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妊婦で子連れのママが、バスで涙が出そうになった話

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日本のバスや電車の車内では、ママたちは肩身が狭い?

筆者がロンドンに住んでいたとき、ロンドンの地下鉄はベビーカーにやさしくない! と思いました。エレベーターがある駅は少なく、階段だけの場所もたくさんありました。でも、人がやさしいのです。ベビーカーを押して階段に来ると、必ずと言っていいほど誰かがベビーカーを一緒に持ってくれたり、代わりに運んでくれたりします。親切な人が多いと思うとそれだけで安心して外出できます。自分1人でベビーカーを担げるから階段も平気、という強いママもいましたが!

日本のママは肩身が狭いよ、なんて話を日本在住のママ友から聞きました。

「妊婦だったり、子どもを連れていたりするからって、場所を空けてもらったり、席を譲ってもらったり、気遣ってもらえる特権階級にいるとは思っていないけれど、なんか避けられている? って思う」

妊娠中に電車やバスに乗ると、席に座っている人は眠ってしまうか、スマホを取り出して下を向く。

「席を譲るより、私すごく疲れているんです」

そんな声が聞こえてくるような気さえしてくる、というのがママ友の率直な気持ち。気にしない方がいいのかもしれませんが、気持ちが暗くなりますね。

バスで幼稚園に通っていたある朝の出来事

そんな話をしていた筆者のママ友は、2人目の子どもを妊娠中、バスに乗って子どもを幼稚園に連れて行くようになりました。小さい子どもを連れた妊婦のママ友。子どもが騒がないように、座れなくても我慢できるように。周りの人に迷惑かけていないか、気が気ではありません。

いつも同じ時間のバスに乗っていましたが、ある朝、彼女は幼稚園のあるバス停より先のバス停で降りました。病院に行かなければならなかったからです。

バスを降りて歩き始めたとき、後ろから知らないおじさんに呼び止められました。

「奥さん、道を探しているんですか?」

「奥さん?」 今まで呼ばれたことのない呼び方で声を掛けられたので、ちょっと可笑しかったらしいのですが、なぜ呼び止められたのか全く見当がつかず、ポカンとしてしまったそうです。

わざわざ追いかけて声を掛けてくれた

そのおじさんは、毎朝同じバスに乗っている彼女がいつもと違うバス停で降りたので、バス停を間違えたのではと心配になり、わざわざバスを降りて声を掛けてくれたということでした。

バスに乗っていた人の中に、そこまで自分のことを気にかけてくれていた人がいたなんて。

「いつもは幼稚園に行くのですが、今日は病院に寄らなくてはならなくて、ここで降りたんです。大丈夫です」

そう答えると、おじさんは安心したようでした。おじさんの話によると、実は、毎朝そのバスに乗り合わせている乗客同士で「いつ赤ちゃん産まれるのかな」などと話しながら、彼女のことをひそかに見守っていたそうです。

毎朝バスの中で、肩身が狭い思いをしていた彼女は、気持ちが一気に緩んで涙が出そうになってしまったそうです。

やさしい気持ちで接してもらったときのありがたさ。他人の親切が、ママになって改めて身に染みる気がします。思いやり、大切にしたいですね。

文・野口由美子