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わが子の”ありのまま”を受けとめたくなる絵本『はなのすきなうし』

はなのすきなうし

私の理想のおかあさんは、『はなのすきなうし』という絵本に登場する”おかあさんうし”です。

「子どもは3歳までに一生分の親孝行をはたす」と聞いたことがあります。たしかに現在5歳の息子がもっと幼く、かわいい盛りのころには、その意味をよく理解できました。

しかし親である私は強欲でした。成長し、個性もはっきりするにつれ、「こうなってほしい、ああなってほしい」という願望をつのらせるようになりました。「やさしい子に」「強い子に」「勉強も、運動も」……親であれば当然のねがいかもしれませんが「息子がいるだけで幸せだ」と思ったいたころを振り返ると、自分の欲深さに苦笑いがもれました。

とくに悩んだのは1~2年前、息子が幼稚園の年少のとき。もともと慎重でおとなしい性格の子どもで、幼稚園に入園すると、男の子よりも女の子と遊ぶことの方がはるかに多いようでした。そしてなにか色を選ぶ場面になると「ピンクがいい」と言うようになりました。

言葉や態度で息子に伝わらないよう気をつけていましたが、私の本心は「男の子らしく育ってほしい」でした。

絵本『はなのすきなうし』は、そんなときに私が出合った絵本です。

ロングセラーに納得。絵本『はなのすきなうし』

昔スペインに、フェルジナンドという子うしがいました。他の子牛たちが、とんだり、かけまわったりして暮らす一方で、フェルジナンドは  ひとりしずかに、花のにおいをかいでいるのが好きな子牛でした。

フェルジナンドのおかあさんは、ひとりぽっちで さびしくはないかしら、とおもうのでした。おかあさんは むすこに  たずねます。

「どうして、おまえは ほかの こどもたちと いっしょに、とんだり、はねたりして あそばないの?」
「ぼくは こうして、ひとり、はなの においを かいで いるほうが、すきなんです」

そこで おかあさんには、ふぇるじなんどが さびしがって いない ことが わかりました。--うしとは いうものの、よく ものの わかった おかあさんでしたので、ふぇるじなんどの すきなように しておいて やりました。

私は心底、感動しました。”うしとは いうものの、よく ものの わかった”おかあさんうしの態度が心にしみました。それは「わが子をありのまま受けいれていいのだ」という安堵。
世間的に望ましいとされることにとらわれ、でも本当は”わが子をありのまま受けとめたい”という願望が、自分にひそんでいたことに気づきました。

……そして物語は、フェルジナンドが大きくなるまで続きます。他の牛たちが闘牛として戦いたいと夢を持つなか、フェルジナンドはどう成長したのか。そして偶然が重なって、闘牛として連れていかれたフェルジナンドは、一体どんな選択をしたのか。

物語の最後の一文に”おかあさんうし”の態度が、とてもよく「効いている」という気がします。

”おかあさんうし”のおかげで、考えが変わった

登場シーンはわずかなのに、一度読めばその存在がしっかり胸に焼きつく”おかあさんうし”。その態度には賛否両論の声があがるかもしれませんね。

ただ私の場合、『はなのすきなうし』を読んでからというもの、気分が落ちついて息子をおだやかな気持ちで見つめられるようになりました。

約半年前、ヒーロー戦隊(当時はジュウオウジャー)にハマりだしたときは「ついに、いかにも男子らしいものを!」と、ほっとしたのも正直なところです。でもいまでも男の子とも女の子とも遊び、ブロック遊びも好きだけれど、折り紙やお絵かきも大好きな息子。やさしいけれど、こわがりで控えめな気質の息子。

それがまったく気にならないと言ったらウソですが、強欲だった私が、この先も息子の”ありのまま”を受けとめたいと思えるのは『はなのすきなうし』のおかげです。

ちなみにこの絵本は1936年、スペイン内戦が起こった時期に発行されました(日本では第二次世界大戦後に発行)。世界中が戦争に向かっていくなか、たたかおうとしないフェルジナンドの姿。当時の情勢を考えて読むと、あたらしい角度からの解釈を楽しめそうですね。

発行から80年以上経った今でもなお、世界中で読み続けられていることに、誰もがうなずけてしまう名作中の名作です。

はなのすきなうし


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文:マンロー・リーフ / 絵:ロバート・ローソン / 訳:光吉 夏弥

出版社: 岩波書店

文・福本 福子