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子育てはロングラン・発達障害の子どもにとっての幸せを考える――栗原類『発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由』

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モデル・タレント・役者として、幅広い活躍を見せている栗原類さん。昨年、テレビで自身が「発達障害」であることを公表したことが大きな反響を呼びましたが、それを受けてこのたびKADOKAWAから出版されたのが、『発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由』。8歳のときに「発達障害」のひとつであるADD(注意欠陥障害)と診断を受けた類さんが、同じくADHD(注意欠陥多動性障害)という障害を持つ母親や信頼できる主治医とともに、自身の才能を活かして輝ける居場所を見つけるまでの道のりを綴っています。

関連記事はこちら→「僕をきっかけに、少しでも多くの人が発達障害について興味を持ってくれたら」 栗原類『発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由』発売記念トークショー

発達障害は「病気」ではなく「脳のクセ」

まず「発達障害」とはなんなのでしょう。「病気なのでは?」と思ってしまう方もいらっしゃるかもしれません。ですが発達障害は、「病気」ではないのです。類さんは、「脳のクセ」という言葉で表現していますが、そう言われると分かりやすいのではないでしょうか。

現在、発達障害の症状は、色々な要素が重なり合うように現れることが分かっています。類さんの場合は、感覚が過敏、「こだわり」が強い、注意力散漫で記憶力が弱い、二つの動作が同時にできない、感情表現や他人への共感が苦手……といった症状があるとのことですが、同様に発達障害の診断を受けた人たちが、みんな同じ症状であるということではありません。人それぞれ、性格やクセ、好き嫌いや得意不得意が異なるように、その症状も十人十色なのです。

類さんは8歳のときに、当時在住していたアメリカで、発達障害の診断を受けました。小学一年生での留年、日本の中学時代の不登校、高校受験の失敗と紆余曲折を経ながらも、芸能界という「自分が輝ける場所」をみつけることができた類さん。そこに至るまでに、必要だったものは何なのでしょう。「自分の脳のクセを知り、訓練を重ねること」「苦手なことも長い目で見てできるようになればよいと考え、できないことはムリせず対処法を見つけること」、「できないこと、不得意なことは恥ずかしがらずに周囲に伝え、協力を依頼すること」……自分自身と向き合うこうした姿勢と、母親や主治医の先生といった、周囲の人びとの理解であったと、本のなかには書かれています。

何が子どもにとっての幸せなのかを考える

お子さんが発達障害、あるいはお子さんにその疑いがあるということで悩まれている方もいらっしゃると思います。そんな方にぜひ参考にしていただきたいのが、母・栗原泉さんの手記です。

アメリカでの子育ての経験や、泉さん自身も発達障害の診断を受けていること、そして息子である類さんが芸能界という一見華々しい業界で成功していることもあり、「栗原家は特別なんじゃないの?」と思ってしまいそうですが、泉さんの教育方針はいたってシンプル。「他のみんながこうしているからとか、普通ならこうだからという尺度ではなく、自分の頭で考えて、自分の子どもにとって、必要なものはなんなのかを選択している」――つまり、「何が子どもにとっての幸せなのかを考える」ということなのです。

たとえば、「さまざまなものを一緒に見て学び、楽しい体験を共有する」。類さんは学校の勉強にはまったくと言っていいほど興味がなく、成績も悪かったそう。ですが泉さんは、博物館や水族館、動物園などに繰り返し連れて行き、「楽しい」という経験を多くさせることで、子どもの好奇心を膨らませることができるのだと言います。発達障害を持つ子は、勉強の成績など、みんなに褒められる形での成功体験がないことが多く、人に誇れるものや、「これがやりたい」というものを見つけづらい部分がありますが、いろいろなものを実際に見て、興味を持ったり、「楽しい」と感じたりする体験は、その子にとってとても大切なものになり、将来の目標を持つことにも繋がるそうです。

あるいは、「子どもが興味を持って好きになったものは否定しない」。類さんの場合は、ネットとゲームが大好きだったそうです。一般的に、親としては子どもがネットやゲームにのめりこむのは歓迎しにくいことだとは思われますが、泉さんは「ゲームが好きなら、それを通して何が学べるのかを考えるのも、子どもの可能性を広げるきっかけになる」と、最低限のルールを決めたうえで、特に文句は言わなかったそう。「ネットを通して、学校だけでは出会えない年上の友人ができる」「ゲームを通して、試行錯誤する力が身につく」といったことを、親の先入観や知識の不足で妨げる結果になるのは残念だと考えられたようです。

そして、「子どもと親は別の個性を持った人間だと理解する」。泉さんは、類さんとともに発達障害の診断を受けたとき、アメリカの教育委員会での会議で、「自分ができることを、同じように子どもに求めてはいけない。どうしてこんなことができないのか、と思うことがあったら、自分ができなかったことで息子さんができていることを、ひとつでも多く見つけてあげてください」ということを言われたそうです。

「親子なのだから」「家族なのだから」という、個と個の境目を曖昧にするような感覚は、時として自分を甘やかし、相手に負担をかけます。「自分と子どもは別々の個性を持った人間であり、私にできないことを彼はたくさんやっている」と、常に考えることで、子どもを尊重し、心から褒めてあげられるようになります。

親と子だけで問題を抱え込むのではなく、外部に信頼できる人をつくることも大切だそうです。家庭内だけでどうにかしようとした結果、親御さんが消耗してしまっては意味がないですし、状況を客観的に見て、助言をしてくれる人がいれば、子育てのやり方が間違っていないことに自信も持て、極端な方向に向かってしまうことも避けられます。泉さんは、長年お世話になっている主治医の高橋猛先生の存在が、非常に救いになるものだったと述べています。

子育てはロングラン

Hands of mother and son holding each other

子育てはロングランです。保育園や小学校という短いスパンで考え、「親が頑張れば子どもを変えられるかも!」と思っても、子育ては20年、30年続きます。そのときに息切れしないよう、「頑張りすぎない」ことも大切なのだと、泉さんは言います。

『発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由』は、障害に悩み、焦り、不安を感じる人びとに、そっと寄り添ってくれる本です。ひとりぼっちで悩みを抱えて、全力疾走していませんか? 肩の力を抜いて、少し歩みをゆっくりにして、子どもと向き合ってみよう。周りを見渡して、ちょっとずつでも周りを頼ってみよう。この本を読んで、そう思ってくださる方がいれば、とても嬉しく思います。

人は、発達障害であろうとなかろうと、「その人が輝くための場所」さえみつけることができれば、そしてあきらめず、その人なりの時間軸で成長すれば、誰もが必ず輝くことができるのだと思います。

文・餅井アンナ

 

『発達障害の僕が 輝ける場所を みつけられた理由』※画像をクリックで購入サイトへ

著者:栗原 類

出版社: KADOKAWA