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まさか祖母が逆走するとは…田舎の高齢者ドライバーが抱える葛藤

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田舎では高齢者の車が逆走してくるのをよく見かけます。たいていは低速で走行していて、そのうち自分で気がついてそっと方向転換していきますが……。世の中で起きている高齢者の事故が、逆走が原因であることもしばしばあります。「もし自分の車に向かって逆走車が走ってきたら…。」と思うと、ほんとうにゾッとしますね。

でも実は、筆者の祖母も逆走をした高齢者の一人だったのです。

■逆走したのは、いつもの慣れた道だった

 今年亡くなったわたしの祖母は、祖父に先立たれて10年以上ひとり暮らしをしていました。田舎なので、ちょっとした買い物や病院へ行くのも、車がないと不便すぎて生活できません。祖母は自分で運転ができたので、普段から家族にあまり頼ることもありませんでした。それでも二人の子ども(わたしの母と叔父)が、同じ市内に住んでいたこともあり、「いつでも様子を見に行ける。」と思い、油断していたのが間違いでした。

ある日、「○○さんが、車で逆走していたのを保護いたしました。」と、家族のもとに警察から電話が。いそいで駆けつけたところ、「逆走当時の状況をよく覚えていない」と言う祖母。ここで初めて、祖母が認知症だったことが発覚したのです。祖母が逆走したのは、いつも通い慣れた病院の帰り道でのことでした。

■無情にも、逆走しやすい条件がそろう田舎

田舎は都会ほど公共交通機関が発達していませんので、車を手放せないのが現状。最寄りの駅まで遠いのはあたり前、バスは1時間に1本なんていうこともザラです。タクシーを使えばいいといっても無料ではありませんので、年金暮らしの高齢者は敬遠しがちです。しかも数十年ものあいだ車に乗ってきたわけですから、運転に自信があるので簡単には免許を返上しません。そして核家族化が進む現代、家族は高齢者自身の生活力に頼ってしまうのです。

さらに道路にも逆走しやすい事情があります。うちの祖母の場合、薄暗い夕方、中央分離帯のある片側二車線の一般道で逆走が起こりました。幸いにも車の通りが多くなかったため事故には至りませんでしたが、いつ正面衝突してもおかしくありませんでした。中央分離帯のある道路は、病院やお店などから右折で出てしまうと逆走が始まり、しかもたとえ逆走に気づいたとしても反対側の道路にすぐには回れません。高速道路も同じです。

最近は安全のために道路拡張工事が行われていますが、これも長年運転してきた高齢者ドライバーには裏目に出てしまうのかもしれません。長い間片側一車線だった道路が片側二車線になっていることに気がつかず走行を続ければ、(普通に走っている側から見て)追越車線に入ってしまいます。道路への進入時に「つい、うっかり、自覚なく」逆走してしまうのかもしれません。

■車を手放した祖母は…

 逆走がきっかけで認知症が発覚した祖母でしたが、その後車を手放すと急激に病状が進みました。ひとりで生活できなくなり、介護認定を受け、ほどなく介護施設に入りました。車に乗れなくなったことで今までの生活が成り立たなくなり、その結果、家にこもりがちになったせいで認知症を悪化させてしまったのかもしれません(あくまで憶測ですが)。けれども、そのまま車を運転していれば、今度は人を巻き込む大事故を起こしたかもしれません。田舎の高齢者にとって、車を運転し続けることも、手放すことも、どちらも相当な覚悟が必要なのです。

高齢者の車の運転は、「いつまでも元気で誰にも迷惑をかけず自分らしい生活をしたい」という願望と、「もしかしたら判断力の低下で自分が事故を起こしてしまうかもしれない」という葛藤との紙一重です。家族も自分の身内が高齢者ドライバーである以上、いつでも加害者になりうることを忘れてはならないのです。

あなたは、高齢者の運転についてどう思いますか?