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妊娠20週で夫が失踪。息子のため23歳でベビー服ブランドを立ち上げたシングルマザーの思い

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2017年8月22日から24日まで開催された『こどもとマタニティのインターナショナルなトレードショー プレイタイム東京』。

世界中から170を超えるブランドが出展し、全国の百貨店、セレクトショップのMD担当者や、市場の新しい情報を求めたメディア関係者が多く来場するこのイベント。編集部スタッフも、ベビー、マタニティ―市場の動向をチェックするために参加してきました。

会場にはかわいいベビー服や小物がたくさん! そんな中で、ママスタ編集部が注目したのが、デンマークのブランド『Konges Sløjd』

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カラフルが基本のベビー服ですが、『Konges Sløjd』のブースは全体的に落ち着いた色彩で、それが逆に遠目からも目立ちます。

しかも置いてあるお洋服やグッズがどれも洗練されたかわいさ! ベビー服というより北欧風のお洒落なインテリアグッズのようで、グレーやベージュが、全然野暮ったくないんです。

思わず引き込まれて手に取ると、手触りも最高! 『Konges Sløjd』は、すべてのアイテムにオーガニックコットンを使用しているのだそう。オムツ替えのできるベビーケアマットやベビーネストなど「このグッズ、こういう色合いで欲しかった!」「なかなか日本では売ってないんだよね〜」と言いたくなるようなデザインと機能性を備えたグッズもたくさんありました。

ブランドのオーナー兼デザイナーであるエミリー・コングさんが来日されていたので、お話を聞いてみることに。まさかの衝撃的なエピソードが飛び出すインタビューとなりました。

妊娠20週で夫が失踪。息子のためにシンプルでオーガニックなベビー服を

——ブランドを立ち上げたきっかけを教えてください。

『Konges Sløjd』は息子のために作ったブランドなの。私はシングルマザーなんです。妊娠20週のときに息子の父親が失踪して、彼と一緒に作っていた家を売り、その家を売ったお金で、精肉店だった安い建物を購入して息子と2人での生活をスタートさせました。

息子が生まれた記念に、シンプルでオーガニックなアイテムが欲しいと思ったけど、当時の私はそれを買える環境になかったし、買える値段のベビーアイテムは、カラフルで派手なものが多くて私の好みに合わなかったので自分で作ることにしたの。

息子のために作ったものをSNSでアップしていたら、興味を持ってくれる人が増えてきて、たくさんの人が「どこで買えるの?」と聞いてくれるようになったわ。私は「これをビジネスにしよう」と、銀行から約85,000円の融資を受けてこのブランドを始めたのよ。

——その時はまだ23歳という若さだそうですね。融資を受けて『Konges Sløjd』を立ち上げることを決断させた最大の理由はなんですか?

当時23歳だった私にとって、銀行から借りた融資はとてつもない大金だったの。でも、なんとかして息子に良い将来を与えたいという想いがあったので迷いはなかった。

ブランドを立ち上げてからすぐに自分の手で作るだけでは追いつかなくなり、インドの工場と契約をして量産する体制を作りました。

2014年からスタートして3年で、世界20カ国で450の販売店を持つまでに成長しました。

今のこの状況は、まさに求めていたもの。こんなに大きなブランドになれるなんて驚いてるし、私が物を売るのに適した人間かはわからないけど、そうなりたいという想いだけはずっと頭の中に描けていたの。だから、今の状況はまさに頭の中で描いていたものが現実になっているわ。

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エミリーさんが最初に作ったのは、ベビーカーに取り付けるモビールだったそう。

——『Konges Sløjd』のブランドコンセプトはなんですか?

たくさんの方がコンセプトを聞いてくれるんですが、実は、コンセプトもビジネスプランもしっかり決めていないの。私は、そのときに感じたことを行動に移しているだけ。

でも北欧感をとても大事にしていて、家の中に置いた時に馴染むデザイン、日常の中に溶け込むようなものを作りたいという想いはあります。たとえば、お客さんが来たときに急いで片付けなくてはいけないようなアイテムは作りたくない。でも、本当にそれくらいのことしか決めていることはないのよ(笑)。

——26歳という若さで、シングルマザーとして子育てをしながら3年でブランドを成長させたのは素晴らしいと思います。この3年はエミリーさんにとってどんな時間でしたか?

