろん、子育ての役割を母親だけに任せるのではなく、男性が積極的に育児に取り組むような社会を作ることが大前提ですが。

参考:「子どもの貧困」解決に向けて 文京区で「こども宅食」がスタート

満2歳未満の子どもがいる全家庭を対象にシッター利用券を1年間に48枚配布

――「子育て訪問支援券事業」とは、どのようなものですか?

成澤区長:文京区では平成27年からベビーシッター派遣事業に支援券制度を取り入れています。満2歳未満の子どもがいる全世帯を対象に、ベビーシッターサービスが利用できる券を児童一人あたり1年間で48枚配布しています(1枚につき4時間の補助/1日複数枚利用可)。さらにひとり親世帯の場合には追加で年間12枚配布しており、こちらは小学6年生までのお子さんを対象として利用が可能です。利用シーンに関するルールも設けていませんので、たとえばお母さんがリフレッシュしたいときなどにお使いいただけます。

参考:文京区 子育て訪問支援券事業
参考:文京区 ひとり親家庭子育て訪問支援券事業

助産院と協力してお泊りなどの産後ケア事業を実施

――文京区のネウボラ事業についてお聞かせいただけますか?

成澤区長:文京区では母子保健コーディネーターが妊婦に対して面談を行っています。面談を受けた方には肌着やマルチケット、おむつポーチなどの育児セットを渡しています。文京区ではネウボラの事業を区内にある八千代助産院と協力しているので、産後は八千代助産院でショートステイや母乳相談などのサポートも受けられます。
――産後ケアとは具体的にどのようなものなのでしょうか?

成澤区長:人によっては出産後、実家が遠いなどの理由で手伝ってくれる人が誰もいなくて不安になったり、産後疲れが回復していないことだってありますよね。そんなときに文京区内にある八千代助産院でショートステイができる制度です。料金は1泊2日で1万8000円。追加で1泊するごとに9000円です(事前登録、申請が必要)。
ネウボラ事業を通して、行政としても子育て中のママたちを支えていければと思っています。

犯罪件数が23区内一少ない、小児医療、教育機関の充実が子育て世代から熱い支持

――2010年4月、自治体区長として初めて育児休業を取得されていますが、子育て支援に力を入れるようになったのは成澤区長が育休を取られたからでしょうか?

成澤区長:直接は関係ないと思います。区長になってすぐに文京区にワンルームマンションの建設に規制を強化したことで、ファミリー向けのマンションが増加し転入してくるファミリー世帯が増えました。文京区は23区で最も犯罪件数が少なく、大学病院も東京大学医学部附属病院、日本医科大学付属病院、順天堂大学医学部附属順天堂医院、東京医科歯科大学医学部附属病院の4つすべてが小児科の夜間救急外来を実施しています。さらに文京区は「文の京」として、昔から教育機関が集中していることから、子どもの教育への意識が高い環境で勉強をすることができます。

区長である前に、一人の親として育休を取りたかった

――自身の子育て経験は、政策に生かされていますか?

成澤区長:「ハッピーベイビープロジェクト」などのアイデアにつながっていると思います。ただ育休を取った理由は、妻と結婚9年目でできた我が子に対して精一杯の愛情を注ぎたいと思ったからです。ただそれだけの理由です。
参考:ハッピーベイビープロジェクト

――どのくらいの期間、育児休業をとられたのでしょうか?

成澤区長: わずか2週間です。ただ家事や育児は今でもずっと行っていますよ。早く帰れる日は夕食を作ることもあります。料理は好きなんですよ。洗濯機も回しています。僕の中ではそれは普通のことなので、なにも「頑張ってるじゃない?」とアピールしているわけではないし、そもそも胸を張るようなことでもない。
――2週間の育児休業期間は、主に家事を担当されていたのですか?

成澤区長:2週間の育児休業期間は、奥さんから子どもを連れて一緒に外出したいと言われました。子どもが小さいと出かけるのも大変でしょ。奥さんがママ友と話しているときに僕が子どもの面倒を見ていたり、オムツ替えなどの準備のとき赤ちゃんを抱っこしているとか、お出かけの時にもう一人いると楽なわけですよ。要するに、僕はお出かけ要員だったわけです。

ママ会、子育てひろばに積極的に参加する区長

――成澤区長は「ママ会」にも参加されたんですか?

成澤区長:参加しました。奥さんと一緒に子育てひろばへも遊びに行ったときなどはき、ママの輪の中にいれてもらいました。子育てひろばは、今でこそパパが行くのも当たり前のようになっているけど、区長になった10年前はほとんどパパはいなかったですよ。

――子育てひろばに成澤区長がきたら、まわりの人が驚きませんか?

成澤区長:「あっ区長だ!」「そういえば今は育休中なんだよな」とよく言われました。子育てひろばなどは、今は土曜日も開放しているところが多いので、パパが来やすいのかなと思います。うちの子は幼稚園でしたけど、保育園の送り迎えをするのも、最近はママよりもパパの方が多かったりしますよね。

妻が入院してワンオペ状態に。ママ友のありがたさを実感

――去年、奥さんが病気で入院されたそうですね。その間の家事育児は大変でしたか?

成澤区長:本当に大変でした! いわゆるワンオペ育児。ひとりで育児を行うことがどれほど大変か身をもって知りました。ワンオペ状態になったとき、おばあちゃんや義理の姉にも助けてもらいましたが、なによりママ友にはかなり助けられました。子どもは夏休みで学校は休みなのですが、僕は仕事があります。そんなときママ友たちが交代でうちの子を預かってくれました。妻の存在の大きさを再認識しましたし、ママ友たちにも感謝の気持ちでいっぱいです。

――ママ友とはどうやって連絡を取っていたのですか?

成澤区長: LINEです。妻にママ友たちとのグループラインを作ってもらい、そこで「今日うちで預かるわよ」とか「一緒に遊びに連れていくよ」などの連絡をくれました。
この前、冗談半分で言われたのが、うちの子どもの年齢が上がっていくのと並行して文京区の子育て支援が充実していくと。区長のお子さんがそろそろ小学生だ! 今度は小学生向けのサービスができるんじゃないかとか。

――最後に、ママたちへのメッセージをお願いします。

成澤区長:僕自身も一児の父親で、子育ては楽しさや驚きの連続だと身をもって実感しています。文京区のこの地でワクワクしながらパパもママも子育てができるように、これからも子育て支援の整備に努めていきたいと思っております。

取材、文・間野由利子 編集・北川麻耶

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