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レストランのナプキンから巨大作品まで。ディズニーの歴史を保存する特別な施設

およそ90年もの歴史を持つディズニー社。
その長い長い歴史を丸ごと収蔵している「資料館」が存在するのはご存知でしたか?

その名もアニメーション・リサーチ・ライブラリー(ARL)。
ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの美術・芸術的遺産の保存・保護を目的とした機関で、アニメーションの作品素材・約6500万点以上を保存しています。ここは本社などと異なり、一般にはその「場所」さえも公開されていません。

ARLにはディズニーで制作された、ほとんどの短編や長編アニメーションの描画、コンセプト・アートや背景画、レイアウト、セル画にストーリー・スケッチ、エクスポージャー・シート(露光シート)、モデル・シート、さらにマケット(模型)などが所蔵されています。

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来館資格のあるのはディズニーの社員か、正式なディズニーのプロジェクトに関わっている人たちだけ。アニメーション・スタジオからだけではなく、イマジニアリング(※世界のディズニー・テーマパークを手掛ける関連会社、ウォルト・ディズニー・イマジニアリング)の関係者も訪れるのだとか。

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保管庫を訪れると、そんな膨大な作品資料の数々が収められた箱がズラリ。ARLの室内は保存状態を損なわないため室温・湿度が徹底管理されています。ちなみにここにはアニメーションで使用されなかった資料も収蔵されているのだとか。

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1箱には400~500枚の資料が保存されているのだそう。
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ピノキオやファンタジアの資料もありますし、

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模型などもぎっしり。ご存知、リトルマーメイドの主人公の人魚姫・アリエルと王子・エリック。奥にはセバスチャンも! ここでは関係者であっても素手で触ることは許されていません。必ず手袋をはめます。

そんな作品たちは、いつでも新しい作品つくりの資料として見られるようにと、現在デジタルでのアーカイブ化が進められています。ただしARLに保管されている約6500万点のうちインターネット上に存在するのは100万点ほど。残りの作品は現在1日1000単位で撮影され、デジタル化が進められているのです。

撮影風景はこんな感じでした

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作品をデジタル化するための専用のカメラが3台あり、専任の方がどんどん撮影していきます。その中で一定の品質をクリアしたデータだけがデジタル化されていきます。

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データ化された作品は作者名、作品名などで検索して一覧で表示することができます。もちろん個別に詳細を見ることも。ただし、これはディズニーの限られた人しか見ることのできないシステムなのです。

そんなARL、役割は作品の収蔵やデジタル化を行うだけではありません

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各国で行われる展示の企画も、その役割のひとつ。実は2017年現在、日本のお台場にて開催されている『ディズニー・アート展《いのちを吹き込む魔法》』もここで企画されたものの1つなんですよ。

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今回施設を案内してくれたフォックス・カーニーさん

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ウォルト・ディズニー・カンパニー勤務歴24年のベテランであり、ARLのリサーチ・マネージャーでもあるフォックス・カーニーさんにお話を伺いました。

——この館内に保存されているもので、最も大きなものと、最も小さいものは何ですか?

F:何が最大、最小かというのは難しいですが……。

小さい物でいえば、レストランのナプキンに描かれた絵があります。付箋の上に描かれた絵もあるのですよ。付箋のアートワークは、なくならないようにクリアファイルのようなものに入れてあります。

大きい物でいえば4フィート(1.22メートル)×8フィート(2.44メートル)のカンバスに描かれたアートワークもあります。当初は、私の手が届かないほど大きなアートワークを、どこへどう保存するか迷ったものでした。

「このアートワークは何か? どう扱えばよいのか? できる限り最高の状態で保管するためにはどうすればよいか?」はいつも考えなければならない。コレクション・チームが毎日直面する問題です。

——あなたは、どうしてARLの仕事に就こうと思ったのですか?

F:私が生まれて初めて見た映画は、『ジャングル・ブック』(※1967年公開のアドベンチャー映画で、ウォルト・ディズニーの遺作)なのです。最初に劇場公開されたときに家族と一緒に観ました。僕の年齢が何歳かわかってしまいますね(笑)。音楽とキャラクターに何か特別なものがあって、とても素晴らしかった。

それと私の一番年上の兄は、ウォルト・ディズニーの名前が初めてつけられた学校に行きました。兄とは歳が離れていて、私はずっと、兄がウォルト・ディズニーの小学校に行ったことを羨ましく感じていました。

すべての長編アニメーションを公開時に見ていますし、自分がディズニーで働くことは自然なことのように思えました。私にとってウォルト・ディズニーは比類なき人ですから。

——ここで働くことの魅力は何ですか? 

F:そうですね。誰がどんなアートを見たいと頼んでくるかによりますが、20年、30年、いや40年、50年後に、それまで誰も見ていなかったもの、誰も考えたことさえなかったものを見つけられるかもしれないということです。

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私はアーティストではありません。スマイリー・フェイス(笑顔のマークの絵)がうまく描けたらラッキーというほど。絵が上手に描けたらいいのにと思います。でもここでは、コンセプト・アーティスト、ストーリー・スケッチ・アーティスト、アニメーターによるすべてのアートワークを見ることができる。そして毎回、箱を開ける度に、すべてが新しく見える。そういったちょっとした驚きが、いつも私を前に進ませてくれるのです。

それに、ここに来る人々はアートに対して心から敬意を払います。彼らの目は、アートワークを見て、大きく開く。私も彼らの目を通して、彼らが感じたことを経験しているわけです。そして彼らが、アートワークを見て素晴らしい気持ちになると、彼らに何かを届けることができたと思い、こちらも良い気持ちになれます。何かを取り出して、誰かに見せて、「そうか! 自分がやりたいことがわかった!」と言わしめる仕事なんて、ほかにありますか? 誰も、この気持ちを超えることはできませんよ。

——もしARLからのインスピレーションがなければ、映画作りにどう影響していたでしょうか? 

F:この場所がなければ、映画作りはもっとずっと大変になっていたと思います。

クリエイティビティ(創造性、独創力)というものがあります。ディズニーの誰もがとてもクリエイティブで、問題を乗り越えながら仕事をすることができる。彼らは、一緒に仕事をし、協力しながら、映画を作るのです。ここはある意味、仕事をよりやりやすくするための「手助けの場所」でもあるのです。

それから、製作中の彼らを、映画から「離す」手助けもします。映画を作れなくするというわけではなく、この場所に来て誰かのアートワークを見て、心を研ぎ澄ませるのです。制作中の映画にプラスになるものを見つけたり、ただ映画製作から離れて疲れをいやすのに一役買ったりもする。そして「なんてこった。彼らはすべてのアートを保管している。僕らはもっと良い仕事をしないといけない!」と思うんですよ。ここにたくさんのアートワークがあることでね。

ARLは過去のディズニーの歴史を保存するだけでなく、未来へのインスピレーションを生む場でもあるということなんですね。貴重なお話、ありがとうございました! 

 

ちなみにARLではこんな方にもお会いしました。

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映画『モアナと伝説の海』を生み出したジョン・マスカー&ロン・クレメンツ監督です。映画『リトル・マーメイド (1989)』『アラジン (1992)』の監督としても有名ですが、彼らの作品もまたARLに多数所蔵されているのでした。

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そんなお二人が監督をつとめる『モアナと伝説の海』は現在デジタル配信中&MovieNEX(4,000円+税)発売中! ぜひこちらもチェックしてみてくださいね。

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