仕事を始めたころは今と比べものにならないくらい忙しかったの。息子が生まれてすぐだったので、家の地下に赤ちゃんの息子を寝かせて、上の階で起きるだろう時間にアラームをセットしながら仕事をしていたわ。今は、会社も大きくなって、子育てをしながら働くスタッフもいるの。たった3年だけど、この3年で私の人生は大きく変わったと感じるし、今回、こうして日本の皆さまに『Konges Sløjd』を知ってもらえる機会を得られたことにもすごく感謝しています。

「日本でシングルマザーとして頑張るママにメッセージを贈りたい」

——エミリーさんは「こうなりたい」というご自身の姿を明確に頭の中に描いて、それを実現されてきたんですね。これからやりたいと思っていることはありますか?

もちろん、ブランドをもっと大きくしていきたいと思っています。

今、私のお腹の中には2人目の赤ちゃんがいるの。結婚はしていないけど、息子の父親である人が戻ってきて、彼の赤ちゃんがお腹にいるの。とっても風変わりなファミリーでしょ? 伝統的な家族像ではないんだけど、こういう生き方があってもいいかなと思っていて、今の状況もすごく幸せだと感じています。

——エミリーさんはブランドと育児をどのように両立されていますか?

子育てと仕事を両立するのは大変。会社が大きくなれば、夜でも仕事をしなくてはいけないことや、ミーティングに出なくてはいけないこともあるわよね。今は息子と2人暮らしなので、息子が7時に寝ちゃったら、置いて行けないのでキャンセルしないといけないこともあるし、いろんな場面で仕事と育児のバランスにストレスを感じることもあります。

これから子どもが2人になるので、生活がどんなふうに変わるかは想像もつかないわ。でも、そのときそのとき、精一杯頑張ってなんとかやるしかないわよね。
子どものために頑張って仕事をしていても、忙しいことに罪悪感を持ってしまうって、どの親だってみんなそうでしょ? 私だけじゃないんだもの。頑張れるわ。

——そうですね。どんな親もみんな何かしらの悩みやストレスを感じながら育児をしていると思います。

私、地元のインタビューではこういう話を語ったことがないの。だから、ブランドが立ち上がった経緯をこうしてインタビューで答えたのは初めてよ。

私たちが住むデンマークという街はとても小さいので、インタビューで話したことは多くの知り合いの耳に入り形に残ることになるから、息子が大きくなったときにそういう記事を見て「僕が生まれたときに、ママはこんなに大変だったんだ」という想いをさせたくないから、これからも地元では語ることはないわね(笑)。

でも、遠く離れた日本でこのことを語ろうと思ったのは、日本でシングルマザーとして頑張るママたちに「望めば叶う」というメッセージを贈りたいと思ったから。

もちろん大変なことも多いし簡単なことではないけど、今の状況で可能性を諦めるのではなく、「こうなりたい姿」を頭に描き、そのためにできることをまず行動してみてもらいたい。私はそうして今の状況にいるから、自分で自分の可能性を狭めてしまわないでほしいと思うの。23歳でシングルマザーになって、ブランドを立ち上げてまだ26歳よ。これから、もっともっと人生を輝かせたいと思うから、できることをたくさん頭の中に描いて、それを実現させていきたい。みんなそれができると私は思っているから、その気持ちが伝わって、「諦めない」ママが増えたら嬉しいと思うわ。

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エミリーさんのお話を聞いていて感じたのは、自らの力で描く未来を引き寄せるパワーの強さでした。

「自分を信じる」。何よりも大事なこの気持ちをぶれずに持っているからこそ、彼女は26歳という若さで多くのものを手にすることができたのでしょう。

まだまだこれからブランドを大きくしていきたいと語る彼女。『Konges Sløjd』が日本でも愛されるブランドになるまでにそう時間はかからないと思います。

文・鈴木じゅん子 編集・伊東杏奈

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