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3歳の娘が「女の武器」を使うとき

女子とは一体いつから女子になるのか。
お腹の子の性別が決まるとされる受精時に、女子の思考パターンはすでに女子なのか。
幼児の女子力の高さに、日々驚かされる女の子ママもいらっしゃるでしょう。

現在3歳になる我が家の娘も、つかまり立ちをし始める1歳前から徐々にその頭角を現し始めました。

移動の際には(家の中でも)必ずそのときの気分に合わせたバッグを携えるようになり、簡単な言葉で意思の疎通が図れるようになった1歳代後半には、「フリフリ・ピンク・スカート以外の洋服は絶対にヤダ!」とイヤイヤ言い始め、2歳頃には上目遣いの潤んだまなざしでひと言、「ほちいの…(欲しいの)」

そう訴えられば、ショッピングモールの子供服売り場、サービスエリアのおもちゃコーナーと、父母ジジババはもちろんのこと、叔父らまでもが、鼻血とよだれをたらしながら娘のほしいものを買い与えてしまう日々でした……。

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「このままではアカン!」

ほしいものすべてが手に入るなどと言う状況は、どう考えても教育上よろしくない。

コチラの言葉があらかた理解できるようになったと思われる3歳頃からは、
「今日はこれを買いにきたんと違うんやで」
「おうちに〇〇(似たようなん)あるやんか」
我慢を覚えさせる方針に、シフトし始めました。

我慢できる日もあれば、我慢できずに公共の場の地べたにひっくり返って泣く日もありつつ、少しづつ自分の気持ちをコントロールできるようになり始めた、娘3歳半頃の出来事です。

夫の仕事道具を買いに、家族で大型の文具店へ。
娘がそこで見つけたのは色とりどりのキャラクターイラスト付き鉛筆の海。
これでもかと言うほど目を輝かせながら飽きずに物色しています。
うんうん、女の子やもんなぁ。可愛い文房具ってテンション上がるよなぁ。

で、案の定「これ、ほしいの……」出た、買ってコール。

そんなやすやすと買ってなるものか。
今日はこれを買いにきたんと違うやろ、家にもキティちゃんの鉛筆あるやろ。
説得する母の言葉など、馬耳東風。キラキラ鉛筆に完全に心を奪れた娘と、簡単には買いたくない母との静かな攻防。

敵はなかなか諦めず……はて、困った。
そこで私は作戦変更。私は娘を抱きよせ、耳元でこっそりつぶやきました。

「かわいいのがほしいのは、ようわかる。お母さんも子どもの頃、ほしかった。
せやけど、タダで買うてもらえへんのは世の常や。
そこで〇〇(娘)、ここからはアンタの女としての腕の見せどころや。
お父さんにカワイーくおねだりするんや。
もしカワイーくおねだりできたら、お父さんは〇〇(娘)のことが大好きやさかい、1本だけなら買うてくれはるかもしれへん。
かわいくカワイーくおねだりできるか?」

まっすぐ前を見つめ、私の話を真剣に聞いていた娘。
こくり。うなずくと、何やらクネクネと歩きながら夫へ寄っていきます。
そして夫の元へ行くとクネクネしたまま(クネクネというより実際は、ギクシャクと)体を揺らしながら、蚊の羽音のような微妙な裏声で、

「△△さ~ん(夫)、えんぴちゅ、いっぽんだけ かってぇ~」

だーーー、かわいくねぇーー。

2歳代までの天然小悪魔的なおねだりはどこへ行った?

寒空の下震える小動物化のように潤んだ瞳で見上げるだけで、誰しもイチコロにできていたはずなのに。

妙な知恵と恥じらいが見についてしまった3歳女子の、確信的おねだりがイマイチすぎる。

生後4年もたたずに女子力低下かー。
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娘の妙な行動に怪訝そうな顔をしながらも、1本くらい買ってやってもいいかと思っていたであろう夫は、

「1本だけやでぇ」

あっさりと購入を許可。

「わーい、やったー!」

裏声から通常の声色に変わって、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら鉛筆コーナーへ戻った娘を見ながら思うのです。

おねだりが苦手で、おねだりするくらいなら欲しいものは諦めた、自分の幼少期。

そしてそのまま大人になり、他人に甘えることができなくなってしまい、「甘える」=「悪」と思うがゆえに、何もかも自分で背負い込み生きづらさを感じていた日々。

それならば、ズルいとまわりに思われようが、「おねだり上手な人」なほうが良い。

ただ、それにしても娘のおねだりがかわいくなかったことが何とも悲しくもあり、おもしろくもあり、逆にかわいくもあり……。

これから娘がさまざまな経験を通して、必要であれば「おねだりテクニック」を身に着けていったらいいのと違うかぁ、と思う今日この頃です。

文・桃山順子 イラスト・ももいろななえ