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子どもの誤嚥(ごえん)事故はすべて母親の責任ですか?

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先日あったこの報道。

おもちゃつまらせ窒息 消費者事故調が調査へ
http://www.asahi.com/articles/ASJCJ5FGNJCJUTIL026.html

子どもの誤嚥事故を防ぐために、安全基準作成のために消費者庁が動きますよ、というお知らせなのですが、そのニュースに対するインターネットで見かけたコメントに、違和感を覚えました。

「母親のくせになぜ目を離した?」
「目を離した親の責任だ!」
「あくまで自己責任であって、事故の責任はメーカーに転嫁するものではない!」
と母親を責めるものが大半を占め、恐らく子育てを経験したであろうママによるコメントも同様でした。

■「子どもに何かあれば即、母親の責任」の乱暴さに

家事も、育児も、夫のお世話(自分のことぐらい自分でしてほしい)もして、人によっては仕事や舅姑のお世話または介護、無視できないご近所づきあいがあったり。食事・睡眠・排泄など、生物としての最低限の欲求さえも自分の意志ではできないのが小さい子供を持つママの日常だと思うのですが、そんなママに更に鞭打つコメントの数々……。

母親は子どもを産んだ瞬間に”すべてを完璧にこなせるサイボーグになれ”というのが社会の通念なのでしょうか。現代社会において未だ仮面ライダーすら現れていないのに、イチ母親がサイボーグになれるものでしょうか。

さて、家事と多少の仕事、3歳と1歳の子どもの育児で既にアップアップしている私に、先日とある事件が起こりました。

■事件は常に現場で起こっています

それは夕食後の我が家で起こりました。

夫はいつも通り仕事で深夜帰宅予定。家には3歳児・1歳児・母親の私、3人です。

子ども達と私は、お腹いっぱいリラックスモード。とはいえ、母は子どもの世話と家事で、流し込むように立ち食い。あれもやらなアカン、これもやらなアカン、という考えに一瞬蓋をして、ほんの数十秒の息継ぎの時間です。そして……。リビングにいる子ども達の様子が伺えるようにと、ドアをフルオープンでトイレタイムを開始しました。そこへ母の家庭内ストーカー、絶賛後追い中の1歳3か月の息子がやってきます。

夜の繁華街でよく見かける酔っ払いのオッサンのような千鳥足で私めがけてフラフラと歩きながら、満面の笑みで近寄る息子の口元を見ると、何やらモグモグと咀嚼中。

歯磨きも終わったというのに、何を食べているのだ!? そしてどこから調達したというのか!? 慌てて息子の口をこじ開けると、息子の手が届かないようにとキッチン台の奥のほうによけていたはずの、晩ご飯の残りの唐揚げが。

息子用に作ったささみのパン粉焼き、一口サイズとはいえ十数個は食べていたのにそれだけでは飽き足らず、短い腕を必死に伸ばして我が家の低いキッチン台から、ゲットした模様です。

そんなに大きいもの、誤嚥でもしたら…! それに唐揚げなんて高カロリーなもん、1歳児のアンタではお腹下すでー!

必死でその口から、大人用の唐揚げを掻きだそうとする母の腕をすり抜け、逃走する息子。

出かけていたモヨオシもそこそこにズボンをあげ、トイレを出た私が息子を羽交い絞めにして何とか口の中のものを出させようと試みるも、息子は頑なに口を開けずに咀嚼を続け、ついには念願の大人用唐揚げを完食したのです。大人の本気にも負けることなく。乳幼児の力は侮れず……、ナメたらあきません。

■安全な場所はない、神経は張りつめっぱなし

幸い息子は、誤嚥することはありませんでした。

緊急事態(トイレ)とはいえ目を離した私が悪いのでしょうが、我が家で一番高い場所にあるキッチン台にすら、子どもの口に入れてはならないものを置けないとすると、でき上がったばかりのオカズはどこに置けばいいのか。冷蔵庫の上? 食器棚の中?

どれだけガードしても突破される引き出しや、何なら椅子を引きずって踏み台を用いてまで気になるものを手に入れようとする、わずか生後数年の幼児の好奇心にはほとほと感心するばかり。子どもと過ごすということは常に自分以外の人間の危機管理を担うということ、神経を張り巡らせなければならないのが母親業なのだと、感じました。

とはいえ365日24時間、自分の睡眠中でさえ子ども達の危機管理を担えと言われても、ワタクシ、生身の人間であって、残念ながらサイボーグでも仮面ライダーでもありません。

なんぼ日本のビジネスマンがハードワーカーとはいえ、ブラック企業の社員さえ、トイレで最後まで用を足す権利くらいあるはずなのに。母親にはありません。

■上の子がいたら、さらに難易度アップ

特に上に兄姉がいる家庭なら、兄姉が気に入っているほとんどのおもちゃ、びっくりするほどほとんどのおもちゃに書いてある「3歳以下のお子さんには与えないでください」という説明書きに悩みます。たくさんのおもちゃの対象年齢を確認すると、3歳以下の子どもに与えて良いおもちゃなど、ごくごくわずか。説明書きを鵜呑みにするなら、3歳以下の子どもはベビーゲートの中に隔離して育児をする覚悟を持たなければなりません。

下の子は隔離されて刺激を受けない、兄姉は下の子と触れ合えない……、それでは子どもたちの成長の機会を奪っているのと同じ。そんな気持ちと安全管理との葛藤もまた、ママにはあるのです。

■ママだって、子どもを事故に遭わせたいわけじゃない!

「母親なのに…!」
「目を離すなど、母親失格だ!」

自己責任論にすり替えればすべてが丸く収まるので、そういったコメントが多いのも致し方ない面もありますが、母親かて現代では社会人経験がある方がほとんどで、世間知らずのお嬢さんがいきなり母親になっているわけではなく、それぞれの経験に応じた危機管理能力を持って子どもに接しているはずです。

子どもの事故が起きてしまうのは、核家族が標準な中、とっくに限界まで来ている母親ばかりに、安易な「自己責任論」で子育ての責任を追求する日本の現状にも問題はないのでしょうか。

消費者庁の取り組みに賛否両論はあるでしょうが。今回の報道の通りに、消費者庁が調査に乗り出し基準を改めてくれるのであれば、少しは安心して子どもにおもちゃを与えることができるでしょうし、24時間神経が張り詰めている母親の「子どもを安全に遊ばせたい」という気持ちを汲んであげることができるかもしれないのです。

文・桃山順子