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母乳は赤ちゃんが貧血になる? 気になる真相

ちょっと理系な育児のsumireです。母乳育児についての意外な情報盛りだくさんの書籍発売を記念しての短期連載、今回は、赤ちゃんの貧血について、書籍から一部ご紹介したいと思います。みなさんは、こんな話を聞いたことはないでしょうか?

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同じような経験をされた方もいるかもしれませんね。そもそも、母乳は、赤ちゃんの貧血の原因になるのでしょうか?

貧血のリスクを高める本当の要因は母乳以外にある

『もし「母乳のみで育つと鉄分不足で『貧血』になりやすい」ということが事実であれば、「たくさん鉄分補給した子どもは、母乳のみで育った子どもに比べて『貧血』の割合が低い」という一貫した結果になるはずです。しかし実際は、母乳のみで育っているグループと、鉄サプリメントを継続的に与えられたグループとで、月齢9カ月時点での「貧血」の割合は変わらなかったという研究結果を始めとして、母乳のみで育っていても通常は鉄分の状態に問題はないことが明らかになっています。

現在は、「赤ちゃんの鉄分補給は、母乳と生後6カ月からの食事でまかなえる」というのが世界的な認識になりつつあります。(中略)』

『ちょっと理系な育児 母乳育児篇』p.150「貧血のリスクを高める本当の要因は母乳以外にある」より抜粋

これまで、「母乳のみで育つと赤ちゃんが貧血になりやすい」と主張する主な研究は、「途上国など、もともと貧血が蔓延している地域」を対象としていました。でも、先進国など貧血が一般的じゃない地域では、母乳のみで育ったかどうかによって、貧血の割合は変わらないことが分かってきたんですね。

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参考:Domellof MD et al. Iron supplementation of breast-fed Honduran and Swedish infants from 4 to 9 months of age. J Pediatr 2001; 138: 679–87.

これまでは、母乳にばかり注目してきたので、赤ちゃんの貧血の本当の原因や効果的な対処法を調べる研究は、後回しにされてきました。

でも、赤ちゃんをより健康に育てるためには、本来の原因に注目し、効果的な対処法を実践できるようになるといいですね。

赤ちゃんの貧血予防、一体どうすればいいの?

1歳前後の子どもの貧血予防に効果がある方法としては、たとえば、こんな方法が明らかになっています。

『赤ちゃんはお腹の中にいる時に、生後半年~1年以上にわたって必要になる分の鉄分を蓄えるので、妊娠中の女性は定期的に妊婦検診を受け、「鉄欠乏性貧血」などの疾患があればコントロールしておくことが重要です。

さらに興味深いことに、胎盤には、出産時に赤ちゃんの鉄分補給のラストスパートをかける役目があるというのです。

赤ちゃんのへその緒をクランプ*するタイミングを1分程度以上遅らせることで(~約3分で飽和状態になる)、赤ちゃんの貧血を減らす効果があることが、いくつかの研究で証明されました(クランプを遅らせても、赤ちゃんに悪影響は見られなかった)。(P148 2, 3)

現在は、産後10秒以内にクランプすることが主流のようですが、今後産科医療の現場のシステムが変われば、乳児の「鉄欠乏性貧血」を、より減らせるかもしれません。

何らかの理由で貯蔵鉄が十分に蓄えられなかった場合など、「貧血」のリスクが高い赤ちゃんは鉄剤の処方が必要になることもありますが、母乳を飲むことで「貧血」が悪化することはないので、安心して授乳を続けることができます。』

*クランプ:へその緒をはさむこと
『ちょっと理系な育児 母乳育児篇』p.150「鉄やビタミンD不足を防ぐには」より抜粋

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理系育児4-6書籍では、貧血のほかにも、母乳育児のイメージがガラッと変わるトピックが41個も詰まっています。

そちらもぜひのぞいてみてくださいね。

ちょっと理系な育児 母乳育児篇

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作:牧野すみれ

出版社: 京阪神Lマガジン

文・sumire イラスト・ちうね

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